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ヨハネ傳
🔝
〘178㌻〙
第1章
1
太初
はじめ
に
言
ことば
あり、
言
ことば
は
神
かみ
と
偕
とも
にあり、
言
ことば
は
神
かみ
なりき。
2
この
言
ことば
は
太初
はじめ
に
神
かみ
とともに
在
あ
り、
3
萬
よろづ
の
物
もの
これに
由
よ
りて
成
な
り、
成
な
りたる
物
もの
に
一
ひと
つとして
之
これ
によらで
成
な
りたるはなし。
4
之
これ
に
生命
いのち
あり、この
生命
いのち
は
人
ひと
の
光
ひかり
なりき。
5
光
ひかり
は
暗󠄃黑
くらき
に
照
て
る、
而
しか
して
暗󠄃黑
くらき
は《[*]》
之
これ
を
悟
さと
らざりき。[*或は「之に勝󠄃たざりき」と譯す。]
6
神
かみ
より
遣󠄃
つかは
されたる
人
ひと
いでたり、その
名
な
をヨハネといふ。
7
この
人
ひと
は
證
あかし
のために
來
きた
れり、
光
ひかり
に
就
つ
きて
證
あかし
をなし、また
凡
すべ
ての
人
ひと
の
彼
かれ
によりて
信
しん
ぜん
爲
ため
なり。
8
彼
かれ
は
光
ひかり
にあらず、
光
ひかり
に
就
つ
きて
證
あかし
せん
爲
ため
に
來
きた
れるなり。
9
もろもろの
人
ひと
をてらす
眞
まこと
の
光
ひかり
ありて、
世
よ
にきたれり。
10
彼
かれ
は
世
よ
にあり、
世
よ
は
彼
かれ
に
由
よ
りて
成
な
りたるに、
世
よ
は
彼
かれ
を
知
し
らざりき。
11
かれは
己
おのれ
の
國
くに
にきたりしに、
己
おのれ
の
民
たみ
は
之
これ
を
受
う
けざりき。
12
されど
之
これ
を
受
う
けし
者
もの
、
即
すなは
ちその
名
な
を
信
しん
ぜし
者
もの
には、
神
かみ
の
子
こ
となる
權
けん
をあたへ
給
たま
へり。
13
斯
かゝ
る
人
ひと
は
血脈
ちすぢ
によらず、
肉
にく
の
欲
ねがひ
によらず、
人
ひと
の
欲
ねがひ
によらず、ただ
神
かみ
によりて
生
うま
れしなり。
14
言
ことば
は
肉體
にくたい
となりて
我
われ
らの
中
うち
に
宿
やど
りたまへり、
我
われ
らその
榮光
えいくわう
を
見
み
たり、
實
げ
に
父󠄃
ちち
の
獨子
ひとりご
の
榮光
えいくわう
にして
恩惠
めぐみ
と
眞理
まこと
とにて
滿
み
てり。
15
ヨハネ
彼
かれ
につきて
證
あかし
をなし、
呼
よば
はりて
言
い
ふ『「わが
後
のち
にきたる
者
もの
は
我
われ
に
勝󠄃
まさ
れり、
我
われ
より
前󠄃
さき
にありし
故
ゆゑ
なり」と、
我
わ
が
曾
かつ
ていへるは
此
こ
の
人
ひと
なり』
16
我
われ
らは
皆
みな
その
充
み
ち
滿
み
ちたる
中
うち
より
受
う
けて、
恩惠
めぐみ
に
恩惠
めぐみ
を
加
くは
へらる。
178㌻
17
律法
おきて
はモーセによりて
與
あた
へられ、
恩惠
めぐみ
と
眞理
まこと
とはイエス・キリストによりて
來
きた
れるなり。
18
未
いま
だ
神
かみ
を
見
み
し
者
もの
なし、ただ
父󠄃
ちち
の
懷裡
ふところ
にいます
獨子
ひとりご
の《[*]》
神
かみ
のみ
之
これ
を
顯
あらは
し
給
たま
へり。[*異本「の神」なし。]
19
さてユダヤ
人
びと
、エルサレムより
祭司
さいし
とレビ
人
びと
とをヨハネの
許
もと
に
遣󠄃
つかは
して『なんぢは
誰
たれ
なるか』と
問
と
はせし
時
とき
、ヨハネの
證
あかし
は
斯
かく
のごとし。
20
乃
すなは
ち
言
い
ひあらはして
諱
い
まず『
我
われ
はキリストにあらず』と
言
い
ひあらはせり。
21
また
問
と
ふ『さらば
何
なに
、エリヤなるか』
答
こた
ふ『
然
しか
らず』
問
と
ふ『かの
預言者
よげんしゃ
なるか』
答
こた
ふ『いな』
22
ここに
彼
かれ
ら
言
い
ふ『なんぢは
誰
たれ
なるか、
我
われ
らを
遣󠄃
つかは
しし
人々
ひとびと
に
答
こた
へ
得
う
るやうに
爲
せ
よ、なんぢ
己
おのれ
につきて
何
なに
と
言
い
ふか』
23
答
こた
へて
言
い
ふ『
我
われ
は
預言者
よげんしゃ
イザヤの
云
い
へるが
如
ごと
く「
主
しゅ
の
道󠄃
みち
を
直
なほ
くせよと、
荒野
あらの
に
呼
よば
はる
者
もの
の
聲
こゑ
」なり』
24
かの
遣󠄃
つかは
されたる
者
もの
は、パリサイ
人
びと
なりき。
25
また
問
と
ひて
言
い
ふ『なんぢ
若
も
しキリストに
非
あら
ず、またエリヤにも、かの
預言者
よげんしゃ
にも
非
あら
ずば、
何
なに
故
ゆゑ
バプテスマを
施
ほどこ
すか』
〘130㌻〙
26
ヨハネ
答
こた
へて
言
い
ふ『
我
われ
は
水
みづ
にてバプテスマを
施
ほどこ
す。なんぢらの
中
うち
に
汝
なんぢ
らの
知
し
らぬもの
一人
ひとり
たてり。
27
即
すなは
ち
我
わ
が
後
のち
にきたる
者
もの
なり、
我
われ
はその
鞋
くつ
の
紐
ひも
を
解
と
くにも
足
た
らず』
28
これらの
事
こと
は、ヨハネのバプテスマを
施
ほどこ
しゐたりしヨルダンの
向
むかひ
なるベタニヤにてありしなり。
29
明
あ
くる
日
ひ
ヨハネ、イエスの
己
おの
が
許
もと
にきたり
給
たま
ふを
見
み
ていふ『
視
み
よ、これぞ
世
よ
の
罪
つみ
を《[*]》
除
のぞ
く
神
かみ
の
羔羊
こひつじ
。[*或は「負󠄅ふ」と譯す。]
30
われ
曾
かつ
て「わが
後
のち
に
來
きた
る
人
ひと
あり、
我
われ
にまされり、
我
われ
より
前󠄃
さき
にありし
故
ゆゑ
なり」と
云
い
ひしは、
此
こ
の
人
ひと
なり。
31
我
われ
もと
彼
かれ
を
知
し
らざりき。
然
さ
れど
彼
かれ
のイスラエルに
顯
あらは
れんために、
我
われ
きたりて
水
みづ
にてバプテスマを
施
ほどこ
すなり』
32
ヨハネまた
證
あかし
をなして
言
い
ふ『われ
見
み
しに
御靈
みたま
、
鴿
はと
のごとく
天
てん
より
降
くだ
りて、その
上
うへ
に
止
とゞま
れり。
179㌻
33
我
われ
もと
彼
かれ
を
知
し
らざりき。
然
さ
れど
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し、
水
みづ
にてバプテスマを
施
ほどこ
させ
給
たま
ふもの、
我
われ
に
吿
つ
げて「なんぢ
御靈
みたま
くだりて
或
ある
人
ひと
の
上
うへ
に
止
とゞま
るを
見
み
ん、これぞ
聖󠄄
せい
靈
れい
にてバプテスマを
施
ほどこ
す
者
もの
なる」といひ
給
たま
へり。
34
われ
之
これ
を
見
み
て、その
神
かみ
の
子
こ
たるを
證
あかし
せしなり』
35
明
あ
くる
日
ひ
ヨハネまた
二人
ふたり
の
弟子
でし
とともに
立
た
ちて、
36
イエスの
步
あゆ
み
給
たま
ふを
見
み
ていふ『
視
み
よ、これぞ
神
かみ
の
羔羊
こひつじ
』
37
かく
語
かた
るをききて
二人
ふたり
の
弟子
でし
イエスに
從
したが
ひゆきたれば、
38
イエス
振反
ふりかへ
りて、その
從
したが
ひきたるを
見
み
て
言
い
ひたまふ『
何
なに
を
求
もと
むるか』
彼
かれ
等
ら
いふ『ラビ(
釋
と
きていへば
師
し
)いづこに
留
とゞま
り
給
たま
ふか』
39
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『きたれ、
然
さ
らば
見
み
ん』
彼
かれ
ら
徃
ゆ
きてその
留
とゞま
りたまふ
所󠄃
ところ
を
見
み
、この
日
ひ
ともに
留
とゞま
れり、
時
とき
は《[*]》
第十時
だいじふじ
ごろなりき。[*今の午後四時頃ならん。]
40
ヨハネより
聞
き
きてイエスに
從
したが
ひし
二人
ふたり
のうち
一人
ひとり
は、シモン・ペテロの
兄弟
きゃうだい
アンデレなり。
41
この
人
ひと
まづ
其
そ
の
兄弟
きゃうだい
シモンに
遇󠄃
あ
ひ『われらメシヤ(
釋
と
けばキリスト)に
遇󠄃
あ
へり』と
言
い
ひて、
42
彼
かれ
をイエスの
許
もと
に
連
つ
れきたれり。イエス
之
これ
に
目
め
を
注
と
めて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢはヨハネの
子
こ
シモンなり、
汝
なんぢ
ケパ(
釋
と
けばペテロ)と
稱
とな
へらるべし』
43
明
あ
くる
日
ひ
イエス、ガリラヤに
徃
ゆ
かんとし、ピリポにあひて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われに
從
したが
へ』
44
ピリポはアンデレとペテロとの
町
まち
なるベツサイダの
人
ひと
なり。
45
ピリポ、ナタナエルに
遇󠄃
あ
ひて
言
い
ふ『
我
われ
らはモーセが
律法
おきて
に
錄
しる
ししところ、
預言者
よげんしゃ
たちが
錄
しる
しし
所󠄃
ところ
の
者
もの
に
遇󠄃
あ
へり、ヨセフの
子
こ
ナザレのイエスなり』
46
ナタナエル
言
い
ふ『ナザレより
何
なに
の
善
よ
き
者
もの
か
出
い
づべき』ピリポいふ『
來
きた
りて
見
み
よ』
47
イエス、ナタナエルの
己
おの
が
許
もと
にきたるを
見
み
、これを
指
さ
して
言
い
ひたまふ『
視
み
よ、これ
眞
まこと
にイスラエル
人
びと
なり、その
衷
うち
に
虛僞
いつはり
なし』
〘131㌻〙
48
ナタナエル
言
い
ふ『
如何
いか
にして
我
われ
を
知
し
り
給
たま
ふか』イエス
答
こたへ
えて
言
い
ひたまふ『ピリポの
汝
なんぢ
を
呼
よ
ぶまへに
我
われ
なんぢが
無花果
いちぢく
の
樹
き
の
下
した
に
居
を
るを
見
み
たり』
180㌻
49
ナタナエル
答
こた
ふ『ラビ、なんぢは
神
かみ
の
子
こ
なり、
汝
なんぢ
はイスラエルの
王
わう
なり』
50
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
汝
なんぢ
が
無花果
いちぢく
の
樹
き
の
下
した
にをるを
見
み
たりと
言
い
ひしに
因
よ
りて
信
しん
ずるか、
汝
なんぢ
これよりも
更
さら
に
大
おほい
なる
事
こと
を
見
み
ん』
51
また
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
天
てん
ひらけて、
人
ひと
の
子
こ
のうへに
神
かみ
の
使
つかひ
たちの
昇
のぼ
り
降
くだ
りするを
汝
なんぢ
ら
見
み
るべし』
第2章
1
三日
みっか
めにガリラヤのカナに
婚禮
こんれい
ありて、イエスの
母
はは
そこに
居
を
り、
2
イエスも
弟子
でし
たちと
共
とも
に
婚禮
こんれい
に
招
まね
かれ
給
たま
ふ。
3
葡萄酒
ぶだうしゅ
つきたれば、
母
はは
、イエスに
言
い
ふ『かれらに
葡萄酒
ぶだうしゅ
なし』
4
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『をんなよ、
我
われ
と
汝
なんぢ
となにの
關係
かゝはり
あらんや、
我
わ
が
時
とき
は
未
いま
だ
來
きた
らず』
5
母
はは
、
僕
しもべ
どもに『
何
なに
にても
其
そ
の
命
めい
ずる
如
ごと
くせよ』と
言
い
ひおく。
6
彼處
かしこ
にユダヤ
人
びと
の
潔󠄄
きよめ
の
例
れい
にしたがひて
四
し
五
ご
斗
と
入
い
りの
石甕
いしがめ
六個
むつ
ならべあり。
7
イエス
僕
しもべ
に『
水
みづ
を
甕
かめ
に
滿
みた
せ』といひ
給
たま
へば、
口
くち
まで
滿
みた
す。
8
また
言
い
ひ
給
たま
ふ『いま
汲
く
み
取
と
りて
饗宴
ふるまひ
長
がしら
に
持
も
ちゆけ』
乃
すなは
ち
持
も
ちゆけり。
9
饗宴
ふるまひ
長
がしら
、
葡萄酒
ぶだうしゅ
になりたる
水
みづ
を
甞
な
めて、その
何處
いづこ
より
來
きた
りしかを
知
し
らざれば(
水
みづ
を
汲
く
みし
僕
しもべ
どもは
知
し
れり)
新郎
はなむこ
を
呼
よ
びて
言
い
ふ、
10
『おほよそ
人
ひと
は
先
まづ
よき
葡萄酒
ぶだうしゅ
を
出
いだ
し、
醉
ゑひ
のまはる
頃
ころ
ほひ
劣
おと
れるものを
出
いだ
すに、
汝
なんぢ
はよき
葡萄酒
ぶだうしゅ
を
今
いま
まで
留
と
め
置
お
きたり』
11
イエス
此
こ
の
第一
だいいち
の
徴
しるし
をガリラヤのカナにて
行
おこな
ひ、その
榮光
えいくわう
を
顯
あらは
し
給
たま
ひたれば、
弟子
でし
たち
彼
かれ
を
信
しん
じたり。
12
この
後
のち
イエス
及
およ
びその
母
はは
・
兄弟
きゃうだい
・
弟子
でし
たちカペナウムに
下
くだ
りて、そこに
數日
すにち
留
とゞま
りたり。
181㌻
13
斯
かく
てユダヤ
人
びと
の
過󠄃越
すぎこし
の
祭
まつり
ちかづきたれば、イエス、エルサレムに
上
のぼ
り
給
たま
ふ。
14
宮
みや
の
內
うち
に
牛
うし
・
羊
ひつじ
・
鴿
はと
を
賣
う
るもの、
兩替
りゃうがへ
する
者
もの
の
坐
ざ
するを
見
み
て、
15
繩
なは
を
鞭
むち
につくり、
羊
ひつじ
をも
牛
うし
をもみな
宮
みや
より
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
し、
兩替
りゃうがへ
する
者
もの
の
金
かね
を
散
ちら
し、その
臺
だい
を
倒
たふ
し、
16
鴿
はと
をうる
者
もの
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『これらの
物
もの
を
此處
ここ
より
取
と
り
去
さ
れ、わが
父󠄃
ちち
の
家
いへ
を
商賣
あきなひ
の
家
いへ
とすな』
17
弟子
でし
たち『なんぢの
家
いへ
をおもふ
熱心
ねっしん
われを
食󠄃
くら
はん』と
錄
しる
されたるを
憶
おも
ひ
出
いだ
せり。
〘132㌻〙
18
ここにユダヤ
人
びと
こたへてイエスに
言
い
ふ『なんぢ
此
これ
等
ら
の
事
こと
をなすからには、
我
われ
らに
何
なに
の
徴
しるし
を示すか』
19
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
此
こ
の《[*]》
宮
みや
をこぼて、われ
三日
みっか
の
間
あひだ
に
之
これ
を
起󠄃
おこ
さん』[*或は「聖󠄄所󠄃」と譯す。]
20
ユダヤ
人
びと
いふ『この《[*]》
宮
みや
を
建
た
つるには
四十
しじふ
六
ろく
年
ねん
を
經
へ
たり、なんぢは
三日
みっか
のうちに
之
これ
を
起󠄃
おこ
すか』[*或は「聖󠄄所󠄃」と譯す。]
21
これはイエス
己
おの
が
體
からだ
の
宮
みや
をさして
言
い
ひ
給
たま
へるなり。
22
然
さ
れば
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へり
給
たま
ひしのち、
弟子
でし
たち
斯
か
く
言
い
ひ
給
たま
ひしことを
憶
おも
ひ
出
いだ
して
聖󠄄書
せいしょ
とイエスの
言
い
ひ
給
たま
ひし
言
ことば
とを
信
しん
じたり。
23
過󠄃越
すぎこし
のまつりの
間
あひだ
、イエス、エルサレムに
在
いま
すほどに、
多
おほ
くの
人々
ひとびと
その
爲
な
し
給
たま
へる
徴
しるし
を
見
み
て
御名
みな
を
信
しん
じたり。
24
然
さ
れどイエス
己
おのれ
を
彼
かれ
らに
任
まか
せ
給
たま
はざりき。それは
凡
すべ
ての
人
ひと
を
知
し
り、
25
また
人
ひと
の
衷
うち
にある
事
こと
を
知
し
りたまへば、
人
ひと
に
就
つ
きて
證
あかし
する
者
もの
を
要󠄃
えう
せざる
故
ゆゑ
なり。
第3章
1
爰
こゝ
にパリサイ
人
びと
にて
名
な
をニコデモといふ
人
ひと
あり、ユダヤ
人
びと
の
宰
つかさ
なり。
2
夜
よる
イエスの
許
もと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『ラビ、
我
われ
らは
汝
なんぢ
の
神
かみ
より
來
きた
る
師
し
なるを
知
し
る。
神
かみ
もし
偕
とも
に
在
いま
さずば、
汝
なんぢ
が
行
おこな
ふこれらの
徴
しるし
は
誰
たれ
もなし
能
あた
はぬなり』
3
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
人
ひと
《[*]》あらたに
生
うま
れずば、
神
かみ
の
國
くに
を
見
み
ること
能
あた
はず』[*或は「上より」と譯す。]
182㌻
4
ニコデモ
言
い
ふ『
人
ひと
はや
老
お
いぬれば、
爭
いか
で
生
うま
るる
事
こと
を
得
え
んや、
再
ふたゝ
び
母
はは
の
胎
たい
に
入
い
りて
生
うま
るることを
得
え
んや』
5
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
人
ひと
は
水
みづ
と
靈
れい
とによりて
生
うま
れずば、
神
かみ
の
國
くに
に
入
い
ること
能
あた
はず、
6
肉
にく
によりて
生
うま
るる
者
もの
は
肉
にく
なり、
靈
れい
によりて
生
うま
るる
者
もの
は
靈
れい
なり。
7
なんぢら《[*]》
新
あらた
に
生
うま
るべしと
我
わ
が
汝
なんぢ
に
言
い
ひしを
怪
あや
しむな。[*或は「上より」と譯す。]
8
風
かぜ
は《[*]》
己
おの
が
好
この
むところに
吹
ふ
く、
汝
なんぢ
その
聲
こゑ
を
聞
き
けども、
何處
いづこ
より
來
きた
り
何處
いづこ
へ
徃
ゆ
くを
知
し
らず。すべて
靈
れい
によりて
生
うま
るる
者
もの
も
斯
かく
のごとし』[*原語「靈」とおなじ。]
9
ニコデモ
答
こた
へて
言
い
ふ『いかで
斯
かゝ
る
事
こと
どものあり
得
う
べき』
10
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢはイスラエルの
師
し
にして
猶
なほ
かかる
事
こと
どもを
知
し
らぬか。
11
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
我
われ
ら
知
し
ることを
語
かた
り、また
見
み
しことを
證
あかし
す、
然
しか
るに
汝
なんぢ
らその
證
あかし
を
受
う
けず。
12
われ
地
ち
のことを
言
い
ふに
汝
なんぢ
ら
信
しん
ぜずば、
天
てん
のことを
言
い
はんには
爭
いか
で
信
しん
ぜんや。
13
天
てん
より
降
くだ
りし
者
もの
、
即
すなは
ち
人
ひと
の
子
こ
の
他
ほか
には、
天
てん
に
昇
のぼ
りしものなし。
14
モーセ
荒野
あらの
にて
蛇
へび
を
擧
あ
げしごとく、
人
ひと
の
子
こ
もまた
必
かなら
ず
擧
あ
げらるべし。
15
すべて
信
しん
ずる
者
もの
の
彼
かれ
によりて
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
得
え
ん
爲
ため
なり』
16
それ
神
かみ
はその
獨子
ひとりご
を
賜
たま
ふほどに
世
よ
を
愛
あい
し
給
たま
へり、すべて
彼
かれ
を
信
しん
ずる
者
もの
の
亡
ほろ
びずして
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
得
え
んためなり。
〘133㌻〙
17
神
かみ
その
子
こ
を
世
よ
に
遣󠄃
つかは
したまへるは、
世
よ
を
審
さば
かん
爲
ため
にあらず、
彼
かれ
によりて
世
よ
の
救
すく
はれん
爲
ため
なり。
18
彼
かれ
を
信
しん
ずる
者
もの
は
審
さば
かれず、
信
しん
ぜぬ
者
もの
は
旣
すで
に
審
さば
かれたり。
神
かみ
の
獨子
ひとりご
の
名
な
を
信
しん
ぜざりしが
故
ゆゑ
なり。
19
その
審判󠄄
さばき
は
是
これ
なり。
光
ひかり
、
世
よ
にきたりしに、
人
ひと
その
行爲
おこなひ
の
惡
あ
しきによりて、
光
ひかり
よりも
暗󠄃黑
くらき
を
愛
あい
したり。
20
すべて
惡
あく
を
行
おこな
ふ
者
もの
は
光
ひかり
をにくみて
光
ひかり
に
來
きた
らず、その
行爲
おこなひ
の
責
せ
められざらん
爲
ため
なり。
21
眞
まこと
をおこなふ
者
もの
は
光
ひかり
にきたる、その
行爲
おこなひ
の
神
かみ
によりて
行
おこな
ひたることの
顯
あらは
れん
爲
ため
なり。《[*]》[*二一、或は「眞を行ふ者はその行爲のあらはれん爲に光に來る、神によりて行ひたる故なり」と譯す。]
183㌻
22
この
後
のち
イエス、
弟子
でし
たちとユダヤの
地
ち
にゆき、
其處
そこ
にともに
留
とゞま
りてバプテスマを
施
ほどこ
し
給
たま
ふ。
23
ヨハネもサリムに
近󠄃
ちか
きアイノンにてバプテスマを
施
ほどこ
しゐたり、
其處
そこ
に
水
みづ
おほくある
故
ゆゑ
なり。
人々
ひとびと
つどひ
來
きた
りてバプテスマを
受
う
く。
24
ヨハネは
未
いま
だ
獄
ひとや
に
入
い
れられざりしなり。
25
爰
こゝ
にヨハネの
弟子
でし
たちと
一人
ひとり
のユダヤ
人
びと
との
間
あひだ
に、
潔󠄄
きよめ
につきて
論
ろん
起󠄃
おこ
りたれば、
26
彼
かれ
らヨハネの
許
もと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『ラビ、
視
み
よ、
汝
なんぢ
とともにヨルダンの
彼方
かなた
にありし
者
もの
、なんぢが
證
あかし
せし
者
もの
、バプテスマを
施
ほどこ
し、
人
ひと
みなその
許
もと
に
徃
ゆ
くなり』
27
ヨハネ
答
こた
へて
言
い
ふ『
人
ひと
は
天
てん
より
與
あた
へられずば、
何
なに
をも
受
う
くること
能
あた
はず。
28
「
我
われ
はキリストにあらず」
唯
たゞ
「その
前󠄃
まへ
に
遣󠄃
つかは
されたる
者
もの
なり」と
我
わ
が
言
い
ひしことに
就
つ
きて
證
あかし
する
者
もの
は、
汝
なんぢ
らなり。
29
新婦󠄃
はなよめ
をもつ
者
もの
は
新郎
はなむこ
なり、
新郎
はなむこ
の
友
とも
は、
立
た
ちて
新郎
はなむこ
の
聲
こゑ
をきくとき、
大
おほい
に
喜
よろこ
ぶ、この
我
わ
が
勸喜
よろこび
いま
滿
み
ちたり。
30
彼
かれ
は
必
かなら
ず
盛
さかん
になり、
我
われ
は
衰
おとろ
ふべし』
31
上
うへ
より
來
きた
るものは
凡
すべ
ての
物
もの
の
上
うへ
にあり、
地
ち
より
出
い
づるものは
地
ち
の
者
もの
にして、その
語
かた
ることも
地
ち
の
事
こと
なり。
天
てん
より
來
きた
るものは
凡
すべ
ての
物
もの
の
上
うへ
にあり。
32
彼
かれ
その
見
み
しところ、
聞
き
きしところを
證
あかし
したまふに、
誰
たれ
もその
證
あかし
を
受
う
けず。
33
その
證
あかし
を
受
う
くる
者
もの
は、
印
いん
して
神
かみ
を
眞
まこと
なりとす。
34
神
かみ
の
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
は
神
かみ
の
言
ことば
をかたる、
神
かみ
、
御靈
みたま
を
賜
たま
ひて
量
はか
りなければなり。
35
父󠄃
ちち
は
御子
みこ
を
愛
あい
し、
萬物
ばんもつ
をその
手
て
に
委
ゆだ
ね
給
たま
へり。
36
御子
みこ
を
信
しん
ずる
者
もの
は
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
をもち、
御子
みこ
に
從
したが
はぬ
者
もの
は
生命
いのち
を
見
み
ず、
反
かへ
つて
神
かみ
の
怒
いかり
その
上
うへ
に
止
とゞま
るなり。
〘134㌻〙
第4章
1
主
しゅ
、おのれの
弟子
でし
を
造󠄃
つく
り、
之
これ
にバプテスマを
施
ほどこ
すこと、ヨハネよりも
多
おほ
しと、パリサイ
人
びと
に
聞
きこ
えたるを
知
し
り
給
たま
ひし
時
とき
、
184㌻
2
(その
實
じつ
イエス
自
みづか
らバプテスマを
施
ほどこ
ししにあらず、その
弟子
でし
たちなり)
3
ユダヤを
去
さ
りて
復
また
ガリラヤに
徃
ゆ
き
給
たま
ふ。
4
サマリヤを
經
へ
ざるを
得
え
ず。
5
サマリヤのスカルといふ
町
まち
にいたり
給
たま
へるが、この
町
まち
はヤコブその
子
こ
ヨセフに
與
あた
へし
土地
とち
に
近󠄃
ちか
くして、
6
此處
ここ
にヤコブの
泉
いづみ
あり。イエス
旅路
たびぢ
に
疲
つか
れて
泉
いづみ
の
傍
かたは
らに
坐
ざ
し
給
たま
ふ、
時
とき
は《[*]》
第六
だいろく
時
じ
頃
ごろ
なりき。[*今の正午頃ならん。]
7
サマリヤの
或
ある
女
をんな
、
水
みづ
を
汲
く
まんとて
來
きた
りたれば、イエス
之
これ
に『われに
飮
の
ませよ』と
言
い
ひたまふ。
8
弟子
でし
たちは
食󠄃物
しょくもつ
を
買
か
はんとて
町
まち
にゆきしなり。
9
サマリヤの
女
をんな
いふ『なんぢはユダヤ
人
びと
なるに、
如何
いか
なればサマリヤの
女
をんな
なる
我
われ
に、
飮
の
むことを
求
もと
むるか』これはユダヤ
人
びと
とサマリヤ
人
びと
とは
交
まじは
りせぬ
故
ゆゑ
なり。
10
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢ
若
も
し
神
かみ
の
賜物
たまもの
を
知
し
り、また「
我
われ
に
飮
の
ませよ」といふ
者
もの
の
誰
たれ
なるを
知
し
りたらんには、
之
これ
に
求
もと
めしならん、
然
さ
らば
汝
なんぢ
に
活
い
ける
水
みづ
を
與
あた
へしものを』
11
女
をんな
いふ『
主
しゅ
よ、なんぢは
汲
く
む
物
もの
を
持
も
たず、
井
ゐど
は
深
ふか
し、その
活
い
ける
水
みづ
は
何處
いづこ
より
得
え
しぞ。
12
汝
なんぢ
はこの
井
ゐど
を
我
われ
らに
與
あた
へし
我
われ
らの
父󠄃
ちち
ヤコブよりも
大
おほい
なるか、
彼
かれ
も、その
子
こ
らも、その
家畜
かちく
も、これより
飮
の
みたり』
13
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『すべて
此
こ
の
水
みづ
をのむ
者
もの
は、また
渇
かわ
かん。
14
然
さ
れど
我
わ
があたふる
水
みづ
を
飮
の
む
者
もの
は、
永遠󠄄
とこしへ
に
渇
かわ
くことなし。わが
與
あた
ふる
水
みづ
は
彼
かれ
の
中
うち
にて
泉
いづみ
となり、
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
の
水
みづ
湧
わ
きいづべし』
15
女
をんな
いふ『
主
しゅ
よ、わが
渇
かわ
くことなく、
又󠄂
また
ここに
汲
く
みに
來
こ
ぬために、その
水
みづ
を
我
われ
にあたへよ』
16
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『ゆきて
夫
をっと
をここに
呼
よ
びきたれ』
17
女
をんな
こたへて
言
い
ふ『われに
夫
をっと
なし』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
夫
をっと
なしといふは
宜
うべ
なり。
18
夫
をっと
は
五
ご
人
にん
までありしが、
今
いま
ある
者
もの
は、なんぢの
夫
をっと
にあらず。
無
な
しと
云
い
へるは
眞
まこと
なり』
19
女
をんな
いふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
なんぢを
預言者
よげんしゃ
とみとむ。
20
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちは
此
こ
の
山
やま
にて
拜
はい
したるに、
汝
なんぢ
らは
拜
はい
すべき
處
ところ
をエルサレムなりと
言
い
ふ』
185㌻
21
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『をんなよ、
我
わ
が
言
い
ふことを
信
しん
ぜよ、
此
こ
の
山
やま
にもエルサレムにもあらで、
汝
なんぢ
ら
父󠄃
ちち
を
拜
はい
する
時
とき
きたるなり。
22
汝
なんぢ
らは
知
し
らぬ
者
もの
を
拜
はい
し、
我
われ
らは
知
し
る
者
もの
を
拜
はい
す、
救
すくひ
はユダヤ
人
びと
より
出
い
づればなり。
23
されど
眞
まこと
の
禮拜者
れいはいしゃ
の、
靈
れい
と
眞
まこと
とをもて
父󠄃
ちち
を
拜
はい
する
時
とき
きたらん、
今
いま
すでに
來
きた
れり。
父󠄃
ちち
は
斯
かく
のごとく
拜
はい
する
者
もの
を
求
もと
めたまふ。
24
神
かみ
は
靈
れい
なれば、
拜
はい
する
者
もの
も
靈
れい
と
眞
まこと
とをもて
拜
はい
すべきなり』
25
女
をんな
いふ『
我
われ
はキリストと
稱
とな
ふるメシヤの
來
きた
ることを
知
し
る、
彼
かれ
きたらば、
諸般
もろもろ
のことを
我
われ
らに
吿
つ
げん』
〘135㌻〙
26
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢと
語
かた
る
我
われ
はそれなり』
27
時
とき
に
弟子
でし
たち
歸
かへ
りきたりて、
女
をんな
と
語
かた
り
給
たま
ふを
怪
あや
しみたれど、
何
なに
を
求
もと
め
給
たま
ふか、
何
なに
故
ゆゑ
かれと
語
かた
り
給
たま
ふかと
問
と
ふもの
誰
たれ
もなし。
28
爰
こゝ
に
女
をんな
その
水瓶
みづがめ
を
遺󠄃
のこ
しおき、
町
まち
にゆきて
人々
ひとびと
にいふ、
29
『
來
きた
りて
見
み
よ、わが
爲
な
しし
事
こと
をことごとく
我
われ
に
吿
つ
げし
人
ひと
を。この
人
ひと
、
或
あるひ
はキリストならんか』
30
人々
ひとびと
町
まち
を
出
い
でてイエスの
許
もと
にゆく。
31
この
間
あひだ
に
弟子
でし
たち
請󠄃
こ
ひて
言
い
ふ『ラビ、
食󠄃
しょく
し
給
たま
へ』
32
イエス
言
い
ひたまふ『
我
われ
には
汝
なんぢ
らの
知
し
らぬ
我
わ
が
食󠄃
しょく
する
食󠄃物
しょくもつ
あり』
33
弟子
でし
たち
互
たがひ
にいふ『たれか
食󠄃
しょく
する
物
もの
を
持
も
ち
來
きた
りしか』
34
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われを
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へる
物
もの
の
御意󠄃
みこゝろ
を
行
おこな
ひ、その
御業
みわざ
をなし
遂󠄅
と
ぐるは、
是
これ
わが
食󠄃物
しょくもつ
なり。
35
なんぢら
收穫時
かりいれどき
の
來
きた
るには、なほ
四月
よつき
ありと
言
い
はずや。
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
目
め
をあげて
畑
はた
を
見
み
よ、《[*]》はや
黄
き
ばみて
收穫時
かりいれどき
になれり。[*「はや」或は三六節「刈る者」の上におく。]
36
刈
か
る
者
もの
は、
價
あたひ
を
受
う
けて
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
の
實
み
を
集
あつ
む。
播
ま
く
者
もの
と
刈
か
る
者
もの
とともに
喜
よろこ
ばん
爲
ため
なり。
37
俚諺
ことわざ
に
彼
かれ
は
播
ま
き、
此
これ
は
刈
か
るといへるは、
斯
こゝ
において
眞
まこと
なり。
38
我
われ
なんぢらを
遣󠄃
つかは
して
勞
らう
せざりしものを
刈
か
らしむ。
他
ほか
の
人々
ひとびと
さきに
勞
らう
し、
汝
なんぢ
らはその
勞
らう
を
收
をさ
むるなり』
186㌻
39
此
こ
の
町
まち
の
多
おほ
くのサマリヤ
人
びと
、
女
をんな
の『わが
爲
な
しし
事
こと
をことごとく
吿
つ
げし』と
證
あかし
したる
言
ことば
によりてイエスを
信
しん
じたり。
40
斯
かく
てサマリヤ
人
びと
、
御許
みもと
にきたりて、
此
こ
の
町
まち
に
留
とゞま
らんことを
請󠄃
こ
ひたれば、
此處
ここ
に
二日
ふつか
とどまり
給
たま
ふ。
41
御言
みことば
によりて
猶
なほ
もおほくの
人
ひと
、
信
しん
じたり。
42
かくて
女
をんな
に
言
い
ふ『
今
いま
われらの
信
しん
ずるは
汝
なんぢ
のかたる
言
ことば
によるにあらず、
親
した
しく
聽
き
きて、これは
眞
まこと
に
世
よ
の
救主
すくひぬし
なりと
知
し
りたる
故
ゆゑ
なり』
43
二日
ふつか
の
後
のち
イエスここを
去
さ
りてガリラヤに
徃
ゆ
き
給
たま
ふ。
44
イエス
自
みづか
ら
證
あかし
して
預言者
よげんしゃ
は
己
おの
が
郷
さと
にて
尊󠄅
たふと
ばるる
事
こと
なしと
言
い
ひ
給
たま
へり。
45
斯
かく
てガリラヤに
徃
ゆ
き
給
たま
へば、ガリラヤ
人
びと
これを
迎󠄃
むか
へたり。
前󠄃
さき
に
彼
かれ
らも
祭
まつり
に
上
のぼ
り、その
祭
まつり
の
時
とき
にエルサレムにて
行
おこな
ひ
給
たま
ひし
事
こと
を
見
み
たる
故
ゆゑ
なり。
46
イエス
復
また
ガリラヤのカナに
徃
ゆ
き
給
たま
ふ、ここは
前󠄃
さき
に
水
みづ
を
葡萄酒
ぶだうしゅ
になし
給
たま
ひし
處
ところ
なり。
時
とき
に
王
わう
の
近󠄃臣
きんしん
あり、その
子
こ
カペナウムにて
病
や
みゐたれば、
47
イエスのユダヤよりガリラヤに
來
きた
り
給
たま
へるを
聞
き
き、
御許
みもと
にゆきてカペナウムに
下
くだ
り、その
子
こ
を
醫
いや
し
給
たま
はんことを
請󠄃
こ
ふ、
子
こ
は
死
し
ぬばかりなりしなり。
48
爰
こゝ
にイエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
徴
しるし
と
不思議
ふしぎ
とを
見
み
ずば、
信
しん
ぜじ』
〘136㌻〙
49
近󠄃臣
きんしん
いふ『
主
しゅ
よ、わが
子
こ
の
死
し
なぬ
間
うち
にくだり
給
たま
へ』
50
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『かへれ、
汝
なんぢ
の
子
こ
は
生
い
くるなり』
彼
かれ
はイエスの
言
い
ひ
給
たま
ひしことを
信
しん
じて
歸
かへ
りしが、
51
下
くだ
る
途󠄃中
とちゅう
、
僕
しもべ
ども
徃
ゆ
き
遇󠄃
あ
ひて、その
子
こ
の
生
い
きたることを
吿
つ
ぐ。
52
その
癒󠄄
い
えはじめし
時
とき
を
問
と
ひしに『
昨日
きのふ
の《[*]》
第七
だいしち
時
じ
に
熱
ねつ
去
さ
れり』といふ。[*今の午後一時頃ならん。]
53
父󠄃
ちち
その
時
とき
の、イエスが『なんぢの
子
こ
は
生
い
くるなり』と
言
い
ひ
給
たま
ひし
時
とき
と
同
おな
じきを
知
し
り、
而
しか
して
己
おのれ
も
家
いへ
の
者
もの
もみな
信
しん
じたり。
54
是
これ
はイエス、ユダヤよりガリラヤに
徃
ゆ
きて
爲
な
し
給
たま
へる
第二
だいに
の
徴
しるし
なり。
187㌻
第5章
1
この
後
のち
ユダヤ
人
びと
の
祭
まつり
ありて、イエス、エルサレムに
上
のぼ
り
給
たま
ふ。
2
エルサレムにある
羊
ひつじ
門
もん
のほとりにヘブル
語
ご
にてベテスダといふ
池
いけ
あり、
之
これ
にそひて
五
いつ
つの
廊
らう
あり。
3
その
內
うち
に
病
や
める
者
もの
・
盲人
めしひ
・
跛者
あしなへ
・
痩
や
せ
衰
おとろ
へたる
者
もの
ども
夥多
おびたゞ
しく
臥
ふ
しゐたり。《[*]》(
水
みづ
の
動
うご
くを
待
ま
てるなり。[*異本括孤中の句なし。]
4
それは
御使
みつかひ
のをりをり
降
くだ
りて
水
みづ
を
動
うご
かすことあれば、その
動
うご
きたるのち
最先
いやさき
に
池
いけ
にいる
者
もの
は、
如何
いか
なる
病
やまひ
にても
癒󠄄
い
ゆる
故
ゆゑ
なり)
5
爰
こゝ
に
三十
さんじふ
八
はち
年
ねん
、
病
やまひ
になやむ
人
ひと
ありしが、
6
イエスその
臥
ふ
し
居
を
るを
見
み
、かつその
病
やまひ
の
久
ひさ
しきを
知
し
り、
之
これ
に『なんぢ
癒󠄄
い
えんことを
願
ねが
ふか』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
7
病
や
める
者
もの
こたふ『
主
しゅ
よ、
水
みづ
の
動
うご
くとき、
我
われ
を
池
いけ
に
入
い
るる
者
もの
なし、
我
わ
が
徃
ゆ
くほどに
他
ほか
の
人
ひと
、さきだち
下
くだ
るなり』
8
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
起󠄃
お
きよ、
床
とこ
を
取
と
りあげて
步
あゆ
め』
9
この
人
ひと
ただちに
癒󠄄
い
え、
床
とこ
を
取
と
りあげて
步
あゆ
めり。
その
日
ひ
は
安息
あんそく
日
にち
に
當
あた
りたれば、
10
ユダヤ
人
びと
、
醫
いや
されたる
人
ひと
にいふ『
安息
あんそく
日
にち
なり、
床
とこ
を
取
と
りあぐるは
宜
よろ
しからず』
11
答
こた
ふ『われを
醫
いや
ししその
人
ひと
「
床
とこ
を
取
と
りあげて
步
あゆ
め」と
云
い
へり』
12
かれら
問
と
ふ『「
取
と
りあげて
步
あゆ
め」と
言
い
ひし
人
ひと
は
誰
たれ
なるか』
13
されど
醫
いや
されし
者
もの
は、その
誰
たれ
なるを
知
し
らざりき、そこに
群衆
ぐんじゅう
ゐたればイエス
退󠄃
しりぞ
き
給
たま
ひしに
因
よ
る。
14
この
後
のち
イエス
宮
みや
にて
彼
かれ
に
遇󠄃
あ
ひて
言
い
ひたまふ『
視
み
よ、なんぢ
癒󠄄
い
えたり。
再
ふたゝ
び
罪
つみ
を
犯
をか
すな、
恐
おそ
らくは
更
さら
に
大
おほい
なる
惡
あ
しきこと
汝
なんぢ
に
起󠄃
おこ
らん』
15
この
人
ひと
ゆきてユダヤ
人
びと
に、おのれを
醫
いや
したる
者
もの
のイエスなるを
吿
つ
ぐ。
16
ここにユダヤ
人
びと
かかる
事
こと
を
安息
あんそく
日
にち
になすとて、イエスを
責
せ
めたれば、
17
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『わが
父󠄃
ちち
は
今
いま
にいたるまで
働
はたら
き
給
たま
ふ、
我
われ
もまた
働
はたら
くなり』
〘137㌻〙
18
此
これ
に
由
よ
りてユダヤ
人
びと
いよいよイエスを
殺
ころ
さんと
思
おも
ふ。それは
安息
あんそく
日
にち
を
破
やぶ
るのみならず、
神
かみ
を
我
わ
が
父󠄃
ちち
といひて
己
おのれ
を
神
かみ
と
等
ひと
しき
者
もの
になし
給
たま
ひし
故
ゆゑ
なり。
188㌻
19
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
子
こ
は
父󠄃
ちち
のなし
給
たま
ふことを
見
み
て
行
おこな
ふほかは
自
みづか
ら
何事
なにごと
をも
爲
な
し
得
え
ず、
父󠄃
ちち
のなし
給
たま
ふことは
子
こ
もまた
同
おな
じく
爲
な
すなり。
20
父󠄃
ちち
は
子
こ
を
愛
あい
してその
爲
な
す
所󠄃
ところ
をことごとく
子
こ
に
示
しめ
したまふ。また
更
さら
に
大
おほい
なる
業
わざ
を
示
しめ
し
給
たま
はん、
汝
なんぢ
等
ら
をして
怪
あや
しましめん
爲
ため
なり。
21
父󠄃
ちち
の
死
し
にし
者
もの
を
起󠄃
おこ
して
活
いか
し
給
たま
ふごとく、
子
こ
もまた
己
おの
が
欲
ほっ
する
者
もの
を
活
いか
すなり。
22
父󠄃
ちち
は
誰
たれ
をも
審
さば
き
給
たま
はず、
審判󠄄
さばき
をさへみな
子
こ
に
委
ゆだ
ね
給
たま
へり。
23
これ
凡
すべ
ての
人
ひと
の
父󠄃
ちち
を
敬
うやま
ふごとくに
子
こ
を
敬
うやま
はん
爲
ため
なり。
子
こ
を
敬
うやま
はぬ
者
もの
は
之
これ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
父󠄃
ちち
をも
敬
うやま
はぬなり。
24
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、わが
言
ことば
をききて
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
信
しん
ずる
人
ひと
は、
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
をもち、かつ
審判󠄄
さばき
に
至
いた
らず、
死
し
より
生命
いのち
に
移
うつ
れるなり。
25
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
死
し
にし
人
ひと
、
神
かみ
の
子
こ
の
聲
こゑ
をきく
時
とき
きたらん、
今
いま
すでに
來
きた
れり、
而
しか
して
聞
き
く
人
ひと
は
活
い
くべし。
26
これ
父󠄃
ちち
みづから
生命
いのち
を
有
も
ち
給
たま
ふごとく、
子
こ
にも
自
みづか
ら
生命
いのち
を
有
も
つことを
得
え
させ、
27
また
人
ひと
の
子
こ
たるに
因
よ
りて
審判󠄄
さばき
する
權
けん
を
與
あた
へ
給
たま
ひしなり。
28
汝
なんぢ
ら
之
これ
を
怪
あや
しむな、
墓
はか
にある
者
もの
みな
神
かみ
の
子
こ
の
聲
こゑ
をききて
出
い
づる
時
とき
きたらん。
29
善
ぜん
をなしし
者
もの
は
生命
いのち
に
甦
よみが
へり、
惡
あく
を
行
おこな
ひし
者
もの
は
審判󠄄
さばき
に
甦
よみが
へるべし。
30
我
われ
みづから
何事
なにごと
もなし
能
あた
はず、ただ
聞
き
くままに
審
さば
くなり。わが
審判󠄄
さばき
は
正
たゞ
し、それは
我
わ
が
意󠄃
こゝろ
を
求
もと
めずして、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
の
御意󠄃
みこゝろ
を
求
もと
むるに
因
よ
る。
31
我
われ
もし
己
おのれ
につきて
證
あかし
せば、
我
わ
が
證
あかし
は
眞
まこと
ならず。
32
我
われ
につきて
證
あかし
する
者
もの
は、
他
ほか
にあり、その
我
われ
につきて
證
あかし
する
證
あかし
の
眞
まこと
なるを
我
われ
は
知
し
る。
33
なんぢら
前󠄃
さき
に
人
ひと
をヨハネに
遣󠄃
つかは
ししに、
彼
かれ
は
眞
まこと
につきて
證
あかし
せり。
34
我
われ
は
人
ひと
よりの
證
あかし
を
受
う
くる
事
こと
をせねど、
唯
たゞ
なんぢらの
救
すく
はれん
爲
ため
に
之
これ
を
言
い
ふ。
35
かれは
燃
も
えて
輝
かゞや
く
燈火
ともしび
なりしが、
汝
なんぢ
等
ら
その
光
ひかり
にありて
暫時
しばし
よろこぶ
事
こと
をせり。
189㌻
36
然
さ
れど
我
われ
にはヨハネの
證
あかし
よりも
大
おほい
なる
證
あかし
あり。
父󠄃
ちち
の
我
われ
にあたへて
成
な
し
遂󠄅
と
げしめ
給
たま
ふわざ、
即
すなは
ち
我
わ
がおこなふ
業
わざ
は、
我
われ
につきて
父󠄃
ちち
の
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひたるを
證
あかし
し、
37
また
我
われ
をおくり
給
たま
ひし
父󠄃
ちち
も、
我
われ
につきて
證
あかし
し
給
たま
へり。
汝
なんぢ
らは
未
いま
だその
御聲
みこゑ
を
聞
き
きし
事
こと
なく、その
御形
みかたち
を
見
み
し
事
こと
なし。
38
その
御言
みことば
は
汝
なんぢ
らの
衷
うち
にとどまらず、その
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
信
しん
ぜぬに
因
よ
りて
知
し
らるるなり。
39
汝
なんぢ
らは
聖󠄄書
せいしょ
に
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
ありと
思
おも
ひて
之
これ
を
査
しら
ぶ、されどこの
聖󠄄書
せいしょ
は
我
われ
につきて
證
あかし
するものなり。
〘138㌻〙
40
然
しか
るに
汝
なんぢ
ら
生命
いのち
を
得
え
んために
我
われ
に
來
きた
るを
欲
ほっ
せず。
41
我
われ
は
人
ひと
よりの
譽
ほまれ
をうくる
事
こと
をせず、
42
ただ
汝
なんぢ
らの
衷
うち
に
神
かみ
を
愛
あい
する
事
こと
なきを
知
し
る。
43
我
われ
はわが
父󠄃
ちち
の
名
な
によりて
來
きた
りしに、
汝
なんぢ
等
ら
われを
受
う
けず、もし
他
ほか
の
人
ひと
おのれの
名
な
によりて
來
きた
らば
之
これ
を
受
う
けん。
44
互
たがひ
に
譽
ほまれ
をうけて
唯一
ゆゐいつ
の
神
かみ
よりの
譽
ほまれ
を
求
もと
めぬ
汝
なんぢ
らは、
爭
いか
で
信
しん
ずることを
得
え
んや。
45
われ
父󠄃
ちち
に
汝
なんぢ
らを
訴
うった
へんとすと
思
おも
ふな、
訴
うった
ふるもの
一人
ひとり
あり、
汝
なんぢ
らが
賴
たのみ
とするモーセなり。
46
若
も
しモーセを
信
しん
ぜしならば、
我
われ
を
信
しん
ぜしならん、
彼
かれ
は
我
われ
につきて
錄
しる
したればなり。
47
されど
彼
かれ
の
書
ふみ
を
信
しん
ぜずば、
爭
いか
で
我
わ
が
言
ことば
を
信
しん
ぜんや』
第6章
1
この
後
のち
イエス、ガリラヤの
海
うみ
、
即
すなは
ちテベリヤの
海
うみ
の
彼方
かなた
にゆき
給
たま
へば、
2
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
これに
從
したが
ふ、これは
病
や
みたる
者
もの
に
行
おこな
ひたまへる
徴
しるし
を
見
み
し
故
ゆゑ
なり。
3
イエス、
山
やま
に
登
のぼ
りて、
弟子
でし
たちと
共
とも
にそこに
坐
ざ
し
給
たま
ふ。
4
時
とき
はユダヤ
人
びと
の
祭
まつり
なる
過󠄃越
すぎこし
に
近󠄃
ちか
し。
5
イエス
眼
め
をあげて
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
のきたるを
見
み
てピリポに
言
い
ひ
給
たま
ふ『われら
何處
いづこ
よりパンを
買
か
ひて、
此
こ
の
人々
ひとびと
に
食󠄃
くら
はすべきか』
6
かく
言
い
ひ
給
たま
ふはピリポを
試
こゝろ
むるためにて、
自
みづか
ら
爲
な
さんとする
事
こと
を
知
し
り
給
たま
ふなり。
190㌻
7
ピリポ
答
こた
へて
言
い
ふ『
二
に
百
ひゃく
デナリのパンありとも、
人々
ひとびと
すこしづつ
受
う
くるになほ
足
た
らじ』
8
弟子
でし
の
一人
ひとり
にてシモン・ペテロの
兄弟
きゃうだい
なるアンデレ
言
い
ふ
9
『ここに
一人
ひとり
の
童子
わらべ
あり、
大麥
おほむぎ
のパン
五
いつ
つと
小
ちひさ
き
肴
さかな
二
ふた
つとをもてり、
然
さ
れど
此
こ
の
多
おほ
くの
人
ひと
には
何
なに
にか
爲
な
らん』
10
イエス
言
い
ひたまふ『
人々
ひとびと
を
坐
ざ
せしめよ』その
處
ところ
に
多
おほ
くの
草
くさ
ありて
人々
ひとびと
坐
ざ
せしが、その
數
かず
おほよそ
五
ご
千
せん
人
にん
なりき。
11
爰
こゝ
にイエス、パンを
取
と
りて
謝
しゃ
し、
坐
ざ
したる
人々
ひとびと
に
分󠄃
わか
ちあたへ、また
肴
さかな
をも
然
しか
なして、その
欲
ほっ
するほど
與
あた
へ
給
たま
ふ。
12
人々
ひとびと
の
飽󠄄
あ
きたるのち
弟子
でし
たちに
言
い
ひたまふ『
廢
すた
るもののなきように
擘
さ
きたる
餘
あまり
をあつめよ』
13
乃
すなは
ち
集
あつ
めたるに、
五
いつ
つの
大麥
おほむぎ
のパンの
擘
さ
きたるを
食󠄃
くら
ひしものの
餘
あまり
、
十二
じふに
の
筐
かご
に
滿
み
ちたり。
14
人々
ひとびと
その
爲
な
し
給
たま
ひし
徴
しるし
を
見
み
ていふ『
實
げ
にこれは
世
よ
に
來
きた
るべき
預言者
よげんしゃ
なり』
15
イエス
彼
かれ
らが
來
きた
りて
己
おのれ
をとらへ、
王
わう
となさんとするを
知
し
り、
復
また
ひとりにて
山
やま
に
遁
のが
れたまふ。
16
夕
ゆふべ
になりて
弟子
でし
たち
海
うみ
にくだり、
17
船
ふね
にのり
海
うみ
を
渡
わた
りて、カペナウムに
徃
ゆ
かんとす。
旣
すで
に
暗󠄃
くら
くなりたるに、イエス
未
いま
だ
來
きた
りたまはず。
18
大風
おほかぜ
ふきて
海
うみ
ややに
荒出
あれい
づ。
19
かくて
四
し
五
ご
十
じふ
丁
ちゃう
こぎ
出
い
でしに、イエスの
海
うみ
の
上
うへ
をあゆみ、
船
ふね
に
近󠄃
ちか
づき
給
たま
ふを
見
み
て
懼
おそ
れたれば、
〘139㌻〙
20
イエス
言
い
ひたまふ『
我
われ
なり、
懼
おそ
るな』
21
乃
すなは
ちイエスを
船
ふね
に
歡
よろこ
び
迎󠄃
むか
へしに、
船
ふね
は
直
たゞ
ちに
徃
ゆ
かんとする
地
ち
に
著
つ
けり。
22
明
あ
くる
日
ひ
、
海
うみ
のかなたに
立
た
てる
群衆
ぐんじゅう
は、
一艘
いっさう
のほかに
船
ふね
なく、
又󠄂
また
イエスは
弟子
でし
たちと
共
とも
に
乘
の
りたまはず、
弟子
でし
たちのみ
出
い
でゆきしを
見
み
たり。
23
(
時
とき
にテベリヤより
數艘
すうさう
の
船
ふね
、
主
しゅ
の
謝
しゃ
して
人々
ひとびと
にパンを
食󠄃
くら
はせ
給
たま
ひし
處
ところ
の
近󠄃
ちか
くに
來
きた
る)
24
ここに
群衆
ぐんじゅう
はイエスも
居給
ゐたま
はず、
弟子
でし
たちも
居
を
らぬを
見
み
てその
船
ふね
に
乘
の
り、イエスを
尋󠄃
たづ
ねてカペナウムに
徃
ゆ
けり。
191㌻
25
遂󠄅
つひ
に
海
うみ
の
彼方
かなた
にてイエスに
遇󠄃
あ
ひて
言
い
ふ『ラビ、
何時
いつ
ここに
來
きた
り
給
たま
ひしか』
26
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
らが
我
われ
を
尋󠄃
たづ
ぬるは、
徴
しるし
を
見
み
し
故
ゆゑ
ならでパンを
食󠄃
くら
ひて
飽󠄄
あ
きたる
故
ゆゑ
なり。
27
朽
く
つる
糧
かて
のためならで
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
にまで
至
いた
る
糧
かて
のために
働
はたら
け。これは
人
ひと
の
子
こ
の
汝
なんぢ
らに
與
あた
へんと
爲
す
るものなり、
父󠄃
ちち
なる
神
かみ
は
印
いん
して
彼
かれ
を
證
あかし
し
給
たま
ひたるに
因
よ
る』
28
ここに
彼
かれ
ら
言
い
ふ『われら
神
かみ
の
業
わざ
を
行
おこな
はんには
何
なに
をなすべきか』
29
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
神
かみ
の
業
わざ
はその
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へる
者
もの
を
信
しん
ずる
是
これ
なり』
30
彼
かれ
ら
言
い
ふ『さらば
我
われ
らが
見
み
て
汝
なんぢ
を
信
しん
ぜんために、
何
なに
の
徴
しるし
をなすか、
何
なに
を
行
おこな
ふか。
31
我
われ
らの
先祖
せんぞ
は
荒野
あらの
にてマナを
食󠄃
くら
へり、
錄
しる
して「
天
てん
よりパンを
彼
かれ
らに
與
あた
へて
食󠄃
く
はしめたり」と
云
い
へるが
如
ごと
し』
32
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、モーセは
天
てん
よりのパンを
汝
なんぢ
らに
與
あた
へしにあらず、
然
さ
れど
我
わ
が
父󠄃
ちち
は
天
てん
よりの
眞
まこと
のパンを
與
あた
へたまふ。
33
神
かみ
のパンは
天
てん
より
降
くだ
りて
生命
いのち
を
世
よ
に
與
あた
ふるものなり』
34
彼
かれ
等
ら
いふ『
主
しゅ
よ、そのパンを
常
つね
に
與
あた
へよ』
35
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われは
生命
いのち
のパンなり、
我
われ
にきたる
者
もの
は
飢󠄄
う
ゑず、
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
はいつまでも
渇
かわ
くことなからん。
36
然
さ
れど
汝
なんぢ
らは
我
われ
を
見
み
てなほ
信
しん
ぜず、
我
われ
さきに
之
これ
を
吿
つ
げたり。
37
父󠄃
ちち
の
我
われ
に
賜
たま
ふものは
皆
みな
われに
來
きた
らん、
我
われ
にきたる
者
もの
は、
我
われ
これを
退󠄃
しりぞ
けず。
38
夫
それ
わが
天
てん
より
降
くだ
りしは
我
わ
が
意󠄃
こゝろ
をなさん
爲
ため
にあらず、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
の
御意󠄃
みこゝろ
をなさん
爲
ため
なり。
39
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
の
御意󠄃
みこゝろ
は、すべて
我
われ
に
賜
たま
ひし
者
もの
を、
我
われ
その
一
ひと
つをも
失
うしな
はずして
終󠄃
をはり
の
日
ひ
に
甦
よみが
へらする
是
これ
なり。
40
わが
父󠄃
ちち
の
御意󠄃
みこゝろ
は、すべて
子
こ
を
見
み
て
信
しん
ずる
者
もの
の
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を《[*]》
得
う
る
是
これ
なり。われ
終󠄃
をはり
の
日
ひ
にこれを
甦
よみが
へらすべし』[*或は「得る事と、終󠄃の日に我が之を甦へらする事と是なり」と譯す。]
192㌻
41
爰
こゝ
にユダヤ
人
びと
ら、イエスの『われは
天
てん
より
降
くだ
りしパンなり』と
言
い
ひ
給
たま
ひしにより、
42
呟
つぶや
きて
言
い
ふ『これはヨセフの
子
こ
イエスならずや、
我等
われら
はその
父󠄃
ちち
母
はは
を
知
し
る、
何
なん
ぞ
今
いま
「われは
天
てん
より
降
くだ
れり」と
言
い
ふか』
〘140㌻〙
43
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
呟
つぶや
き
合
あ
ふな、
44
我
われ
を
遣󠄃
つかは
しし
父󠄃
ちち
ひき
給
たま
はずば、
誰
たれ
も
我
われ
に
來
きた
ること
能
あた
はず、
我
われ
これを
終󠄃
をはり
の
日
ひ
に
甦
よみが
へらすべし。
45
預言者
よげんしゃ
たちの
書
ふみ
に「
彼
かれ
らみな
神
かみ
に
敎
をし
へられん」と
錄
しる
されたり。すべて
父󠄃
ちち
より
聽
き
きて
學
まな
びし
者
もの
は
我
われ
にきたる。
46
これは
父󠄃
ちち
を
見
み
し
者
もの
ありとにあらず、ただ
神
かみ
よりの
者
もの
のみ
父󠄃
ちち
を
見
み
たり。
47
誠
まこと
に
誠
まこと
に、なんぢらに
吿
つ
ぐ、
信
しん
ずる
者
もの
は
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
をもつ。
48
我
われ
は
生命
いのち
のパンなり。
49
汝
なんぢ
らの
先祖
せんぞ
は
荒野
あらの
にてマナを
食󠄃
くら
ひしが
死
し
にたり。
50
天
てん
より
降
くだ
るパンは、
食󠄃
くら
ふ
者
もの
をして
死
し
ぬる
事
こと
なからしむるなり。
51
我
われ
は
天
てん
より
降
くだ
りし
活
い
けるパンなり、
人
ひと
このパンを
食󠄃
くら
はば
永遠󠄄
とこしへ
に
活
い
くべし。
我
わ
が
與
あた
ふるパンは
我
わ
が
肉
にく
なり、
世
よ
の
生命
いのち
のために
之
これ
を
與
あた
へん』
52
爰
こゝ
にユダヤ
人
びと
、たがひに
爭
あらそ
ひて
言
い
ふ『この
人
ひと
はいかで
己
おの
が
肉
にく
を
我
われ
らに
與
あた
へて
食󠄃
く
はしむることを
得
え
ん』
53
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に、なんぢらに
吿
つ
ぐ、
人
ひと
の
子
こ
の
肉
にく
を
食󠄃
くら
はず、その
血
ち
を
飮
の
まずば、
汝
なんぢ
らに
生命
いのち
なし。
54
わが
肉
にく
をくらひ、
我
わ
が
血
ち
をのむ
者
もの
は
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
をもつ、われ
終󠄃
をはり
の
日
ひ
にこれを
甦
よみが
へらすべし。
55
夫
それ
わが
肉
にく
は
眞
まこと
の
食󠄃物
くひもの
、わが
血
ち
は
眞
まこと
の
飮物
のみもの
なり。
56
わが
肉
にく
をくらひ、
我
わ
が
血
ち
をのむ
者
もの
は、
我
われ
に
居
を
り、
我
われ
もまた
彼
かれ
に
居
を
る。
57
活
い
ける
父󠄃
ちち
の
我
われ
をつかはし、
我
われ
の
父󠄃
ちち
によりて
活
い
くるごとく、
我
われ
をくらふ
者
もの
も
我
われ
によりて
活
い
くべし。
58
天
てん
より
降
くだ
りしパンは、
先祖
せんぞ
たちが
食󠄃
くら
ひてなほ
死
し
にし
如
ごと
きものにあらず、
此
こ
のパンを
食󠄃
くら
ふものは
永遠󠄄
とこしへ
に
活
い
きん』
59
此
これ
等
ら
のことはイエス、カペナウムにて
敎
をし
ふるとき、
會堂
くわいだう
にて
言
い
ひ
給
たま
ひしなり。
193㌻
60
弟子
でし
たちの
中
うち
おほくの
者
もの
これを
聞
き
きて
言
い
ふ『こは
甚
はなは
だしき
言
ことば
なるかな、
誰
たれ
か
能
よ
く
聽
き
き
得
う
べき』
61
イエス
弟子
でし
たちの
之
これ
に
就
つ
きて
呟
つぶや
くを
自
みづか
ら
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『このことは
汝
なんぢ
らを
躓
つまづ
かするか。
62
さらば
人
ひと
の
子
こ
の
原
もと
居
を
りし
處
ところ
に
昇
のぼ
るを
見
み
ば
如何
いかに
。
63
活
いか
すものは
靈
れい
なり、
肉
にく
は
益
えき
する
所󠄃
ところ
なし、わが
汝
なんぢ
らに
語
かた
りし
言
こと
は、
靈
れい
なり
生命
いのち
なり。
64
されど
汝
なんぢ
らの
中
うち
に
信
しん
ぜぬ
者
もの
どもあり』イエス
初
はじめ
より
信
しん
ぜぬ
者
もの
どもは
誰
たれ
、おのれを
賣
う
る
者
もの
は
誰
たれ
なるかを
知
し
り
給
たま
へるなり。
65
斯
かく
て
言
い
ひたまふ『この
故
ゆゑ
に
我
われ
さきに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げて
父󠄃
ちち
より
賜
たま
はりたる
者
もの
ならずば
我
われ
に
來
きた
るを
得
え
ずと
言
い
ひしなり』
66
斯
こゝ
において
弟子
でし
等
たち
のうち
多
おほ
くの
者
もの
、かへり
去
さ
りて、
復
また
イエスと
共
とも
に
步
あゆ
まざりき。
67
イエス
十二
じふに
弟子
でし
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらも
去
さ
らんとするか』
〘141㌻〙
68
シモン・ペテロ
答
こた
ふ『
主
しゅ
よ、われら
誰
たれ
にゆかん、
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
の
言
ことば
は
汝
なんぢ
にあり。
69
又󠄂
また
われらは
信
しん
じ、かつ
知
し
る、なんぢは
神
かみ
の
聖󠄄者
しゃうじゃ
なり』
70
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われ
汝
なんぢ
ら
十二
じふに
人
にん
を
選󠄄
えら
びしにあらずや、
然
しか
るに
汝
なんぢ
らの
中
うち
の
一人
ひとり
は
惡魔󠄃
あくま
なり』
71
イスカリオテのシモンの
子
こ
ユダを
指
さ
して
言
い
ひ
給
たま
へるなり、
彼
かれ
は
十二
じふに
弟子
でし
の
一人
ひとり
なれど、イエスを
賣
う
らんとする
者
もの
なり。
第7章
1
この
後
のち
イエス、ガリラヤのうちを
巡󠄃
めぐ
りゐ
給
たま
ふ、ユダヤ
人
びと
の
殺
ころ
さんとするに
因
よ
りてユダヤのうちを
巡󠄃
めぐ
ることを
欲
ほっ
し
給
たま
はぬなり。
2
ユダヤ
人
びと
の
假廬
かりいほ
の
祭
まつり
ちかづきたれば、
3
兄弟
きゃうだい
たちイエスに
言
い
ふ『なんぢの
行
おこな
ふ
業
わざ
を
弟子
でし
たちにも
見
み
せんために、
此處
ここ
を
去
さ
りてユダヤに
徃
ゆ
け。
4
誰
たれ
にても
自
みづか
ら
顯
あらは
れんことを
求
もと
めて
隱
ひそか
に
業
わざ
をなす
者
もの
なし。
汝
なんぢ
これらの
事
こと
を
爲
な
すからには
己
おのれ
を
世
よ
にあらはせ』
194㌻
5
是
これ
その
兄弟
きゃうだい
たちもイエスを
信
しん
ぜぬ
故
ゆゑ
なり。
6
爰
こゝ
にイエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
時
とき
はいまだ
到
いた
らず、
汝
なんぢ
らの
時
とき
は
常
つね
に
備
そなは
れり。
7
世
よ
は
汝
なんぢ
らを
憎
にく
むこと
能
あた
はねど
我
われ
を
憎
にく
む、
我
われ
は
世
よ
の
所󠄃作
しわざ
の
惡
あ
しきを
證
あかし
すればなり。
8
なんぢら
祭
まつり
に
上
のぼ
れ、わが
時
とき
いまだ
滿
み
たねば、
我
われ
は
今
いま
この
祭
まつり
にのぼらず』
9
かく
言
い
ひて
尙
なほ
ガリラヤに
留
とゞま
り
給
たま
ふ。
10
而
しか
して
兄弟
きゃうだい
たちの、
祭
まつり
にのぼりたる
後
のち
、あらはならで
潜
しの
びやかに
上
のぼ
り
給
たま
ふ。
11
祭
まつり
にあたりユダヤ
人
びと
らイエスを
尋󠄃
たづ
ねて『かれは
何處
いづこ
に
居
を
るか』と
言
い
ふ。
12
また
群衆
ぐんじゅう
のうちに
囁
さゝや
く
者
もの
おほくありて、
或
あるひ
は『イエスは
善
よ
き
人
ひと
なり』といひ、
或
あるひ
は『いな
群衆
ぐんじゅう
を
惑
まど
はすなり』と
言
い
ふ。
13
然
さ
れどユダヤ
人
びと
を
懼
おそ
るるに
因
よ
りて
誰
たれ
もイエスのことを
公然
おほやけ
に
言
い
はず。
14
祭
まつり
も、はや
半󠄃
なかば
となりし
頃
ころ
イエス
宮
みや
にのぼりて
敎
をし
へ
給
たま
へば、
15
ユダヤ
人
びと
あやしみて
言
い
ふ『この
人
ひと
は
學
まな
びし
事
こと
なきに、
如何
いか
にして
書
ふみ
を
知
し
るか』
16
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
敎
をしへ
はわが
敎
をしへ
にあらず、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
の
敎
をしへ
なり。
17
人
ひと
もし
御意󠄃
みこゝろ
を
行
おこな
はんと
欲
ほっ
せば、
此
こ
の
敎
をしへ
の
神
かみ
よりか、
我
わ
が
己
おのれ
より
語
かた
るかを
知
し
らん。
18
己
おのれ
より
語
かた
るものは
己
おのれ
の
榮光
えいくわう
をもとむ、
己
おのれ
を
遣󠄃
つかは
しし
者
もの
の
榮光
えいくわう
を
求
もと
むる
者
もの
は
眞
まこと
なり、その
中
うち
に
不義
ふぎ
なし。
19
モーセは
汝
なんぢ
らに
律法
おきて
を
與
あた
へしにあらずや、
然
さ
れど
汝
なんぢ
等
ら
のうちに
律法
おきて
を
守
まも
る
者
もの
なし。
汝
なんぢ
ら
何
なに
ゆゑ
我
われ
を
殺
ころ
さんとするか』
20
群衆
ぐんじゅう
こたふ『なんぢは
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたり、
誰
た
が
汝
なんぢ
を
殺
ころ
さんとするぞ』
〘142㌻〙
21
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
一
ひと
つの
業
わざ
をなしたれば
汝
なんぢ
等
ら
みな
怪
あや
しめり。
22
モーセは
汝
なんぢ
らに
割󠄅禮
かつれい
を
命
めい
じたり(これはモーセより
起󠄃
おこ
りしとにあらず、
先祖
せんぞ
より
起󠄃
おこ
りしなり)この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
ら
安息
あんそく
日
にち
にも
人
ひと
に
割󠄅禮
かつれい
を
施
ほどこ
す。
195㌻
23
モーセの
律法
おきて
の
廢
すた
らぬために
安息
あんそく
日
にち
に
人
ひと
の
割󠄅禮
かつれい
を
受
う
くる
事
こと
あらば、
何
なん
ぞ
安息
あんそく
日
にち
に
人
ひと
の
全󠄃身
ぜんしん
を
健
すこや
かにせしとて
我
われ
を
怒
いか
るか。
24
外貌
うはべ
によりて
裁
さば
くな、
正
たゞ
しき
審判󠄄
さばき
にて
審
さば
け』
25
爰
こゝ
にエルサレムの
或
あ
る
人々
ひとびと
いふ『これは
人々
ひとびと
の
殺
ころ
さんとする
者
もの
ならずや。
26
視
み
よ、
公然
おほやけ
に
語
かた
るに
之
これ
に
對
たい
して
何
なに
をも
言
い
ふ
者
もの
なし、
司
つかさ
たちは
此
こ
の
人
ひと
のキリストたるを
眞
まこと
に
認󠄃
みと
めしならんか。
27
然
さ
れど
我
われ
らは
此
こ
の
人
ひと
の
何處
いづこ
よりかを
知
し
る、キリストの
來
きた
る
時
とき
には、その
何處
いづこ
よりかを
知
し
る
者
もの
なし』
28
爰
こゝ
にイエス
宮
みや
にて
敎
をし
へつつ
呼
よば
はりて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
我
われ
を
知
し
り、
亦
また
わが
何處
いづこ
よりかを
知
し
る。されど
我
われ
は
己
おのれ
より
來
きた
るにあらず、
眞
まこと
の
者
もの
ありて
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へり。
汝
なんぢ
らは
彼
かれ
を
知
し
らず、
29
我
われ
は
彼
かれ
を
知
し
る。
我
われ
は
彼
かれ
より
出
い
で、
彼
かれ
は
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしに
因
よ
りてなり』
30
爰
こゝ
に
人々
ひとびと
イエスを
捕
とら
へんと
謀
はか
りたれど、
彼
かれ
の
時
とき
いまだ
到
いた
らぬ
故
ゆゑ
に
手出
てだし
する
者
もの
なかりき。
31
斯
かく
て
群衆
ぐんじゅう
のうち
多
おほ
くの
人々
ひとびと
イエスを
信
しん
じて『キリスト
來
きた
るとも、
此
こ
の
人
ひと
の
行
おこな
ひしより
多
おほ
く
徴
しるし
を
行
おこな
はんや』と
言
い
ふ。
32
イエスにつきて
群衆
ぐんじゅう
のかく
囁
さゝや
くことパリサイ
人
びと
の
耳
みみ
に
入
い
りたれば、
祭司長
さいしちゃう
・パリサイ
人
びと
ら
彼
かれ
を
捕
とら
へんとて
下役
したやく
どもを
遣󠄃
つかは
ししに、
33
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
我
われ
なほ
暫
しばら
く
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
居
を
り、
而
しか
してのち
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
の
御許
みもと
に
徃
ゆ
く。
34
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
尋󠄃
たづ
ねん、されど
逢
あ
はざるべし、
汝
なんぢ
等
ら
わが
居
を
る
處
ところ
に
徃
ゆ
くこと
能
あた
はず』
35
爰
こゝ
にユダヤ
人
びと
ら
互
たがひ
に
云
い
ふ『この
人
ひと
われらの
逢
あ
ひ
得
え
ぬいづこに
徃
ゆ
かんとするか、ギリシヤ
人
びと
のうちに
散
ち
りをる
者
もの
に
徃
ゆ
きてギリシヤ
人
びと
を
敎
をし
へんとするか。
36
その
言
ことば
に「なんぢら
我
われ
を
尋󠄃
たづ
ねん、
然
さ
れど
逢
あ
はざるべし、
汝
なんぢ
ら
我
わ
がをる
處
ところ
に
徃
ゆ
くこと
能
あた
はず」と
云
い
へるは
何
なに
ぞや』
196㌻
37
祭
まつり
の
終󠄃
をはり
の
大
おほい
なる
日
ひ
にイエス
立
た
ちて
呼
よば
はりて
言
い
ひたまふ『
人
ひと
もし
渇
かわ
かば
我
われ
に
來
きた
りて
飮
の
め。
38
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
は、
聖󠄄書
せいしょ
に
云
い
へるごとく、その
腹
はら
より
活
い
ける
水
みづ
、
川
かは
となりて
流
なが
れ
出
い
づべし』
39
これは
彼
かれ
を
信
しん
ずる
者
もの
の
受
う
けんとする
御靈
みたま
を
指
さ
して
言
い
ひ
給
たま
ひしなり。イエス
未
いま
だ
榮光
えいくわう
を
受
う
け
給
たま
はざれば、
御靈
みたま
いまだ
降
くだ
らざりしなり。
40
此
これ
等
ら
の
言
ことば
をききて
群衆
ぐんじゅう
のうちの
或
ある
人
ひと
は『これ
眞
まこと
にかの
預言者
よげんしゃ
なり』といひ、
41
或
ある
人
ひと
は『これキリストなり』と
言
い
ひ、
又󠄂
また
ある
人
ひと
は『キリスト
爭
いか
でガリラヤより
出
い
でんや、
〘143㌻〙
42
聖󠄄書
せいしょ
にキリストはダビデの
裔
すゑ
またダビデの
居
を
りし
村
むら
ベツレヘムより
出
い
づと
云
い
へるならずや』と
言
い
ふ。
43
斯
か
くイエスの
事
こと
によりて、
群衆
ぐんじゅう
のうちに
紛爭
あらそひ
おこりたり。
44
その
中
なか
には、イエスを
捕
とら
へんと
欲
ほっ
する
者
もの
もありしが、
手出
てだし
する
者
もの
なかりき。
45
而
しか
して
下役
したやく
ども、
祭司長
さいしちゃう
・パリサイ
人
びと
らの
許
もと
に
歸
かへ
りたれば、
彼
かれ
ら
問
と
ふ『なに
故
ゆゑ
かれを
曵
ひ
き
來
きた
らぬか』
46
下役
したやく
ども
答
こた
ふ『この
人
ひと
の
語
かた
るごとく
語
かた
りし
人
ひと
は
未
いま
だなし』
47
パリサイ
人
びと
等
ら
これに
答
こた
ふ『なんぢらも
惑
まどは
されしか、
48
司
つかさ
たち
又󠄂
また
はパリサイ
人
びと
のうちに
一人
ひとり
だに
彼
かれ
を
信
しん
ぜし
者
もの
ありや、
49
律法
おきて
を
知
し
らぬこの
群衆
ぐんじゅう
は
詛
のろ
はれたる
者
もの
なり』
50
彼
かれ
等
ら
のうちの
一人
ひとり
にて
最
さき
にイエスの
許
もと
に
來
きた
りしニコデモ
言
い
ふ、
51
『われらの
律法
おきて
は
先
まづ
その
人
ひと
に
聽
き
き、その
爲
な
すところを
知
し
るにあらずば、
審
さば
く
事
こと
をせんや』
52
かれら
答
こた
へて
言
い
ふ『なんぢもガリラヤより
出
い
でしか、
査
しら
べ
見
み
よ、
預言者
よげんしゃ
はガリラヤより
起󠄃
おこ
る
事
こと
なし』
53
〔《[*]》
斯
か
くておのおの
己
おの
が
家
いへ
に
歸
かへ
れり。[*異本七章五三より八章一一までを缺く。]
197㌻
第8章
1
イエス、オリブ
山
やま
にゆき
給
たま
ふ。
2
夜明
よあけ
ごろ、また
宮
みや
に
入
い
りしに、
民
たみ
みな
御許
みもと
に
來
きた
りたれば、
坐
ざ
して
敎
をし
へ
給
たま
ふ。
3
爰
こゝ
に
學者
がくしゃ
・パリサイ
人
びと
ら、
姦淫
かんいん
のとき
捕
とら
へられたる
女
をんな
を
連
つ
れきたり、
眞中
まなか
に
立
た
ててイエスに
言
い
ふ、
4
『
師
し
よ、この
女
をんな
は
姦淫
かんいん
のをり、そのまま
捕
とら
へられたるなり。
5
モーセは
律法
おきて
に、
斯
かゝ
る
者
もの
を
石
いし
にて
擊
う
つべき
事
こと
を
我
われ
らに
命
めい
じたるが、
汝
なんぢ
は
如何
いか
に
言
い
ふか』
6
斯
か
く
云
い
へるはイエスを
試
こゝろ
みて
訴
うった
ふる
種
たね
を
得
え
んとてなり。イエス
身
み
を
屈
かゞ
め、
指
ゆび
にて
地
ち
に
物
もの
書
か
き
給
たま
ふ。
7
かれら
問
と
ひて
止
や
まざれば、イエス
身
み
を
起󠄃
おこ
して『なんぢらの
中
うち
、
罪
つみ
なき
者
もの
まづ
石
いし
を
擲
なげう
て』と
言
い
ひ、
8
また
身
み
を
屈
かが
めて
地
ち
に
物
もの
書
か
きたまふ。
9
彼
かれ
等
ら
これを
聞
き
きて
良心
りゃうしん
に
責
せ
められ、
老人
としより
をはじめ
若
わか
き
者
もの
まで
一人
ひとり
一人
ひとり
いでゆき、
唯
たゞ
イエスと
中
なか
に
立
た
てる
女
をんな
とのみ
遺󠄃
のこ
れり。
10
イエス
身
み
を
起󠄃
おこ
して、
女
をんな
のほかに
誰
たれ
も
居
を
らぬを
見
み
て
言
い
ひ
給
たま
ふ『をんなよ、
汝
なんぢ
を
訴
うった
へたる
者
もの
どもは
何處
いづこ
にをるぞ、
汝
なんぢ
を
罪
つみ
する
者
もの
なきか』
11
女
をんな
いふ『
主
しゅ
よ、
誰
たれ
もなし』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われも
汝
なんぢ
を
罪
つみ
せじ、
徃
ゆ
け、この
後
のち
ふたたび
罪
つみ
を
犯
をか
すな』〕
12
斯
かく
てイエスまた
人々
ひとびと
に
語
かた
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われは
世
よ
の
光
ひかり
なり、
我
われ
に
從
したが
ふ
者
もの
は
暗󠄃
くら
き
中
うち
を
步
あゆ
まず、
生命
いのち
の
光
ひかり
を
得
う
べし』
13
パリサイ
人
びと
ら
言
い
ふ『なんぢは
己
おのれ
につきて
證
あかし
す、なんぢの
證
あかし
は
眞
まこと
ならず』
14
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
自
みづか
ら
己
おのれ
につきて
證
あかし
すとも
我
わ
が
證
あかし
は
眞
まこと
なり、
我
われ
は
何處
いづこ
より
來
きた
り
何處
いづこ
に
徃
ゆ
くを
知
し
る
故
ゆゑ
なり。
汝
なんぢ
らは
我
わ
が
何處
いづこ
より
來
きた
り、
何處
いづこ
に
徃
ゆ
くを
知
し
らず、
〘144㌻〙
15
なんぢらは
肉
にく
によりて
審
さば
く、
我
われ
は
誰
たれ
をも
審
さば
かず。
16
されど
我
われ
もし
審
さば
かば、
我
わ
が
審判󠄄
さばき
は
眞
まこと
なり、
我
われ
は
一人
ひとり
ならず、
我
われ
と
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
と
偕
とも
なるに
因
よ
る。
17
また
汝
なんぢ
らの
律法
おきて
に、
二人
ふたり
の
證
あかし
は
眞
まこと
なりと
錄
しる
されたり。
198㌻
18
我
われ
みづから
己
おのれ
につきて
證
あかし
をなし、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
父󠄃
ちち
も
我
われ
につきて
證
あかし
をなし
給
たま
ふ』
19
ここに
彼
かれ
ら
言
い
ふ『なんぢの
父󠄃
ちち
は
何處
いづこ
にあるか』イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『なんぢらは
我
われ
をも
我
わ
が
父󠄃
ちち
をも
知
し
らず、
我
われ
を
知
し
りしならば、
我
わ
が
父󠄃
ちち
をも
知
し
りしならん』
20
イエス
宮
みや
の
內
うち
にて
敎
をし
へし
時
とき
これらの
事
こと
を
賽錢函
さいせんばこ
の
傍
かたは
らにて
語
かた
り
給
たま
ひしが、
彼
かれ
の
時
とき
いまだ
到
いた
らぬ
故
ゆゑ
に、
誰
たれ
も
捕
とら
ふる
者
もの
なかりき。
21
斯
かく
てまた
人々
ひとびと
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
徃
ゆ
く、なんぢら
我
われ
を
尋󠄃
たづ
ねん。されど
己
おの
が
罪
つみ
のうちに
死
し
なん、わが
徃
ゆ
くところに
汝
なんぢ
ら
來
きた
ること
能
あた
はず』
22
ユダヤ
人
びと
ら
言
い
ふ『「わが
徃
ゆ
く
處
ところ
に
汝
なんぢ
ら
來
きた
ること
能
あた
はず」と
云
い
へるは、
自殺
じさつ
せんとてか』
23
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらは
下
した
より
出
い
で、
我
われ
は
上
うへ
より
出
い
づ、
汝
なんぢ
らは
此
こ
の
世
よ
より
出
い
で、
我
われ
は
此
こ
の
世
よ
より
出
い
でず。
24
之
これ
によりて
我
われ
なんぢらは
己
おの
が
罪
つみ
のうちに
死
し
なんと
云
い
へるなり。
汝
なんぢ
等
ら
もし
我
われ
の
夫
それ
なるを
信
しん
ぜずば、
罪
つみ
のうちに
死
し
ぬべし』
25
彼
かれ
ら
言
い
ふ『なんぢは
誰
たれ
なるか』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『《[*]》われは
正
まさ
しく
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げ
來
きた
りし
所󠄃
ところ
の
者
もの
なり。[*或は「われ初より汝らにつげしに、何ぞや」と譯す。]
26
われ
汝
なんぢ
らに
就
つ
きて
語
かた
るべきこと
審
さば
くべきこと
多
おほ
し、
而
しか
して
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
は
眞
まこと
なり、
我
われ
は
彼
かれ
に
聽
き
きしその
事
こと
を
世
よ
に
吿
つ
ぐるなり』
27
これは
父󠄃
ちち
をさして
言
い
ひ
給
たま
へるを、
彼
かれ
らは
悟
さと
らざりき。
28
爰
こゝ
にイエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
人
ひと
の
子
こ
を
擧
あ
げしのち、
我
われ
の
夫
それ
なるを
知
し
り、
又󠄂
また
わが
己
おのれ
によりて
何事
なにごと
をも
爲
な
さず、ただ
父󠄃
ちち
の
我
われ
に
敎
をし
へ
給
たま
ひしごとく、
此
これ
等
ら
のことを
語
かた
りたるを
知
し
らん。
29
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
は、
我
われ
とともに
在
いま
す。
我
われ
つねに
御意󠄃
みこゝろ
に
適󠄄
かな
ふことを
行
おこな
ふによりて、
我
われ
を
獨
ひとり
おき
給
たま
はず』
30
此
これ
等
ら
のことを
語
かた
り
給
たま
へるとき、
多
おほ
くの
人々
ひとびと
イエスを
信
しん
じたり。
31
爰
こゝ
にイエス
己
おのれ
を
信
しん
じたるユダヤ
人
びと
に
言
い
ひたまふ『
汝
なんぢ
等
ら
もし
常
つね
に
我
わ
が
言
ことば
に
居
を
らば、
眞
まこと
にわが
弟子
でし
なり。
32
また
眞理
しんり
を
知
し
らん、
而
しか
して
眞理
しんり
は
汝
なんぢ
らに
自由
じいう
を
得
え
さすべし』
199㌻
33
かれら
答
こた
ふ『われはアブラハムの
裔
すゑ
にして
未
いま
だ
人
ひと
の
奴隷
どれい
となりし
事
こと
なし。
如何
いか
なれば「なんぢら
自由
じいう
を
得
う
べし」と
言
い
ふか』
34
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、すべて
罪
つみ
を
犯
をか
す
者
もの
は
罪
つみ
の
奴隷
どれい
なり。
〘145㌻〙
35
奴隷
どれい
はとこしへに
家
いへ
に
居
を
らず、
子
こ
は
永遠󠄄
とこしへ
に
居
を
るなり。
36
この
故
ゆゑ
に
子
こ
もし
汝
なんぢ
らに
自由
じいう
を
得
え
させば、
汝
なんぢ
ら
實
じつ
に
自由
じいう
とならん。
37
我
われ
は
汝
なんぢ
らがアブラハムの
裔
すゑ
なるを
知
し
る、されど
我
わ
が
言
ことば
なんぢらの
衷
うち
に《[*]》
留
とゞま
らぬ
故
ゆゑ
に、
我
われ
を
殺
ころ
さんと
謀
はか
る。[*或は「そだたぬ」と譯す。]
38
我
われ
は《[*]》わが
父󠄃
ちち
の
許
もと
にて
見
み
しことを
語
かた
り、
汝
なんぢ
らは
又󠄂
また
なんぢらの
父󠄃
ちち
より
聞
き
きしことを
行
おこな
ふ』[*或は「我、父󠄃の許にて見しことを語れば、汝ら父󠄃より聞きし事を行へ」と譯す。]
39
かれら
答
こた
へて
言
い
ふ『われらの
父󠄃
ちち
はアブラハムなり』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『もしアブラハムの
子
こ
ならば、アブラハムの
業
わざ
を《[*]》なさん。[*異本「なせ」とあり。]
40
然
しか
るに
汝
なんぢ
らは
今
いま
、
神
かみ
より
聽
き
きたる
眞理
しんり
を
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐる
者
もの
なる
我
われ
を
殺
ころ
さんと
謀
はか
る。アブラハムは
斯
かゝ
ることを
爲
な
さざりき。
41
汝
なんぢ
らは
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
業
わざ
を
爲
な
すなり』かれら
言
い
ふ『われら
淫行
いんかう
によりて
生
うま
れず、
我
われ
らの
父󠄃
ちち
はただ
一人
ひとり
、
即
すなは
ち
神
かみ
なり』
42
イエス
言
い
ひたまふ『
神
かみ
もし
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
ならば、
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
愛
あい
せん、われ
神
かみ
より
出
い
でて
來
きた
ればなり。
我
われ
は
己
おのれ
より
來
きた
るにあらず、
神
かみ
われを
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へり。
43
何
なに
故
ゆゑ
わが
語
かた
ることを
悟
さと
らぬか、
是
これ
わが
言
ことば
をきくこと
能
あた
はぬに
因
よ
る。
44
汝
なんぢ
らは
己
おの
が
父󠄃
ちち
、
惡魔󠄃
あくま
より
出
い
でて
己
おの
が
父󠄃
ちち
の
慾
よく
を
行
おこな
はんことを
望󠄇
のぞ
む。
彼
かれ
は
最初
はじめ
より
人殺
ひとごろし
なり、また
眞
まこと
その
中
なか
になき
故
ゆゑ
に
眞
まこと
に
立
た
たず、
彼
かれ
は
虛僞
いつはり
をかたる
每
ごと
に
己
おのれ
より
語
かた
る、それは
虛僞
いつはり
者
もの
にして《[*]》
虛僞
いつはり
の
父󠄃
ちち
なればなり。[*或は「虛僞者の父󠄃」と譯す。]
45
然
しか
るに
我
われ
は
眞
まこと
を
吿
つ
ぐるによりて、
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
信
しん
ぜず、
46
汝
なんぢ
等
ら
のうち
誰
たれ
か
我
われ
を
罪
つみ
ありとして
責
せ
め
得
う
る。われ
眞
まこと
を
吿
つ
ぐるに、
我
われ
を
信
しん
ぜぬは
何
なに
故
ゆゑ
ぞ。
47
神
かみ
より
出
い
づる
者
もの
は
神
かみ
の
言
ことば
をきく、
汝
なんぢ
らの
聽
き
かぬは
神
かみ
より
出
い
でぬに
因
よ
る』
200㌻
48
ユダヤ
人
びと
こたへて
言
い
ふ『なんぢはサマリヤ
人
びと
にて
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
者
もの
なりと、
我
われ
らが
云
い
へるは
宜
うべ
ならずや』
49
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われは
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれず、
反
かへ
つて
我
わ
が
父󠄃
ちち
を
敬
うやま
ふ、なんぢらは
我
われ
を
輕
かろ
んず。
50
我
われ
はおのれの
榮光
えいくわう
を
求
もと
めず、
之
これ
を
求
もと
め、かつ
審判󠄄
さばき
し
給
たま
ふ
者
もの
あり。
51
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
人
ひと
もし
我
わ
が
言
ことば
を
守
まも
らば、
永遠󠄄
とこしへ
に
死
し
を
見
み
ざるべし』
52
ユダヤ
人
びと
いふ『
今
いま
ぞ、なんぢが
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたるを
知
し
る。アブラハムも
預言者
よげんしゃ
たちも
死
し
にたり、
然
しか
るに
汝
なんぢ
は「
人
ひと
もし
我
わ
が
言
ことば
を
守
まも
らば、
永遠󠄄
とこしへ
に
死
し
を
味
あぢは
はざるべし」と
云
い
ふ。
53
汝
なんぢ
われらの
父󠄃
ちち
アブラハムよりも
大
おほい
なるか、
彼
かれ
は
死
し
に、
預言者
よげんしゃ
たちも
死
し
にたり、
汝
なんぢ
はおのれを
誰
たれ
とするか』
54
イエス
答
こた
へたまふ『
我
われ
もし
己
おのれ
に
榮光
えいくわう
を
歸
き
せば、
我
わ
が
榮光
えいくわう
は
空󠄃
むな
し。
我
われ
に
榮光
えいくわう
を
歸
き
する
者
もの
は
我
わ
が
父󠄃
ちち
なり、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
らが
己
おのれ
の
神
かみ
と
稱
とな
ふる
者
もの
なり。
55
然
しか
るに
汝
なんぢ
らは
彼
かれ
を
知
し
らず、
我
われ
は
彼
かれ
を
知
し
る。もし
彼
かれ
を
知
し
らずと
言
い
はば、
汝
なんぢ
らの
如
ごと
く
僞者
いつはりもの
たるべし。
然
さ
れど
我
われ
は
彼
かれ
を
知
し
り、
且
かつ
その
御言
みことば
を
守
まも
る。
〘146㌻〙
56
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
アブラハムは、
我
わ
が
日
ひ
を
見
み
んとて
樂
たの
しみ
且
かつ
これを
見
み
て
喜
よろこ
べり』
57
ユダヤ
人
びと
いふ『なんぢ
未
いま
だ
五十歳
ごじっさい
にもならぬにアブラハムを
見
み
しか』
58
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、アブラハムの
生
うま
れいでぬ
前󠄃
さき
より
我
われ
は
在
あ
るなり』
59
爰
こゝ
に
彼
かれ
ら
石
いし
をとりてイエスに
擲
なげう
たんと
爲
し
たるに、イエス
隱
かく
れて
宮
みや
を
出
い
で
給
たま
へり。
第9章
1
イエス
途󠄃
みち
徃
ゆ
くとき、
生
うま
れながらの
盲人
めしひ
を
見
み
給
たま
ひたれば、
2
弟子
でし
たち
問
と
ひて
言
い
ふ『ラビ、この
人
ひと
の
盲目
めしひ
にて
生
うま
れしは、
誰
たれ
の
罪
つみ
によるぞ、
己
おのれ
のか、
親
おや
のか』
3
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『この
人
ひと
の
罪
つみ
にも
親
おや
の
罪
つみ
にもあらず、ただ
彼
かれ
の
上
うへ
に
神
かみ
の
業
わざ
の
顯
あらは
れん
爲
ため
なり。
4
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
の
業
わざ
を
我
われ
ら
晝
ひる
の
間
うち
になさざる
可
べ
からず。
夜
よ
きたらん、その
時
とき
は
誰
たれ
も
働
はたら
くこと
能
あた
はず。
201㌻
5
われ
世
よ
にをる
間
あひだ
は
世
よ
の
光
ひかり
なり』
6
かく
言
い
ひて
地
ち
に
唾
つばき
し、
唾
つばき
にて
泥
どろ
をつくり、
之
これ
を
盲人
めしひ
の
目
め
にぬりて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
7
『ゆきてシロアム(
釋
と
けば
遣󠄃
つかは
されたる
者
もの
)の
池
いけ
にて
洗
あら
へ』
乃
すなは
ちゆきて
洗
あら
ひたれば、
見
み
ゆることを
得
え
て
歸
かへ
れり。
8
ここに
隣
となり
人
びと
および
前󠄃
さき
に
彼
かれ
の
乞食󠄃
こつじき
なるを
見
み
し
者
もの
ども
言
い
ふ『この
人
ひと
は
坐
ざ
して
物
もの
乞
こ
ひゐたるにあらずや』
9
或
ある
人
ひと
は『
夫
それ
なり』といひ、
或
ある
人
ひと
は『
否
いな
、ただ
似
に
たるなり』といふ。かの
者
もの
『われは
夫
それ
なり』と
言
い
ひたれば、
10
人々
ひとびと
いふ『さらば
汝
なんぢ
の
目
め
は
如何
いか
にして
開
ひら
きたるか』
11
答
こた
ふ『イエスといふ
人
ひと
、
泥
どろ
をつくり
我
わ
が
目
め
に
塗
ぬ
りて
言
い
ふ「シロアムに
徃
ゆ
きて
洗
あら
へ」と、
乃
すなは
ち
徃
ゆ
きて
洗
あら
ひたれば、
物
もの
見
み
ることを
得
え
たり』
12
彼
かれ
ら『その
人
ひと
は
何處
いづこ
に
居
を
るか』と
言
い
へば『
知
し
らず』と
答
こた
ふ。
13
人々
ひとびと
さきに
盲目
めしひ
なりし
者
もの
をパリサイ
人
びと
らの
許
もと
に
連
つ
れきたる。
14
イエスの
泥
どろ
をつくりて
其
そ
の
人
ひと
の
目
め
をあけし
日
ひ
は
安息
あんそく
日
にち
なりき。
15
パリサイ
人
びと
らも
亦
また
いかにして
物
もの
見
み
ることを
得
え
しかと
問
と
ひたれば、
彼
かれ
いふ『かの
人
ひと
わが
目
め
に
泥
どろ
をぬり、
我
われ
これを
洗
あら
ひて
見
み
ゆることを
得
え
たり』
16
パリサイ
人
びと
の
中
うち
なる
或
ある
人
ひと
は『かの
人
ひと
、
安息
あんそく
日
にち
を
守
まも
らぬ
故
ゆゑ
に、
神
かみ
より
出
い
でし
者
もの
にあらず』と
言
い
ひ、
或
ある
人
ひと
は『
罪
つみ
ある
人
ひと
いかで
斯
かゝ
る
徴
しるし
をなし
得
え
んや』と
言
い
ひて
互
たがひ
に
相
あひ
爭
あらそ
ひたり。
17
爰
こゝ
にまた
盲目
めしひ
なりし
人
ひと
に
言
い
ふ『なんぢの
目
め
をあけしに
因
よ
り、
汝
なんぢ
は
彼
かれ
に
就
つ
きて
如何
いか
にいふか』
彼
かれ
いふ『
預言者
よげんしゃ
なり』
〘147㌻〙
18
ユダヤ
人
びと
ら
彼
かれ
が
盲目
めしひ
なりしに
見
み
ゆるやうになりしことを
未
いま
だ
信
しん
ぜずして、
目
め
の
開
ひら
きたる
人
ひと
の
兩親
ふたおや
を
呼
よ
び、
19
問
と
ひて
言
い
ふ『これは
盲目
めしひ
にて
生
うま
れしと
言
い
ふ
汝
なんぢ
らの
子
こ
なりや、
然
さ
らば
今
いま
いかにして
見
み
ゆるか』
20
兩親
ふたおや
こたへて
言
い
ふ『かれの
我
わ
が
子
こ
なることと
盲目
めしひ
にて
生
うま
れたる
事
こと
とを
知
し
る。
21
されど
今
いま
いかにして
見
み
ゆるかを
知
し
らず、
又󠄂
また
その
目
め
をあけしは
誰
たれ
なるか、
我
われ
らは
知
し
らず、
彼
かれ
に
問
と
へ、
年
とし
長
た
けたれば
自
みづか
ら
己
おの
がことを
語
かた
らん』
202㌻
22
兩親
ふたおや
のかく
言
い
ひしは、ユダヤ
人
びと
を
懼
おそ
れたるなり。ユダヤ
人
びと
ら
相
あひ
議
はか
りて『
若
も
しイエスをキリストと
言
い
ひ
顯
あらは
す
者
もの
あらば、
除名
ぢょめい
すべし』と
定
さだ
めたるに
因
よ
る。
23
兩親
ふたおや
の『かれ
年
とし
長
た
けたれば
彼
かれ
に
問
と
へ』と
云
い
へるは、
此
こ
の
故
ゆゑ
なり。
24
かれら
盲目
めしひ
なりし
人
ひと
を
再
ふたゝ
び
呼
よ
びて
言
い
ふ『
神
かみ
に
榮光
えいくわう
を
歸
き
せよ、
我等
われら
はかの
人
ひと
の
罪人
つみびと
たるを
知
し
る』
25
答
こた
ふ『かれ
罪人
つみびと
なるか、
我
われ
は
知
し
らず、ただ
一
ひと
つの
事
こと
をしる、
即
すなは
ち
我
われ
さきに
盲目
めしひ
たりしが、
今
いま
見
み
ゆることを
得
え
たる
是
これ
なり』
26
彼
かれ
ら
言
い
ふ『かれは
汝
なんぢ
に
何
なに
をなししか、
如何
いか
にして
目
め
をあけしか』
27
答
こた
ふ『われ
旣
すで
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げたれど
聽
き
かざりき。
何
なに
ぞまた
聽
き
かんとするか、
汝
なんぢ
らもその
弟子
でし
とならんことを
望󠄇
のぞ
むか』
28
かれら
罵
のゝし
りて
言
い
ふ『なんぢは
其
そ
の
弟子
でし
なり、
我等
われら
モーセの
弟子
でし
なり。
29
モーセに
神
かみ
の
語
かた
り
給
たま
ひしことを
知
し
れど、
此
こ
の
人
ひと
の
何處
いづこ
よりかを
知
し
らず』
30
答
こた
へて
言
い
ふ『その
何處
いづこ
よりかを
知
し
らずとは
怪
あや
しき
事
こと
なり、
彼
かれ
わが
目
め
をあけしに。
31
神
かみ
は
罪人
つみびと
に
聽
き
き
給
たま
はねど、
敬虔
けいけん
にして
御意󠄃
みこゝろ
をおこなふ
人
ひと
に
聽
き
き
給
たま
ふことを
我
われ
らは
知
し
る。
32
世
よ
の
太初
はじめ
より、
盲目
めしひ
にて
生
うま
れし
者
もの
の
目
め
をあけし
人
ひと
あるを
聞
き
きし
事
こと
なし。
33
かの
人
ひと
もし
神
かみ
より
出
い
でずば、
何事
なにごと
をも
爲
な
し
得
え
ざらん』
34
かれら
答
こた
へて『なんぢ
全󠄃
まった
く
罪
つみ
のうちに
生
うま
れながら、
我
われ
らを
敎
をし
ふるか』と
言
い
ひて、
遂󠄅
つひ
に
彼
かれ
を
追󠄃
お
ひ
出
いだ
せり。
35
イエスその
追󠄃
お
ひ
出
いだ
されしことを
聞
き
き、
彼
かれ
に
逢
あ
ひて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢ
人
ひと
の
子
こ
を
信
しん
ずるか』
36
答
こた
へて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、それは
誰
たれ
なる
乎
か
、われ
信
しん
ぜまほし』
37
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢ
彼
かれ
を
見
み
たり、
汝
なんぢ
と
語
かた
る
者
もの
は
夫
それ
なり』
38
爰
こゝ
に、
彼
かれ
『
主
しゅ
よ、
我
われ
は
信
しん
ず』といひて
拜
はい
せり。
39
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
審判󠄄
さばき
の
爲
ため
にこの
世
よ
に
來
きた
れり。
見
み
えぬ
人
ひと
は
見
み
え、
見
み
ゆる
人
ひと
は
盲目
めしひ
とならん
爲
ため
なり』
203㌻
40
パリサイ
人
びと
の
中
うち
イエスと
共
とも
に
居
を
りし
者
もの
、これを
聞
き
きて
言
い
ふ『
我
われ
らも
盲目
めしひ
なるか』
41
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『もし
盲目
めしひ
なりしならば、
罪
つみ
なかりしならん、
然
さ
れど
見
み
ゆと
言
い
ふ
汝
なんぢ
らの
罪
つみ
は
遺󠄃
のこ
れり』
〘148㌻〙
第10章
1
『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
羊
ひつじ
の
檻
をり
に
門
もん
より
入
い
らずして、
他
ほか
より
越
こ
ゆる
者
もの
は、
盜人
ぬすびと
なり、
强盜
がうたう
なり。
2
門
もん
より
入
い
る
者
もの
は、
羊
ひつじ
の
牧者
ひつじかひ
なり。
3
門守
かどもり
は
彼
かれ
のために
開
ひら
き、
羊
ひつじ
はその
聲
こゑ
をきき、
彼
かれ
は
己
おのれ
の
羊
ひつじ
の
名
な
を
呼
よ
びて
牽
ひ
きいだす。
4
悉
ことご
とく
其
そ
の
羊
ひつじ
をいだしし
時
とき
、これに
先
さき
だちゆく、
羊
ひつじ
その
聲
こゑ
を
知
し
るによりて
從
したが
ふなり。
5
他
ほか
の
者
もの
には
從
したが
はず、
反
かへ
つて
逃󠄄
に
ぐ、
他
ほか
の
者
もの
どもの
聲
こゑ
を
知
し
らぬ
故
ゆゑ
なり』
6
イエスこの
譬
たとへ
を
言
い
ひ
給
たま
へど、
彼
かれ
らその
何事
なにごと
をかたり
給
たま
ふかを
知
し
らざりき。
7
この
故
ゆゑ
にイエス
復
また
いひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
我
われ
は
羊
ひつじ
の
門
もん
なり。
8
すべて
我
われ
より
前󠄃
さき
に
來
きた
りし
者
もの
は、
盜人
ぬすびと
なり、
强盜
がうたう
なり、
羊
ひつじ
は
之
これ
に
聽
き
かざりき。
9
我
われ
は
門
もん
なり、おほよそ
我
われ
によりて
入
い
る
者
もの
は
救
すく
はれ、かつ
出入
でいり
をなし、
草
くさ
を
得
う
べし。
10
盜人
ぬすびと
のきたるは
盜
ぬす
み、
殺
ころ
し、
亡
ほろぼ
さんとするの
他
ほか
なし。わが
來
きた
るは
羊
ひつじ
に
生命
いのち
を
得
え
しめ、かつ
豐
ゆたか
に
得
え
しめん
爲
ため
なり。
11
我
われ
は
善
よ
き
牧者
ひつじかひ
なり、
善
よ
き
牧者
ひちじかひ
は
羊
ひつじ
のために
生命
いのち
を
捨
す
つ。
12
牧者
ひつじかひ
ならず、
羊
ひつじ
も
己
おの
がものならぬ
雇人
やとひびと
は、
豺狼
おほかみ
のきたるを
見
み
れば
羊
ひつじ
を
棄
す
てて
逃󠄄
に
ぐ、――
豺狼
おほかみ
は
羊
ひつじ
をうばひ
且
かつ
ちらす――
13
彼
かれ
は
雇人
やとひびと
にてその
羊
ひつじ
を
顧󠄃
かへり
みぬ
故
ゆゑ
なり。
14
我
われ
は
善
よ
き
牧者
ひちじかひ
にして、
我
わ
がものを
知
し
り、
我
わ
がものは
我
われ
を
知
し
る、
15
父󠄃
ちち
の
我
われ
を
知
し
り、
我
われ
の
父󠄃
ちち
を
知
し
るが
如
ごと
し、
我
われ
は
羊
ひつじ
のために
生命
いのち
を
捨
す
つ。
16
我
われ
には
亦
また
この
檻
をり
のものならぬ
他
ほか
の
羊
ひつじ
あり、
之
これ
をも
導󠄃
みちび
かざるを
得
え
ず、
彼
かれ
らは
我
わ
が
聲
こゑ
をきかん、
遂󠄅
つひ
に
一
ひと
つの
群
むれ
ひとりの
牧者
ひちじかひ
となるべし。
17
之
これ
によりて
父󠄃
ちち
は
我
われ
を
愛
あい
し
給
たま
ふ、それは
我
われ
ふたたび
生命
いのち
を
得
え
んために
生命
いのち
を
捨
す
つる
故
ゆゑ
なり。
204㌻
18
人
ひと
これを
我
われ
より
取
と
るにあらず、
我
われ
みづから
捨
す
つるなり。
我
われ
は
之
これ
をすつる
權
けん
あり、
復
また
これを
得
う
る
權
けん
あり、
我
われ
この
命令
めいれい
をわが
父󠄃
ちち
より
受
う
けたり』
19
これらの
言
ことば
によりて
復
また
ユダヤ
人
びと
のうちに
紛爭
あらそひ
おこり、
20
その
中
うち
なる
多
おほ
くの
者
もの
いふ『かれは
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれて
氣
き
狂
くる
へり、
何
なに
ぞ
之
これ
にきくか』
21
他
ほか
の
者
もの
ども
言
い
ふ『これは
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
者
もの
の
言
ことば
にあらず、
惡鬼
あくき
は
盲人
めしひ
の
目
め
をあけ
得
え
んや』
22
その
頃
ころ
エルサレムに
宮
みや
潔󠄄
きよめ
の
祭
まつり
あり、
時
とき
は
冬
ふゆ
なり。
23
イエス
宮
みや
の
內
うち
、ソロモンの
廊
らう
を
步
あゆ
みたまふに、
24
ユダヤ
人
びと
ら
之
これ
を
取圍
とりかこ
みて
言
い
ふ『
何時
いつ
まで
我
われ
らの
心
こゝろ
を
惑
まどは
しむるか、
汝
なんぢ
キリストならば
明白
あらは
に
吿
つ
げよ』
25
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われ
旣
すで
に
吿
つ
げたれど
汝
なんぢ
ら
信
しん
ぜず、わが
父󠄃
ちち
の
名
な
によりて
行
おこな
ふわざは、
我
われ
に
就
つ
きて
證
あかし
す。
26
されど
汝
なんぢ
らは
信
しん
ぜず、
我
わ
が
羊
ひつじ
ならぬ
故
ゆゑ
なり。
〘149㌻〙
27
わが
羊
ひつじ
はわが
聲
こゑ
をきき、
我
われ
は
彼
かれ
らを
知
し
り、
彼
かれ
らは
我
われ
に
從
したが
ふ。
28
我
われ
かれらに
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
與
あた
ふれば、
彼
かれ
らは
永遠󠄄
とこしへ
に
亡
ほろ
ぶることなく、
又󠄂
また
かれらを
我
わ
が
手
て
より
奪
うば
ふ
者
もの
あらじ。
29
彼
かれ
ら《[*]》を
我
われ
にあたへ
給
たま
ひし
我
わ
が
父󠄃
ちち
は、
一切
すべて
のものよりも
大
おほい
なれば、
誰
たれ
にても
父󠄃
ちち
の
御手
みて
よりは
奪
うば
ふこと
能
あた
はず。[*異本「わが父󠄃の我に與へ給ひし者は、一切のものよりも大なり」とあり。]
30
我
われ
と
父󠄃
ちち
とは
一
ひと
つなり』
31
ユダヤ
人
びと
また
石
いし
を
取
と
りあげてイエスを
擊
う
たんとす。
32
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われは
父󠄃
ちち
によりて
多
おほ
くの
善
よ
き
業
わざ
を
汝
なんぢ
らに
示
しめ
したり、その
孰
いづれ
の
業
わざ
ゆゑに
我
われ
を
石
いし
にて
擊
う
たんとするか』
33
ユダヤ
人
びと
こたふ『なんぢを
石
いし
にて
擊
う
つは
善
よ
きわざの
故
ゆゑ
ならず、
瀆言
けがしごと
の
故
ゆゑ
にして、
汝
なんぢ
人
ひと
なるに
己
おのれ
を
神
かみ
とする
故
ゆゑ
なり』
34
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『なんぢらの
律法
おきて
に「われ
言
い
ふ、
汝
なんぢ
らは
神
かみ
なり」と
錄
しる
されたるに
非
あら
ずや。
35
かく
神
かみ
の
言
ことば
を
賜
たま
はりし
人々
ひとびと
を
神
かみ
と
云
い
へり。
聖󠄄書
せいしょ
は
廢
すた
るべきにあらず、
205㌻
36
然
しか
るに
父󠄃
ちち
の
潔󠄄
きよ
め
別
わか
ちて
世
よ
に
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
が「われは
神
かみ
の
子
こ
なり」と
言
い
へばとて、
何
なに
ぞ「
瀆言
けがしごと
を
言
い
ふ」といふか。
37
我
われ
もし
我
わ
が
父󠄃
ちち
のわざを
行
おこな
はずば
我
われ
を
信
しん
ずな、
38
もし
行
おこな
はば
假令
たとひ
われを
信
しん
ぜずとも、その
業
わざ
を
信
しん
ぜよ。
然
さ
らば
父󠄃
ちち
の
我
われ
にをり、
我
われ
の
父󠄃
ちち
に
居
を
ることを
知
し
りて
悟
さと
らん』
39
かれら
復
また
イエスを
捕
とら
へんとせしが、その
手
て
より
脫󠄁
のが
れて
去
さ
り
給
たま
へり。
40
斯
かく
てイエス
復
また
ヨルダンの
彼方
かなた
、ヨハネの
最初
はじめ
にバプテスマを
施
ほどこ
したる
處
ところ
にいたり、
其處
そこ
にとどまり
給
たま
ひしが、
41
多
おほ
くの
人
ひと
みもとに
來
きた
りて『ヨハネは
何
なに
の
徴
しるし
をも
行
おこな
はざりしかど、この
人
ひと
に
就
つ
きてヨハネの
言
い
ひし
事
こと
は、ことごとく
眞
まこと
なりき』と
言
い
ふ。
42
而
しか
して
多
おほ
くの
人
ひと
、かしこにてイエスを
信
しん
じたり。
第11章
1
爰
こゝ
に
病
や
める
者
もの
あり、ラザロと
云
い
ふ、マリヤとその
姉妹
しまい
マルタとの
村
むら
ベタニヤの
人
ひと
なり。
2
此
こ
のマリヤは
主
しゅ
に
香
にほひ
油
あぶら
をぬり、
頭髮
かみのけ
にて
御足
みあし
を
拭
ぬぐ
ひし
者
もの
にして、
病
や
めるラザロはその
兄弟
きゃうだい
なり。
3
姉妹
しまい
ら
人
ひと
をイエスに
遣󠄃
つかは
して『
主
しゅ
、
視
み
よ、なんぢの
愛
あい
し
給
たま
ふもの
病
や
めり』と
言
い
はしむ。
4
之
これ
を
聞
き
きてイエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
病
やまひ
は
死
し
に
至
いた
らず、
神
かみ
の
榮光
えいくわう
のため、
神
かみ
の
子
こ
のこれに
由
よ
りて
榮光
えいくわう
を
受
う
けんためなり』
5
イエスはマルタと、その
姉妹
しまい
と、ラザロとを
愛
あい
し
給
たま
へり。
6
ラザロの
病
や
みたるを
聞
き
きて、その
居給
ゐたま
ひし
處
ところ
になほ
二日
ふつか
留
とゞま
り、
7
而
しか
してのち
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『われら
復
また
ユダヤに
徃
ゆ
くべし』
8
弟子
でし
たち
言
い
ふ『ラビ、この
程
ほど
もユダヤ
人
びと
、なんぢを
石
いし
にて
擊
う
たんとせしに、
復
また
かしこに
徃
ゆ
き
給
たま
ふか』
〘150㌻〙
9
イエス
答
こた
へたまふ『
一日
いちにち
に
十二
じふに
時
じ
あるならずや、
人
ひと
もし
晝
ひる
あるかば、
此
こ
の
世
よ
の
光
ひかり
を
見
み
るゆゑに
躓
つまづ
くことなし。
10
夜
よる
あるかば、
光
ひかり
その
人
ひと
になき
故
ゆゑ
に
躓
つまづ
くなり』
11
かく
言
い
ひて
復
また
その
後
のち
いひ
給
たま
ふ『われらの
友
とも
ラザロ
眠
ねむ
れり、されど
我
われ
よび
起󠄃
おこ
さん
爲
ため
に
徃
ゆ
くなり』
206㌻
12
弟子
でし
たち
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
眠
ねむ
れるならば
癒󠄄
い
ゆべし』
13
イエスは
彼
かれ
が
死
し
にたることを
言
い
ひ
給
たま
ひしなれど、
弟子
でし
たちは
寢
い
ねて
眠
ねむ
れるを
言
い
ひ
給
たま
ふと
思
おも
へるなり。
14
爰
こゝ
にイエス
明白
あらは
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『ラザロは
死
し
にたり。
15
我
われ
かしこに
居
を
らざりし
事
こと
を
汝
なんぢ
等
ら
のために
喜
よろこ
ぶ、
汝
なんぢ
等
ら
をして
信
しん
ぜしめんとてなり。
然
さ
れど
我
われ
ら
今
いま
その
許
もと
に
徃
ゆ
くべし』
16
デドモと
稱
とな
ふるトマス、
他
ほか
の
弟子
でし
たちに
言
い
ふ『われらも
徃
ゆ
きて
彼
かれ
と
共
とも
に
死
し
ぬべし』
17
さてイエス
來
きた
り
見
み
給
たま
へば、ラザロの
墓
はか
にあること、
旣
すで
に
四日
よっか
なりき。
18
ベタニヤはエルサレムに
近󠄃
ちか
くして、
二
に
十
じふ
五
ご
丁
ちゃう
ばかりの
距離
へだたり
なるが、
19
數多
あまた
のユダヤ
人
びと
、マルタとマリヤとをその
兄弟
きゃうだい
の
事
こと
につき
慰
なぐさ
めんとて
來
きた
れり。
20
マルタはイエス
來給
きたま
ふと
聞
き
きて
出
い
で
迎󠄃
むか
へたれど、マリヤはなほ
家
いへ
に
坐
ざ
し
居
ゐ
たり。
21
マルタ、イエスに
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、もし
此處
ここ
に
在
いま
ししならば、
我
わ
が
兄弟
きゃうだい
は
死
し
なざりしものを。
22
されど
今
いま
にても
我
われ
は
知
し
る、
何事
なにごと
を
神
かみ
に
願
ねが
ひ
給
たま
ふとも、
神
かみ
は
與
あた
へ
給
たま
はん』
23
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
兄弟
きゃうだい
は
甦
よみが
へるべし』
24
マルタ
言
い
ふ『をはりの
日
ひ
、
復活
よみがへり
のときに
甦
よみが
へるべきを
知
し
る』
25
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
我
われ
は
復活
よみがへり
なり、
生命
いのち
なり、
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
は
死
し
ぬとも
生
い
きん。
26
凡
おほよ
そ
生
い
きて
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
は、
永遠󠄄
とこしへ
に
死
し
なざるべし。
汝
なんぢ
これを
信
しん
ずるか』
27
彼
かれ
いふ『
主
しゅ
よ
然
しか
り、
我
われ
なんぢは
世
よ
に
來
きた
るべきキリスト、
神
かみ
の
子
こ
なりと
信
しん
ず』
28
かく
言
い
ひて
後
のち
ゆきて
竊
ひそか
にその
姉妹
しまい
マリヤを
呼
よ
びて『
師
し
きたりて
汝
なんぢ
を
呼
よ
びたまふ』と
言
い
ふ。
29
マリヤ
之
これ
をきき、
急󠄃
いそ
ぎ
起󠄃
た
ちて
御許
みもと
に
徃
ゆ
けり。
30
イエスは
未
いま
だ
村
むら
に
入
い
らず、
尙
なほ
マルタの
迎󠄃
むか
へし
處
ところ
に
居給
ゐたま
ふ。
207㌻
31
マリヤと
共
とも
に
家
いへ
に
居
を
りて
慰
なぐさ
め
居
ゐ
たるユダヤ
人
びと
、その
急󠄃
いそ
ぎ
立
た
ちて
出
い
でゆくを
見
み
、かれは
歎
なげ
かんとて
墓
はか
に
徃
ゆ
くと
思
おも
ひて
後
のち
に
隨
したが
へり。
32
斯
かく
てマリヤ、イエスの
居給
ゐたま
ふ
處
ところ
にいたり、
之
これ
を
見
み
てその
足下
あしもと
に
伏
ふ
し『
主
しゅ
よ、もし
此處
ここ
に
在
いま
ししならば、
我
わ
が
兄弟
きゃうだい
は
死
し
なざりしものを』と
言
い
ふ。
33
イエスかれが
泣
な
き
居
を
り、
共
とも
に
來
きた
りしユダヤ
人
びと
も
泣
な
き
居
を
るを
見
み
て、
心
こゝろ
を
傷
いた
め
悲
かな
しみて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
34
『かれを
何處
いづこ
に
置
お
きしか』
彼
かれ
ら
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
來
きた
りて
見
み
給
たま
へ』
35
イエス
淚
なみだ
をながし
給
たま
ふ。
〘151㌻〙
36
爰
こゝ
にユダヤ
人
びと
ら
言
い
ふ『
視
み
よ、いかばかり
彼
かれ
を
愛
あい
せしぞや』
37
その
中
うち
の
或
ある
者
もの
ども
言
い
ふ『
盲人
めしひ
の
目
め
をあけし
此
こ
の
人
ひと
にして、
彼
かれ
を
死
し
なざらしむること
能
あた
はざりしか』
38
イエスまた
心
こゝろ
を
傷
いた
めつつ
墓
はか
にいたり
給
たま
ふ。
墓
はか
は
洞
ほら
にして
石
いし
を
置
お
きて
塞
ふさ
げり。
39
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
石
いし
を
除
の
けよ』
死
し
にし
人
ひと
の
姉妹
しまい
マルタ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
彼
かれ
ははや
臭
くさ
し、
四日
よっか
を
經
へ
たればなり』
40
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
汝
なんぢ
に、もし
信
しん
ぜば
神
かみ
の
榮光
えいくわう
を
見
み
んと
言
い
ひしにあらずや』
41
ここに
人々
ひとびと
、
石
いし
を
除
の
けたり。イエス
目
め
を
擧
あ
げて
言
い
ひたまふ『
父󠄃
ちち
よ、
我
われ
にきき
給
たま
ひしを
謝
しゃ
す。
42
常
つね
にきき
給
たま
ふを
我
われ
は
知
し
る。
然
しか
るに
斯
か
く
言
い
ふは、
傍
かたは
らに
立
た
つ
群衆
ぐんじゅう
の
爲
ため
にして、
汝
なんぢ
の
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしことを
之
これ
に
信
しん
ぜしめんとてなり』
43
斯
か
く
言
い
ひてのち、
聲
こゑ
高
たか
く『ラザロよ、
出
い
で
來
き
たれ』と
呼
よば
はり
給
たま
へば、
44
死
し
にしもの
布
ぬの
にて
足
あし
と
手
て
とを
卷
ま
かれたるまま
出
い
で
來
きた
る、
顏
かほ
も
手拭
てぬぐひ
にて
包
つゝ
まれたり。イエス『これを
解
と
きて
徃
ゆ
かしめよ』と
言
い
ひ
給
たま
ふ。
45
斯
かく
てマリヤの
許
もと
に
來
きた
りて、イエスの
爲
な
し
給
たま
ひし
事
こと
を
見
み
たる
多
おほ
くのユダヤ
人
びと
、かれを
信
しん
じたりしが、
46
或
ある
者
もの
はパリサイ
人
びと
に
徃
ゆ
きて、イエスの
爲
な
し
給
たま
ひし
事
こと
を
吿
つ
げたり。
208㌻
47
ここに
祭司長
さいしちゃう
・パリサイ
人
びと
ら
議會
ぎくわい
を
開
ひら
きて
言
い
ふ『われら
如何
いか
に
爲
な
すべきか、
此
こ
の
人
ひと
おほくの
徴
しるし
を
行
おこな
ふなり。
48
もし
彼
かれ
をこのまま
捨
す
ておかば、
人々
ひとびと
みな
彼
かれ
を
信
しん
ぜん、
而
しか
してロマ
人
びと
きたりて、
我
われ
らの
土地
とち
と
國人
くにびと
とを
奪
うば
はん』
49
その
中
うち
の
一人
ひとり
にて
此
こ
の
年
とし
の
大
だい
祭司
さいし
なるカヤパ
言
い
ふ『なんぢら
何
なに
をも
知
し
らず。
50
ひとりの
人
ひと
、
民
たみ
のために
死
し
にて、
國人
くにびと
すべての
滅
ほろ
びぬは、
汝
なんぢ
らの
益
えき
なるを
思
おも
はぬなり』
51
これは
己
おのれ
より
云
い
へるに
非
あら
ず、この
年
とし
の
大
だい
祭司
さいし
なれば、イエスの
國人
くにびと
のため、
52
又󠄂
また
ただに
國人
くにびと
の
爲
ため
のみならず、
散
ち
りたる
神
かみ
の
子
こ
らを
一
ひと
つに
集
あつ
めん
爲
ため
に
死
し
に
給
たま
ふことを
預言
よげん
したるなり。
53
彼
かれ
等
ら
この
日
ひ
よりイエスを
殺
ころ
さんと
議
はか
れり。
54
されば
此
こ
の
後
のち
イエス
顯
あらは
にユダヤ
人
びと
のなかを
步
あゆ
み
給
たま
はず、
此處
ここ
を
去
さ
りて
荒野
あらの
にちかき
處
ところ
なるエフライムといふ
町
まち
に
徃
ゆ
き、
弟子
でし
たちと
偕
とも
に
其處
そこ
に
留
とゞま
りたまふ。
55
ユダヤ
人
びと
の
過󠄃越
すぎこし
の
祭
まつり
近󠄃
ちか
づきたれば、
多
おほ
くの
人々
ひとびと
身
み
を
潔󠄄
きよ
めんとて、
祭
まつり
のまへに
田舍
ゐなか
よりエルサレムに
上
のぼ
れり。
56
彼
かれ
らイエスをたづね、
宮
みや
に
立
た
ちて
互
たがひ
に
言
い
ふ『なんぢら
如何
いか
に
思
おも
ふか、
彼
かれ
は
祭
まつり
に
來
きた
らぬか』
57
祭司長
さいしちゃう
・パリサイ
人
びと
らは、イエスを
捕
とら
へんとて、その
在處
ありか
を
知
し
る
者
もの
あらば、
吿
つ
げ
出
い
づべく
預
かね
て
命令
めいれい
したりしなり。
〘152㌻〙
第12章
1
過󠄃越
すぎこし
の
祭
まつり
の
六日
むゆか
前󠄃
まへ
に、イエス、ベタニヤに
來
きた
り
給
たま
ふ、ここは
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
ひしラザロの
居
を
る
處
ところ
なり。
2
此處
ここ
にてイエスのために
饗宴
ふるまひ
を
設
まう
け、マルタは
事
つか
へ、ラザロはイエスと
共
とも
に
席
せき
に
著
つ
ける
者
もの
の
中
うち
にあり。
3
マリヤは
價
あたひ
高
たか
き
混
まじ
りなきナルドの
香
にほひ
油
あぶら
一斤
いっきん
を
持
も
ち
來
きた
りて、イエスの
御足
みあし
にぬり、
己
おの
が
頭髮
かみのけ
にて
御足
みあし
を
拭
ぬぐ
ひしに、
香
にほひ
油
あぶら
のかをり
家
いへ
に
滿
み
ちたり。
4
御弟子
みでし
の
一人
ひとり
にてイエスを
賣
う
らんとするイスカリオテのユダ
言
い
ふ、
209㌻
5
『
何
なに
ぞこの
香
にほひ
油
あぶら
を
三
さん
百
ひゃく
デナリに
賣
う
りて
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
施
ほどこ
さざる』
6
かく
云
い
へるは
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
を
思
おも
ふ
故
ゆゑ
にあらず、おのれ
盜人
ぬすびと
にして
財嚢
かねいれ
を
預
あづか
り、その
中
なか
に
納󠄃
をさ
むる
物
もの
を
掠
かす
めゐたればなり。
7
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
女
をんな
の
爲
な
すに
任
まか
せよ、
我
わ
が
葬
はうむ
りの
日
ひ
のために
之
これ
を
貯
たくは
へたるなり。
8
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
は
常
つね
に
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
居
を
れども、
我
われ
は
常
つね
に
居
を
らぬなり』
9
ユダヤの
多
おほ
くの
民
たみ
ども、イエスの
此處
ここ
に
居給
ゐたま
ふことを
知
し
りて
來
きた
る、これはイエスの
爲
ため
のみにあらず、
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
ひしラザロを
見
み
んとてなり。
10
斯
かく
て
祭司長
さいしちゃう
ら、ラザロをも
殺
ころ
さんと
議
はか
る。
11
彼
かれ
のために
多
おほ
くのユダヤ
人
びと
さり
徃
ゆ
きてイエスを
信
しん
ぜし
故
ゆゑ
なり。
12
明
あ
くる
日
ひ
、
祭
まつり
に
來
きた
りし
多
おほ
くの
民
たみ
ども、イエスのエルサレムに
來
きた
り
給
たま
ふをきき、
13
棕梠
しゅろ
の
枝
えだ
をとりて
出
い
で
迎󠄃
むか
へ、『「ホサナ、
讃
ほ
むべきかな、
主
しゅ
の
御名
みな
によりて
來
きた
る
者
もの
」イスラエルの
王
わう
』と
呼
よば
はる。
14
イエスは
小驢馬
ころば
を
得
え
て
之
これ
に
乘
の
り
給
たま
ふ。これは
錄
しる
して、
15
『シオンの
娘
むすめ
よ、
懼
おそ
るな。
視
み
よ、なんぢの
王
わう
は
驢馬
ろば
の
子
こ
に
乘
の
りて
來
きた
り
給
たま
ふ』と
有
あ
るが
如
ごと
し。
16
弟子
でし
たちは
最初
はじめ
これらの
事
こと
を
悟
さと
らざりしが、イエスの
榮光
えいくわう
を
受
う
け
給
たま
ひし
後
のち
に、これらの
事
こと
のイエスに
就
つ
きて
錄
しる
されたると、
人々
ひとびと
が
斯
か
く
爲
な
ししとを
思
おも
ひ
出
いだ
せり。
17
ラザロを
墓
はか
より
呼
よ
び
起󠄃
おこ
し、
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
ひし
時
とき
に、イエスと
偕
とも
に
居
を
りし
群衆
ぐんじゅう
、
證
あかし
をなせり。
18
群衆
ぐんじゅう
のイエスを
迎󠄃
むか
へたるは、
斯
かゝ
る
徴
しるし
を
行
おこな
ひ
給
たま
ひしことを
聞
き
きたるに
因
よ
りてなり。
19
パリサイ
人
びと
ら
互
たがひ
に
言
い
ふ『
見
み
るべし、
汝
なんぢ
らの
謀
はか
ることの
益
えき
なきを。
視
み
よ、
世
よ
は
彼
かれ
に
從
したが
へり』
210㌻
20
禮拜
れいはい
せんとて
祭
まつり
に
上
のぼ
りたる
者
もの
の
中
うち
に、ギリシヤ
人
びと
數人
すにん
ありしが、
21
ガリラヤなるベツサイダのピリポに
來
きた
り、
請󠄃
こ
ひて
言
い
ふ『
君
きみ
よ、われらイエスに
謁
まみ
えんことを
願
ねが
ふ』
22
ピリポ
徃
ゆ
きてアンデレに
吿
つ
げ、アンデレとピリポと
共
とも
に
徃
ゆ
きてイエスに
吿
つ
ぐ。
23
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
人
ひと
の
子
こ
の
榮光
えいくわう
を
受
う
くべき
時
とき
きたれり。
〘153㌻〙
24
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
一粒
ひとつぶ
の
麥
むぎ
、
地
ち
に
落
お
ちて
死
し
なずば、
唯一
たゞひと
つにて
在
あ
らん、もし
死
し
なば、
多
おほ
くの
果
み
を
結
むす
ぶべし。
25
己
おの
が
生命
いのち
を
愛
あい
する
者
もの
は、これを
失
うしな
ひ、この
世
よ
にてその
生命
いのち
を
憎
にく
む
者
もの
は、
之
これ
を
保
たも
ちて
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
に
至
いた
るべし。
26
人
ひと
もし
我
われ
に
事
つか
へんとせば、
我
われ
に
從
したが
へ、わが
居
を
る
處
ところ
に
我
われ
に
事
つか
ふる
者
もの
もまた
居
を
るべし。
人
ひと
もし
我
われ
に
事
つか
ふることをせば、
我
わ
が
父󠄃
ちち
これを
貴
たふと
び
給
たま
はん。
27
今
いま
わが
心
こゝろ
騷
さわ
ぐ、
我
われ
なにを
言
い
ふべきか。
父󠄃
ちち
よ、この
時
とき
より
我
われ
を《[*]》
救
すく
ひ
給
たま
へ、されど
我
われ
この
爲
ため
にこの
時
とき
に
到
いた
れり。[*或は「救ひ給へといふべきか」と譯す。]
28
父󠄃
ちち
よ、
御名
みな
の
榮光
えいくわう
をあらはし
給
たま
へ』
爰
こゝ
に
天
てん
より
聲
こゑ
いでて
言
い
ふ『われ
旣
すで
に
榮光
えいくわう
をあらはしたり、
復
また
さらに
顯
あらは
さん』
29
傍
かたは
らに
立
た
てる
群衆
ぐんじゅう
これを
聞
き
きて『
雷霆
いかづち
鳴
な
れり』と
言
い
ひ、ある
人々
ひとびと
は『
御使
みつかひ
かれに
語
かた
れるなり』と
言
い
ふ。
30
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
聲
こゑ
の
來
きた
りしは、
我
わ
が
爲
ため
にあらず、
汝
なんぢ
らの
爲
ため
なり。
31
今
いま
この
世
よ
の
審判󠄄
さばき
は
來
きた
れり、
今
いま
この
世
よ
の
君
きみ
は
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さるべし。
32
我
われ
もし
地
ち
より
擧
あ
げられなば、
凡
すべ
ての
人
ひと
をわが
許
もと
に
引
ひ
きよせん』
33
かく
言
い
ひて、
己
おの
が
如何
いか
なる
死
し
にて
死
し
ぬるかを
示
しめ
し
給
たま
へり。
34
群衆
ぐんじゅう
こたふ『われら
律法
おきて
によりて、キリストは
永遠󠄄
とこしへ
に
存
ながら
へ
給
たま
ふと
聞
き
きたるに、
汝
なんぢ
いかなれば
人
ひと
の
子
こ
は
擧
あ
げらるべしと
言
い
ふか、その
人
ひと
の
子
こ
とは
誰
たれ
なるか』
35
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なほ
暫
しば
し
光
ひかり
は
汝
なんぢ
らの
中
うち
にあり、
光
ひかり
のある
間
ま
に
步
あゆ
みて
暗󠄃黑
くらき
に
追󠄃及
おひつ
かれぬやうに
爲
せ
よ、
暗󠄃
くら
き
中
うち
を
步
あゆ
む
者
もの
は
徃方
ゆくて
を
知
し
らず。
211㌻
36
光
ひかり
の
子
こ
とならんために
光
ひかり
のある
間
ま
に
光
ひかり
を
信
しん
ぜよ』
イエス
此
これ
等
ら
のことを
語
かた
りてのち、
彼
かれ
らを
避󠄃
さ
けて
隱
かく
れ
給
たま
へり。
37
かく
多
おほ
くの
徴
しるし
を
人々
ひとびと
の
前󠄃
まへ
におこなひ
給
たま
ひたれど、なほ
彼
かれ
を
信
しん
ぜざりき。
38
これ
預言者
よげんしゃ
イザヤの
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
曰
いは
く 『
主
しゅ
よ、
我
われ
らに
聞
き
きたる
言
ことば
を
誰
たれ
か
信
しん
ぜし。
主
しゅ
の
御腕
みうで
は
誰
たれ
に
顯
あらは
れし』
39
彼
かれ
らが
信
しん
じ
得
え
ざりしは
此
こ
の
故
ゆゑ
なり。
即
すなは
ちイザヤまた
云
い
へらく、
40
『
彼
かれ
らの
眼
め
を
暗󠄃
くら
くし、
心
こゝろ
を
頑固
かたくな
にし
給
たま
へり。 これ
目
め
にて
見
み
、
心
こゝろ
にて
悟
さと
り、
飜
ひるが
へりて、
我
われ
に
醫
いや
さるる
事
こと
なからん
爲
ため
なり』
41
イザヤの
斯
か
く
云
い
へるは、その
榮光
えいくわう
を
見
み
し
故
ゆゑ
にて、イエスに
就
つ
きて
語
かた
りしなり。
42
されど
司
つかさ
たちの
中
うち
にもイエスを
信
しん
じたるもの
多
おほ
かりしが、パリサイ
人
びと
の
故
ゆゑ
によりて
言
い
ひ
顯
あらは
すことを
爲
せ
ざりき、
除名
ぢょめい
せられん
事
こと
を
恐
おそ
れたるなり。
〘154㌻〙
43
彼
かれ
らは
神
かみ
の
譽
ほまれ
よりも
人
ひと
の
譽
ほまれ
を
愛
め
でしなり。
44
イエス
呼
よば
はりて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われを
信
しん
ずる
者
もの
は
我
われ
を
信
しん
ずるにあらず、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
信
しん
じ、
45
我
われ
を
見
み
る
者
もの
は
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
見
み
るなり。
46
我
われ
は
光
ひかり
として
世
よ
に
來
きた
れり、すべて
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
の
暗󠄃黑
くらき
に
居
を
らざらん
爲
ため
なり。
47
人
ひと
たとひ
我
わ
が
言
ことば
をききて
守
まも
らずとも、
我
われ
は
之
これ
を
審
さば
かず。
夫
それ
わが
來
きた
りしは
世
よ
を
審
さば
かん
爲
ため
にあらず、
世
よ
を
救
すく
はん
爲
ため
なり。
48
我
われ
を
棄
す
て、
我
わ
が
言
ことば
を
受
う
けぬ
者
もの
を
審
さば
く
者
もの
あり、わが
語
かた
れる
言
ことば
こそ
終󠄃
をはり
の
日
ひ
に
之
これ
を
審
さば
くなれ。
49
我
われ
はおのれに
由
よ
りて
語
かた
れるにあらず、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
父󠄃
ちち
みづから
我
わ
が
言
い
ふべきこと、
語
かた
るべきことを
命
めい
じ
給
たま
ひし
故
ゆゑ
なり。
50
我
われ
その
命令
めいれい
の
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
たるを
知
し
る。されば
我
われ
は
語
かた
るに、
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
我
われ
に
言
い
ひ
給
たま
ふままを
語
かた
るなり』
第13章
1
過󠄃越
すぎこし
のまつりの
前󠄃
まへ
に、イエスこの
世
よ
を
去
さ
りて
父󠄃
ちち
に
徃
ゆ
くべき
己
おの
が
時
とき
の
來
きた
れるを
知
し
り、
世
よ
に
在
あ
る
己
おのれ
の
者
もの
を
愛
あい
して
極
きはみ
まで
之
これ
を
愛
あい
し
給
たま
へり。
212㌻
2
夕餐󠄃
ゆふげ
のとき
惡魔󠄃
あくま
、
早
はや
くもシモンの
子
こ
イスカリオテのユダの
心
こゝろ
に、イエスを
賣
う
らんとする
思
おもひ
を
入
い
れたるが、
3
イエス
父󠄃
ちち
が
萬物
ばんもつ
をおのが
手
て
にゆだね
給
たま
ひしことと、
己
おのれ
の
神
かみ
より
出
い
でて
神
かみ
に
到
いた
ることを
知
し
り、
4
夕餐󠄃
ゆふげ
より
起󠄃
た
ちて
上衣
うはぎ
をぬぎ、
手巾
てぬぐひ
をとりて
腰
こし
にまとひ、
5
尋󠄃
つい
で
盥
たらひ
に
水
みづ
をいれて、
弟子
でし
たちの
足
あし
をあらひ、
纒
まと
ひたる
手巾
てぬぐひ
にて
之
これ
を
拭
ぬぐ
ひはじめ
給
たま
ふ。
6
斯
かく
てシモン・ペテロに
至
いた
り
給
たま
へば、
彼
かれ
いふ『
主
しゅ
よ、
汝
なんぢ
わが
足
あし
を
洗
あら
ひ
給
たま
ふか』
7
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
爲
な
すことを
汝
なんぢ
いまは
知
し
らず、
後
のち
に
悟
さと
るべし』
8
ペテロ
言
い
ふ『
永遠󠄄
とこしへ
に
我
わ
が
足
あし
をあらひ
給
たま
はざれ』イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『
我
われ
もし
汝
なんぢ
を
洗
あら
はずば、
汝
なんぢ
われと
關係
かゝはり
なし』
9
シモン・ペテロ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、わが
足
あし
のみならず、
手
て
をも
頭
かしら
をも』
10
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『すでに
浴
よく
したる
者
もの
は
足
あし
のほか
洗
あら
ふを
要󠄃
えう
せず、
全󠄃身
ぜんしん
きよきなり。
斯
か
く
汝
なんぢ
らは
潔󠄄
きよ
し、されど
悉
ことご
とくは
然
しか
らず』
11
これ
己
おのれ
を
賣
う
る
者
もの
の
誰
たれ
なるを
知
し
りたまふ
故
ゆゑ
に『ことごとくは
潔󠄄
きよ
からず』と
言
い
ひ
給
たま
ひしなり。
12
彼
かれ
らの
足
あし
をあらひ、
己
おの
が
上衣
うはぎ
をとり、
再
ふたゝ
び
席
せき
につきて
後
のち
いひ
給
たま
ふ『わが
汝
なんぢ
らに
爲
な
したることを
知
し
るか。
13
なんぢら
我
われ
を
師
し
また
主
しゅ
ととなふ、
然
し
か
言
い
ふは
宜
うべ
なり、
我
われ
は
是
これ
なり。
14
我
われ
は
主
しゅ
また
師
し
なるに、
尙
なほ
なんぢらの
足
あし
を
洗
あら
ひたれば、
汝
なんぢ
らも
互
たがひ
に
足
あし
を
洗
あら
ふべきなり。
15
われ
汝
なんぢ
らに
模範
もはん
を
示
しめ
せり、わが
爲
な
ししごとく、
汝
なんぢ
らも
爲
な
さんためなり。
〘155㌻〙
16
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
僕
しもべ
はその
主
しゅ
よりも
大
おほい
ならず。
遣󠄃
つかは
されたる
者
もの
は
之
これ
を
遣󠄃
つかは
す
者
もの
よりも
大
おほい
ならず。
17
汝
なんぢ
等
ら
これらの
事
こと
を
知
し
りて
之
これ
を
行
おこな
はば
幸福
さいはひ
なり。
18
これ
汝
なんぢ
ら
凡
すべ
ての
者
もの
につきて
言
い
ふにあらず、
我
われ
はわが
選󠄄
えら
びたる
者
もの
どもを
知
し
る。されど
聖󠄄書
せいしょ
に「
我
われ
とともにパンを
食󠄃
くら
ふ
者
もの
、われに
向
むか
ひて
踵
きびす
を
擧
あ
げたり」と
云
い
へることは、
必
かなら
ず
成就
じゃうじゅ
すべきなり。
213㌻
19
今
いま
その
事
こと
の
成
な
らぬ
前󠄃
まへ
に
之
これ
を
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
事
こと
の
成
な
らん
時
とき
、わが
夫
それ
なるを
汝
なんぢ
らの
信
しん
ぜんためなり。
20
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、わが
遣󠄃
つかは
す
者
もの
を
受
う
くる
者
もの
は
我
われ
をうくるなり。
我
われ
を
受
う
くる
者
もの
は
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
受
う
くるなり』
21
イエス
此
これ
等
ら
のことを
言
い
ひ
終󠄃
を
へて、
心
こゝろ
さわぎ
證
あかし
をなして
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
らの
中
うち
の
一人
ひとり
われを
賣
う
らん』
22
弟子
でし
たち
互
たがひ
に
顏
かほ
を
見
み
合
あは
せ、
誰
たれ
につきて
言
い
ひ
給
たま
ふかを
訝
いぶか
る。
23
イエスの
愛
あい
したまふ
一人
ひとり
の
弟子
でし
、イエスの
御胸
みむね
によりそひ
居
ゐ
たれば、
24
シモン・ペテロ
首
かうべ
にて
示
しめ
し『
誰
たれ
のことを
言
い
ひ
給
たま
ふか、
吿
つ
げよ』といふ。
25
彼
かれ
そのまま
御胸
みむね
によりかかりて『
主
しゅ
よ、
誰
たれ
なるか』と
言
い
ひしに、
26
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『わが
一撮
ひとつまみ
の
食󠄃物
くひもの
を
浸
ひた
して
與
あた
ふる
者
もの
は
夫
それ
なり』
斯
かく
て
一撮
ひとつまみ
の
食󠄃物
くひもの
を
浸
ひた
してシモンの
子
こ
イスカリオテのユダに
與
あた
へたまふ。
27
ユダ
一撮
ひとつまみ
の
食󠄃物
くひもの
を
受
う
くるや、
惡魔󠄃
あくま
かれに
入
い
りたり。イエス
彼
かれ
に
言
い
ひたまふ『なんぢが
爲
な
すことを
速󠄃
すみや
かに
爲
な
せ』
28
席
せき
に
著
つ
きゐたる
者
もの
は
一人
ひとり
として
何
なに
故
ゆゑ
かく
言
い
ひ
給
たま
ふかを
知
し
らず。
29
ある
人々
ひとびと
はユダが
財嚢
かねいれ
を
預
あづか
るによりて『
祭
まつり
のために
要󠄃
えう
する
物
もの
を
買
か
へ』とイエスの
言
い
ひ
給
たま
へるか、また
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
何
なに
か
施
ほどこ
さしめ
給
たま
ふならんと
思
おも
へり。
30
ユダ
一撮
ひとつまみ
の
食󠄃物
くひもの
を
受
う
くるや、
直
たゞ
ちに
出
い
づ、
時
とき
は
夜
よる
なりき。
31
ユダの
出
い
でし
後
のち
、イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
今
いま
や
人
ひと
の
子
こ
、
榮光
えいくわう
をうく、
神
かみ
も
彼
かれ
によりて
榮光
えいくわう
をうけ
給
たま
ふ。
32
神
かみ
かれに
由
よ
りて
榮光
えいくわう
をうけ
給
たま
はば、
神
かみ
も
己
おのれ
によりて
彼
かれ
に
榮光
えいくわう
を
與
あた
へ
給
たま
はん、
直
たゞ
ちに
與
あた
へ
給
たま
ふべし。
33
若子
わくご
よ、
我
われ
なほ
暫
しばら
く
汝
なんぢ
らと
偕
とも
にあり、
汝
なんぢ
らは
我
われ
を
尋󠄃
たづ
ねん、
然
さ
れど
曾
かつ
てユダヤ
人
びと
に「なんぢらは
我
わ
が
徃
ゆ
く
處
ところ
に
來
く
ること
能
あた
はず」と
言
い
ひし
如
ごと
く
今
いま
、
汝
なんぢ
らにも
然
し
か
言
い
ふなり。
214㌻
34
われ
新
あたら
しき
誡命
いましめ
を
汝
なんぢ
らに
與
あた
ふ、なんぢら
相
あひ
愛
あい
すべし。わが
汝
なんぢ
らを
愛
あい
せしごとく、
汝
なんぢ
らも
相
あひ
愛
あい
すべし。
35
互
たがひ
に
相
あひ
愛
あい
する
事
こと
をせば、
之
これ
によりて
人
ひと
みな
汝
なんぢ
らの
我
わ
が
弟子
でし
たるを
知
し
らん』
36
シモン・ペテロ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
何處
いづこ
にゆき
給
たま
ふか』イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『わが
徃
ゆ
く
處
ところ
に、なんぢ
今
いま
は
從
したが
ふこと
能
あた
はず。されど
後
のち
に
從
したが
はん』
〘156㌻〙
37
ペテロ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、いま
從
したが
ふこと
能
あた
はぬは
何
なに
故
ゆゑ
ぞ、
我
われ
は
汝
なんぢ
のために
生命
いのち
を
棄
す
てん』
38
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『なんぢ
我
わ
がために
生命
いのち
を
棄
す
つるか、
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、なんぢ
三度
みたび
われを
否
いな
むまでは、
鷄
にはとり
鳴
な
かざるべし』
第14章
1
『なんぢら
心
こゝろ
を
騷
さわ
がすな、
神
かみ
を
信
しん
じ、また
我
われ
を
信
しん
ぜよ。
2
わが
父󠄃
ちち
の
家
いへ
には
住󠄃處
すみか
おほし、
然
しか
らずば
我
われ
かねて
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げしならん。われ
汝
なんぢ
等
ら
のために
處
ところ
を
備
そな
へに
徃
ゆ
く。
3
もし
徃
ゆ
きて
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
處
ところ
を
備
そな
へば、
復
また
きたりて
汝
なんぢ
らを
我
わ
がもとに
迎󠄃
むか
へん、わが
居
を
るところに
汝
なんぢ
らも
居
を
らん
爲
ため
なり。
4
汝
なんぢ
らは
我
わ
が
徃
ゆ
くところに
至
いた
る
道󠄃
みち
を
知
し
る』
5
トマス
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
何處
いづこ
にゆき
給
たま
ふかを
知
し
らず、
爭
いか
でその
道󠄃
みち
を
知
し
らんや』
6
イエス
彼
かれ
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『われは
道󠄃
みち
なり、
眞理
まこと
なり、
生命
いのち
なり、
我
われ
に
由
よ
らでは
誰
たれ
にても
父󠄃
ちち
の
御許
みもと
にいたる
者
もの
なし。
7
汝
なんぢ
等
ら
もし
我
われ
を
知
し
りたらば
我
わ
が
父󠄃
ちち
をも
知
し
りしならん。
今
いま
より
汝
なんぢ
ら
之
これ
を
知
し
る、
旣
すで
に
之
これ
を
見
み
たり』
8
ピリポ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
父󠄃
ちち
を
我
われ
らに
示
しめ
し
給
たま
へ、
然
さ
らば
足
た
れり』
9
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『ピリポ、
我
われ
かく
久
ひさ
しく
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
居
を
りしに、
我
われ
を
知
し
らぬか。
我
われ
を
見
み
し
者
もの
は
父󠄃
ちち
を
見
み
しなり、
如何
いか
なれば「
我
われ
らに
父󠄃
ちち
を
示
しめ
せ」と
言
い
ふか。
10
我
われ
の
父󠄃
ちち
に
居
を
り、
父󠄃
ちち
の
我
われ
に
居給
ゐたま
ふことを
信
しん
ぜぬか。わが
汝
なんぢ
等
ら
にいふ
言
ことば
は
己
おのれ
によりて
語
かた
るにあらず、
父󠄃
ちち
われに
在
いま
して
御業
みわざ
をおこなひ
給
たま
ふなり。
215㌻
11
わが
言
い
ふことを
信
しん
ぜよ、
我
われ
は
父󠄃
ちち
にをり、
父󠄃
ちち
は
我
われ
に
居給
ゐたま
ふなり。もし
信
しん
ぜずば、
我
わ
が
業
わざ
によりて
信
しん
ぜよ。
12
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
は
我
わ
がなす
業
わざ
をなさん、かつ
之
これ
よりも
大
おほい
なる
業
わざ
をなすべし、われ
父󠄃
ちち
に
徃
ゆ
けばなり。
13
汝
なんぢ
らが
我
わ
が
名
な
によりて
願
ねが
ふことは、
我
われ
みな
之
これ
を
爲
な
さん、
父󠄃
ちち
、
子
こ
によりて
榮光
えいくわう
を
受
う
け
給
たま
はんためなり。
14
何事
なにごと
にても
我
わ
が
名
な
によりて
我
われ
に
願
ねがは
ば、
我
われ
これを
成
な
すべし。
15
汝
なんぢ
等
ら
もし
我
われ
を
愛
あい
せば、
我
わ
が
誡命
いましめ
を
守
まも
らん。
16
われ
父󠄃
ちち
に
請󠄃
こ
はん、
父󠄃
ちち
は
他
ほか
に
助主
たすけぬし
をあたへて、
永遠󠄄
とこしへ
に
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
居
を
らしめ
給
たま
ふべし。
17
これは
眞理
しんり
の
御靈
みたま
なり、
世
よ
はこれを
受
う
くること
能
あた
はず、これを
見
み
ず、また
知
し
らぬに
因
よ
る。なんぢらは
之
これ
を
知
し
る、
彼
かれ
は
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
居
を
り、また
汝
なんぢ
らの
中
うち
に
居給
ゐたま
ふべければなり。
18
我
われ
なんぢらを
遣󠄃
つかは
して
孤兒
みなしご
とはせず、
汝
なんぢ
らに
來
きた
るなり。
19
暫
しばら
くせば
世
よ
は
復
また
われを
見
み
ず、されど
汝
なんぢ
らは
我
われ
を
見
み
る、われ
活
い
くれば
汝
なんぢ
らも
活
い
くべければなり。
20
その
日
ひ
には、
我
われ
わが
父󠄃
ちち
に
居
を
り、なんぢら
我
われ
に
居
を
り、われ
汝
なんぢ
らに
居
を
ることを
汝
なんぢ
ら
知
し
らん。
21
わが
誡命
いましめ
を
保
たも
ちて
之
これ
を
守
まも
るものは、
即
すなは
ち
我
われ
を
愛
あい
する
者
もの
なり。
我
われ
を
愛
あい
する
者
もの
は
我
わ
が
父󠄃
ちち
に
愛
あい
せられん、
我
われ
も
之
これ
を
愛
あい
し、
之
これ
に
己
おのれ
を
顯
あらは
すべし』
〘157㌻〙
22
イスカリオテならぬユダ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
何
なに
故
ゆゑ
おのれを
我
われ
らに
顯
あらは
して、
世
よ
には
顯
あらは
し
給
たま
はぬか』
23
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
人
ひと
もし
我
われ
を
愛
あい
せば、わが
言
ことば
を
守
まも
らん、わが
父󠄃
ちち
これを
愛
あい
し、かつ
我等
われら
その
許
もと
に
來
きた
りて
住󠄃處
すみか
を
之
これ
とともに
爲
せ
ん。
24
我
われ
を
愛
あい
せぬ
者
もの
は、わが
言
ことば
を
守
まも
らず。
汝
なんぢ
らが
聞
き
くところの
言
ことば
は、わが
言
ことば
にあらず、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
父󠄃
ちち
の
言
ことば
なり。
216㌻
25
此
これ
等
ら
のことは
我
われ
なんぢらと
偕
とも
にありて
語
かた
りしが、
26
助主
たすけぬし
、
即
すなは
ちわが
名
な
によりて
父󠄃
ちち
の
遣󠄃
つかは
したまふ
聖󠄄
せい
靈
れい
は、
汝
なんぢ
らに
萬
よろづ
の
事
こと
ををしへ、
又󠄂
また
すべて
我
わ
が
汝
なんぢ
らに
言
い
ひしことを
思
おも
ひ
出
いだ
さしむべし。
27
われ
平󠄃安
へいあん
を
汝
なんぢ
らに
遺󠄃
のこ
す、わが
平󠄃安
へいあん
を
汝
なんぢ
らに
與
あた
ふ。わが
與
あた
ふるは
世
よ
の
與
あた
ふる
如
ごと
くならず、
汝
なんぢ
ら
心
こゝろ
を
騷
さわ
がすな、また
懼
おそ
るな。
28
「われ
徃
ゆ
きて
汝
なんぢ
らに
來
きた
るなり」と
云
い
ひしを
汝
なんぢ
ら
旣
すで
に
聞
き
けり。もし
我
われ
を
愛
あい
せば
父󠄃
ちち
にわが
徃
ゆ
くを
喜
よろこ
ぶべきなり、
父󠄃
ちち
は
我
われ
よりも
大
おほい
なるに
因
よ
る。
29
今
いま
その
事
こと
の
成
な
らぬ
前󠄃
さき
に、これを
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げたり、
事
こと
の
成
な
らんとき
汝
なんぢ
らの
信
しん
ぜんためなり。
30
今
いま
より
後
のち
われ
汝
なんぢ
らと
多
おほ
く
語
かた
らじ、この
世
よ
の
君
きみ
きたる
故
ゆゑ
なり。
彼
かれ
は
我
われ
に
對
たい
して
何
なに
の
權
けん
もなし、
31
されど
斯
か
くなるは、
我
われ
の、
父󠄃
ちち
を
愛
あい
し、
父󠄃
ちち
の
命
めい
じ
給
たま
ふところに
遵󠄅
したが
ひて
行
おこな
ふことを
世
よ
の
知
し
らん
爲
ため
なり。
起󠄃
お
きよ、
率󠄃
いざ
ここを
去
さ
るべし。
第15章
1
我
われ
は
眞
まこと
の
葡萄
ぶだう
の
樹
き
、わが
父󠄃
ちち
は
農夫
のうふ
なり。
2
おほよそ
我
われ
にありて
果
み
を
結
むす
ばぬ
枝
えだ
は、
父󠄃
ちち
これを
除
のぞ
き、
果
み
を
結
むす
ぶものは、いよいよ
果
み
を
結
むす
ばせん
爲
ため
に
之
これ
を
潔󠄄
きよ
めたまふ。
3
汝
なんぢ
らは
旣
すで
に
潔󠄄
きよ
し、わが
語
かた
りたる
言
ことば
に
因
よ
りてなり。
4
我
われ
に
居
を
れ、《[*]》さらば
我
われ
なんぢらに
居
を
らん。
枝
えだ
もし
樹
き
に
居
を
らずば、
自
みづか
ら
果
み
を
結
むす
ぶこと
能
あた
はぬごとく、
汝
なんぢ
らも
我
われ
に
居
を
らずば
亦
また
然
しか
り。[*或は「また我を汝らに居らしめよ」と譯す。]
5
我
われ
は
葡萄
ぶだう
の
樹
き
、なんぢらは
枝
えだ
なり。
人
ひと
もし
我
われ
にをり、
我
われ
また
彼
かれ
にをらば、
多
おほ
くの
果
み
を
結
むす
ぶべし。
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
離
はな
るれば、
何事
なにごと
をも
爲
な
し
能
あた
はず。
6
人
ひと
もし
我
われ
に
居
を
らずば、
枝
えだ
のごとく
外
そと
に
棄
す
てられて
枯
か
る、
人々
ひとびと
これを
集
あつ
め
火
ひ
に
投
なげ
入
い
れて
燒
や
くなり。
7
汝
なんぢ
等
ら
もし
我
われ
に
居
を
り、わが
言
ことば
なんぢらに
居
を
らば、
何
なに
にても
望󠄇
のぞみ
に
隨
したが
ひて
求
もと
めよ、
然
さ
らば
成
な
らん。
8
なんぢら
多
おほ
くの
果
み
を
結
むす
ばば、わが
父󠄃
ちち
は
榮光
えいくわう
を
受
う
け
給
たま
ふべし、
而
しか
して
汝
なんぢ
等
ら
わが
弟子
でし
とならん。
9
父󠄃
ちち
の
我
われ
を
愛
あい
し
給
たま
ひしごとく、
我
われ
も
汝
なんぢ
らを
愛
あい
したり、わが
愛
あい
に
居
を
れ。
10
なんぢら
若
も
し、わが
誡命
いましめ
をまもらば、
我
わ
が
愛
あい
にをらん、
我
われ
わが
父󠄃
ちち
の
誡命
いましめ
を
守
まも
りて、その
愛
あい
に
居
を
るがごとし。
〘158㌻〙
217㌻
11
我
われ
これらの
事
こと
を
語
かた
りたるは、
我
わ
が
喜悅
よろこび
の
汝
なんぢ
らに
在
あ
り、かつ
汝
なんぢ
らの
喜悅
よろこび
の
滿
みた
されん
爲
ため
なり。
12
わが
誡命
いましめ
は
是
これ
なり、わが
汝
なんぢ
らを
愛
あい
せしごとく
互
たがひ
に
相
あひ
愛
あい
せよ。
13
人
ひと
その
友
とも
のために
己
おのれ
の
生命
いのち
を
棄
す
つる、
之
これ
より
大
おほい
なる
愛
あい
はなし。
14
汝
なんぢ
等
ら
もし
我
わ
が
命
めい
ずる
事
こと
をおこなはば、
我
わ
が
友
とも
なり。
15
今
いま
よりのち
我
われ
なんぢらを
僕
しもべ
といはず、
僕
しもべ
は
主人
しゅじん
のなす
事
こと
を
知
し
らざるなり。
我
われ
なんぢらを
友
とも
と
呼
よ
べり、
我
わ
が
父󠄃
ちち
に
聽
き
きし
凡
すべ
てのことを
汝
なんぢ
らに
知
し
らせたればなり。
16
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
選󠄄
えら
びしにあらず、
我
われ
なんぢらを
選󠄄
えら
べり。
而
しか
して
汝
なんぢ
らの
徃
ゆ
きて
果
み
を
結
むす
び、
且
かつ
その
果
み
の
殘
のこ
らんために、
又󠄂
また
おほよそ
我
わ
が
名
な
によりて
父󠄃
ちち
に
求
もと
むるものを、
父󠄃
ちち
の
賜
たま
はんために
汝
なんぢ
らを
立
た
てたり。
17
これらの
事
こと
を
命
めい
ずるは、
汝
なんぢ
らの
互
たがひ
に
相
あひ
愛
あい
せん
爲
ため
なり。
18
世
よ
もし
汝
なんぢ
らを
憎
にく
まば、
汝
なんぢ
等
ら
より
先
さき
に
我
われ
を
憎
にく
みたることを
知
し
れ。
19
汝
なんぢ
等
ら
もし
世
よ
のものならば、
世
よ
は
己
おの
がものを
愛
あい
するならん。
汝
なんぢ
らは
世
よ
のものならず、
我
われ
なんぢらを
世
よ
より
選󠄄
えら
びたり。この
故
ゆゑ
に
世
よ
は
汝
なんぢ
らを
憎
にく
む。
20
わが
汝
なんぢ
らに「
僕
しもべ
はその
主人
しゅじん
より
大
おほい
ならず」と
吿
つ
げし
言
ことば
をおぼえよ。
人
ひと
もし
我
われ
を
責
せ
めしならば、
汝
なんぢ
等
ら
をも
責
せ
め、わが
言
ことば
を
守
まも
りしならば、
汝
なんぢ
らの
言
ことば
をも
守
まも
らん。
21
すべて
此
これ
等
ら
のことを
我
わ
が
名
な
の
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
らに
爲
な
さん、それは
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
知
し
らぬに
因
よ
る。
22
われ
來
きた
りて
語
かた
らざりしならば、
彼
かれ
ら
罪
つみ
なかりしならん。されど
今
いま
はその
罪
つみ
いひのがるべき
樣
やう
なし。
23
我
われ
を
憎
にく
むものは
我
わ
が
父󠄃
ちち
をも
憎
にく
むなり。
24
我
われ
もし
誰
たれ
もいまだ
行
おこな
はぬ
事
こと
を
彼
かれ
らの
中
うち
に
行
おこな
はざりしならば、
彼
かれ
ら
罪
つみ
なかりしならん。
然
さ
れど
今
いま
ははや
我
われ
をも
我
わ
が
父󠄃
ちち
をも
見
み
たり、また
憎
にく
みたり。
25
これは
彼
かれ
らの
律法
おきて
に「ひとびと
故
ゆゑ
なくして、
我
われ
を
憎
にく
めり」と
錄
しる
したる
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
218㌻
26
父󠄃
ちち
の
許
もと
より
我
わ
が
遣󠄃
つかは
さんとする
助主
たすけぬし
、
即
すなは
ち
父󠄃
ちち
より
出
い
づる
眞理
しんり
の
御靈
みたま
のきたらんとき、
我
われ
につきて
證
あかし
せん。
27
汝
なんぢ
等
ら
もまた
初
はじめ
より
我
われ
とともに
在
あ
りたれば
證
あかし
するなり。
第16章
1
我
われ
これらの
事
こと
を
語
かた
りたるは、
汝
なんぢ
らの
躓
つまづ
かざらん
爲
ため
なり。
2
人
ひと
なんぢらを
除名
ぢょめい
すべし、
然
しか
のみならず、
汝
なんぢ
らを
殺
ころ
す
者
もの
みな
自
みづか
ら
神
かみ
に
事
つか
ふと
思
おも
ふとき
來
きた
らん。
3
これらの
事
こと
をなすは、
父󠄃
ちち
と
我
われ
とを
知
し
らぬ
故
ゆゑ
なり。
4
我
われ
これらの
事
こと
を
語
かた
りたるは、
時
とき
いたりて
我
わ
が
斯
か
く
言
い
ひしことを
汝
なんぢ
らの
思
おも
ひいでん
爲
ため
なり。
初
はじめ
より
此
これ
等
ら
のことを
言
い
はざりしは、
我
われ
なんぢらと
偕
とも
に
在
あ
りし
故
ゆゑ
なり。
5
今
いま
われを
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
にゆく、
然
しか
るに
汝
なんぢ
らの
中
うち
、たれも
我
われ
に「
何處
いづこ
にゆく」と
問
と
ふ
者
もの
なし。
〘159㌻〙
6
唯
たゞ
これらの
事
こと
を
語
かた
りしによりて、
憂
うれひ
なんぢらの
心
こゝろ
にみてり。
7
されど、われ
實
まこと
を
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、わが
去
さ
るは
汝
なんぢ
らの
益
えき
なり。
我
われ
さらずば
助主
たすけぬし
なんぢらに
來
きた
らじ、
我
われ
ゆかば
之
これ
を
汝
なんぢ
らに
遣󠄃
つかは
さん。
8
かれ
來
きた
らんとき
世
よ
をして
罪
つみ
につき、
義
ぎ
につき、
審判󠄄
さばき
につきて、
過󠄃
あやま
てるを
認󠄃
みと
めしめん。
9
罪
つみ
に
就
つ
きてとは、
彼
かれ
ら
我
われ
を
信
しん
ぜぬに
因
よ
りてなり。
10
義
ぎ
に
就
つ
きてとは、われ
父󠄃
ちち
にゆき、
汝
なんぢ
ら
今
いま
より
我
われ
を
見
み
ぬに
因
よ
りてなり。
11
審判󠄄
さばき
に
就
つ
きてとは、
此
こ
の
世
よ
の
君
きみ
さばかるるに
因
よ
りてなり。
12
我
われ
なほ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐべき
事
こと
あまたあれど、
今
いま
なんぢら
得
え
耐
た
へず。
13
然
さ
れど
彼
かれ
すなはち
眞理
しんり
の
御靈
みたま
きたらん
時
とき
、なんぢらを
導󠄃
みちび
きて
眞理
しんり
をことごとく
悟
さと
らしめん。かれ
己
おのれ
より
語
かた
るにあらず、
凡
おほよ
そ
聞
き
くところの
事
こと
を
語
かた
り、かつ
來
きた
らんとする
事
こと
どもを
汝
なんぢ
らに
示
しめ
さん。
14
彼
かれ
はわが
榮光
えいくわう
を
顯
あらは
さん、それは
我
わ
がものを
受
う
けて
汝
なんぢ
らに
示
しめ
すべければなり。
15
すべて
父󠄃
ちち
の
有
も
ち
給
たま
ふものは
我
わ
がものなり、
此
こ
の
故
ゆゑ
に
我
わ
がものを
受
う
けて
汝
なんぢ
らに
示
しめ
さんと
云
い
へるなり。
16
暫
しばら
くせば
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
見
み
ず、また
暫
しばら
くして
我
われ
を
見
み
るべし』
17
爰
こゝ
に
弟子
でし
たちのうち
或
ある
者
もの
たがひに
言
い
ふ『「
暫
しばら
くせば
我
われ
を
見
み
ず、また
暫
しばら
くして
我
われ
を
見
み
るべし」と
言
い
ひ、かつ「
父󠄃
ちち
に
徃
ゆ
くによりて」と
言
い
ひ
給
たま
へるは、
如何
いか
なることぞ』
219㌻
18
復
また
いふ『この
暫
しばら
くとは
如何
いか
なることぞ、
我等
われら
その
言
い
ひ
給
たま
ふところを
知
し
らず』
19
イエスその
問
と
はんと
思
おも
へるを
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら「
暫
しばら
くせば
我
われ
を
見
み
ず、また
暫
しばら
くして
我
われ
を
見
み
るべし」と
我
わ
が
言
い
ひしを
尋󠄃
たづ
ねあふか。
20
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、なんぢらは
泣
な
き
悲
かな
しみ、
世
よ
は
喜
よろこ
ばん。
汝
なんぢ
ら
憂
うれ
ふべし、
然
さ
れどその
憂
うれひ
は
喜悅
よろこび
とならん。
21
をんな
產
う
まんとする
時
とき
は
憂
うれひ
あり、その
期
き
いたるに
因
よ
りてなり。
子
こ
を
產
う
みてのちは
苦痛
くるしみ
をおぼえず、
世
よ
に
人
ひと
の
生
うま
れたる
喜悅
よろこび
によりてなり。
22
斯
か
く
汝
なんぢ
らも
今
いま
は
憂
うれひ
あり、
然
さ
れど
我
われ
ふたたび
汝
なんぢ
らを
見
み
ん、その
時
とき
なんぢらの
心
こゝろ
喜
よろこ
ぶべし、その
喜悅
よろこび
を
奪
うば
ふ
者
もの
なし。
23
かの
日
ひ
には
汝
なんぢ
ら
何事
なにごと
をも
我
われ
に
問
と
ふまじ。
誠
まこと
にまことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
等
ら
のすべて
父󠄃
ちち
に
求
もと
むる
物
もの
をば、
我
わ
が
名
な
によりて
賜
たま
ふべし。
24
なんぢら
今
いま
までは
何
なに
をも
我
わ
が
名
な
によりて
求
もと
めたることなし。
求
もと
めよ、
然
さ
らば
受
う
けん、
而
しか
して
汝
なんぢ
らの
喜悅
よろこび
みたさるべし。
25
我
われ
これらの
事
こと
を
譬
たとへ
にて
語
かた
りたりしが、また
譬
たとへ
にて
語
かた
らず、
明白
あらは
に
父󠄃
ちち
のことを
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐるとき
來
きた
らん。
26
その
日
ひ
には
汝
なんぢ
等
ら
わが
名
な
によりて
求
もと
めん。
我
われ
は
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
父󠄃
ちち
に
請󠄃
こ
ふと
言
い
はず、
〘160㌻〙
27
父󠄃
ちち
みづから
汝
なんぢ
らを
愛
あい
し
給
たま
へばなり。これ
汝
なんぢ
等
ら
われを
愛
あい
し、また
我
われ
の
父󠄃
ちち
より
出
い
で
來
きた
りしことを
信
しん
じたるに
因
よ
る。
28
われ
父󠄃
ちち
より
出
い
でて
世
よ
にきたれり、また
世
よ
を
離
はな
れて
父󠄃
ちち
に
徃
ゆ
くなり』
29
弟子
でし
たち
言
い
ふ『
視
み
よ、
今
いま
は
明白
あらは
に
語
かた
りて
聊
いさゝ
かも
譬
たとへ
をいひ
給
たま
はず。
30
我
われ
ら
今
いま
なんぢの
知
し
り
給
たま
はぬ
所󠄃
ところ
なく、また
人
ひと
の
汝
なんぢ
に
問
と
ふを
待
ま
ち
給
たま
はぬことを
知
し
る。
之
これ
によりて
汝
なんぢ
の
神
かみ
より
出
い
できたり
給
たま
ひしことを
信
しん
ず』
220㌻
31
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『なんぢら
今
いま
、
信
しん
ずるか。
32
視
み
よ、なんぢら
散
ちら
されて
各自
おのおの
おのが
處
ところ
にゆき、
我
われ
をひとり
遺󠄃
のこ
すとき
到
いた
らん、
否
いな
すでに
到
いた
れり。
然
さ
れど
我
われ
ひとり
居
を
るにあらず、
父󠄃
ちち
われと
偕
とも
に
在
いま
すなり。
33
此
これ
等
ら
のことを
汝
なんぢ
らに
語
かた
りたるは、
汝
なんぢ
ら
我
われ
に
在
あ
りて
平󠄃安
へいあん
を
得
え
んが
爲
ため
なり。なんぢら
世
よ
にありては
患難
なやみ
あり、されど
雄々
をゝ
しかれ。
我
われ
すでに
世
よ
に
勝󠄃
か
てり』
第17章
1
イエスこれらの
事
こと
を
語
かた
りはて、
目
め
を
擧
あ
げ
天
てん
を
仰
あふ
ぎて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
父󠄃
ちち
よ、
時
とき
來
きた
れり、
子
こ
が
汝
なんぢ
の
榮光
えいくわう
を
顯
あらは
さんために、
汝
なんぢ
の
子
こ
の
榮光
えいくわう
を
顯
あらは
したまへ。
2
汝
なんぢ
より
賜
たま
はりし
凡
すべ
ての
者
もの
に、
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
與
あた
へしめんとて、
萬民
ばんみん
を
治
をさ
むる
權威
けんゐ
を
子
こ
に
賜
たま
ひたればなり。
3
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
は、
唯一
ゆゐいつ
の
眞
まこと
の
神
かみ
に
在
いま
す
汝
なんぢ
と
汝
なんぢ
の
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしイエス・キリストとを
知
し
るにあり。
4
我
われ
に
成
な
さしめんとて
汝
なんぢ
の
賜
たま
ひし
業
わざ
を
成
な
し
遂󠄅
と
げて、
我
われ
は
地上
ちじゃう
に
汝
なんぢ
の
榮光
えいくわう
をあらはせり。
5
父󠄃
ちち
よ、まだ
世
よ
のあらぬ
前󠄃
さき
にわが
汝
なんぢ
と
偕
とも
にもちたりし
榮光
えいくわう
をもて、
今
いま
御前󠄃
みまへ
にて
我
われ
に
榮光
えいくわう
あらしめ
給
たま
へ。
6
世
よ
の
中
うち
より
我
われ
に
賜
たま
ひし
人々
ひとびと
に
我
われ
、
御名
みな
をあらはせり。
彼
かれ
らは
汝
なんぢ
の
有
もの
なるを
我
われ
に
賜
たま
へり、
而
しか
して
彼
かれ
らは
汝
なんぢ
の
言
ことば
を
守
まも
りたり。
7
今
いま
かれらは、
凡
すべ
て
我
われ
に
賜
たま
ひしものの
汝
なんぢ
より
出
い
づるを
知
し
る。
8
我
われ
は
我
われ
に
賜
たま
ひし
言
ことば
を
彼
かれ
らに
與
あた
へ、
彼
かれ
らは
之
これ
を
受
う
け、わが
汝
なんぢ
より
出
い
でたるを
眞
まこと
に
知
し
り、なんぢの
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしことを
信
しん
じたるなり。
9
我
われ
かれらの
爲
ため
に
願
ねが
ふ、わが
願
ねが
ふは
世
よ
のためにあらず、
汝
なんぢ
の
我
われ
に
賜
たま
ひたる
者
もの
のためなり、
彼
かれ
らは
即
すなは
ち
汝
なんぢ
のものなり。
10
我
わ
がものは
皆
みな
なんぢの
有
もの
、なんぢの
有
もの
は
我
わ
がものなり、
我
われ
かれらより
榮光
えいくわう
を
受
う
けたり。
11
今
いま
より
我
われ
は
世
よ
に
居
を
らず、
彼
かれ
らは
世
よ
に
居
を
り、
我
われ
は
汝
なんぢ
にゆく。
聖󠄄
せい
なる
父󠄃
ちち
よ、
我
われ
に
賜
たま
ひたる
汝
なんぢ
の
御名
みな
の
中
うち
に
彼
かれ
らを
守
まも
りたまへ。これ
我等
われら
のごとく、
彼
かれ
らの
一
ひと
つとならん
爲
ため
なり。
221㌻
12
我
われ
かれらと
偕
とも
にをる
間
あひだ
、われに
賜
たま
ひたる
汝
なんぢ
の
御名
みな
の
中
うち
に
彼
かれ
らを
守
まも
り、かつ
保護
ほご
したり。
其
そ
のうち
一人
ひとり
だに
亡
ほろ
びず、ただ
亡
ほろび
の
子
こ
のみ
亡
ほろ
びたり、
聖󠄄書
せいしょ
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
〘161㌻〙
13
今
いま
は
我
われ
なんぢに
徃
ゆ
く、
而
しか
して
此
これ
等
ら
のことを
世
よ
に
在
あ
りて
語
かた
るは、
我
わ
が
喜悅
よろこび
を
彼
かれ
らに
全󠄃
まった
からしめん
爲
ため
なり。
14
我
われ
は
御言
みことば
を
彼
かれ
らに
與
あた
へたり、
而
しか
して
世
よ
は
彼
かれ
らを
憎
にく
めり、
我
われ
の
世
よ
のものならぬごとく、
彼
かれ
らも
世
よ
のものならぬに
因
よ
りてなり。
15
わが
願
ねが
ふは、
彼
かれ
らを
世
よ
より
取
と
り
給
たま
はんことならず、《[*]》
惡
あく
より
免
まぬか
らせ
給
たま
はんことなり。[*或は「惡しき者」と譯す。]
16
我
われ
の
世
よ
のものならぬ
如
ごと
く、
彼
かれ
らも
世
よ
のものならず。
17
眞理
まこと
にて
彼
かれ
らを
潔󠄄
きよ
め
別
わか
ちたまへ、
汝
なんぢ
の
御言
みことば
は
眞理
まこと
なり。
18
汝
なんぢ
われを
世
よ
に
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
如
ごと
く、
我
われ
も
彼
かれ
らを
世
よ
に
遣󠄃
つかは
せり。
19
また
彼
かれ
等
ら
のために
我
われ
は
己
おのれ
を
潔󠄄
きよ
めわかつ、これ
眞理
まこと
にて
彼
かれ
らも
潔󠄄
きよ
め
別
わか
たれん
爲
ため
なり。
20
我
われ
かれらの
爲
ため
のみならず、その
言
ことば
によりて
我
われ
を
信
しん
ずる
者
もの
のためにも
願
ねが
ふ。
21
これ
皆
みな
一
ひと
つとならん
爲
ため
なり。
父󠄃
ちち
よ、なんぢ
我
われ
に
在
いま
し、
我
われ
なんぢに
居
を
るごとく、
彼
かれ
らも
我
われ
らに
居
を
らん
爲
ため
なり、
是
これ
なんぢの
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしことを
世
よ
の
信
しん
ぜん
爲
ため
なり。
22
我
われ
は
汝
なんぢ
の
我
われ
に
賜
たま
ひし
榮光
えいくわう
を
彼
かれ
らに
與
あた
へたり、
是
これ
われらの
一
ひと
つなる
如
ごと
く、
彼
かれ
らも
一
ひと
つとならん
爲
ため
なり。
23
即
すなは
ち
我
われ
かれらに
居
を
り、
汝
なんぢ
われに
在
いま
し、
彼
かれ
ら
一
ひと
つとなりて
全󠄃
まった
くせられん
爲
ため
なり、
是
これ
なんぢの
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしことと、
我
われ
を
愛
あい
し
給
たま
ふごとく
彼
かれ
らをも
愛
あい
し
給
たま
ふこととを、
世
よ
の
知
し
らん
爲
ため
なり。
24
父󠄃
ちゝ
よ、
望󠄇
のぞ
むらくは、
我
われ
に
賜
たま
ひたる
人々
ひとびと
の
我
わ
が
居
を
るところに
我
われ
と
偕
とも
にをり、
世
よ
の
創
はじめ
の
前󠄃
さき
より
我
われ
を
愛
あい
し
給
たま
ひしによりて、
汝
なんぢ
の
我
われ
に
賜
たま
ひたる
我
わ
が
榮光
えいくわう
を
見
み
んことを。
25
正
たゞ
しき
父󠄃
ちち
よ、げに
世
よ
は
汝
なんぢ
を
知
し
らず、
然
さ
れど
我
われ
は
汝
なんぢ
を
知
し
り、この
者
もの
どもも
汝
なんぢ
の
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひしことを
知
し
れり。
222㌻
26
われ
御名
みな
を
彼
かれ
らに
知
し
らしめたり、
復
また
これを
知
し
らしめん。これ
我
われ
を
愛
あい
し
給
たま
ひたる
愛
あい
の、
彼
かれ
らに
在
あ
りて、
我
われ
も
彼
かれ
らに
居
を
らん
爲
ため
なり』
第18章
1
此
これ
等
ら
のことを
言
い
ひ
終󠄃
を
へて、イエス
弟子
でし
たちと
偕
とも
にケデロンの
小川
をがは
の
彼方
かなた
に
出
い
でたまふ。
彼處
かしこ
に
園
その
あり、イエス
弟子
でし
たちとともども
入
い
り
給
たま
ふ。
2
ここは
弟子
でし
たちと
屡々
しばしば
あつまり
給
たま
ふ
處
ところ
なれば、イエスを
賣
う
るユダもこの
處
ところ
を
知
し
れり。
3
斯
かく
てユダは
一組
ひとくみ
の
兵隊
へいたい
と
祭司長
さいしちゃう
・パリサイ
人
びと
等
ら
よりの
下役
したやく
どもとを
受
う
けて、
炬火
たいまつ
・
燈火
ともしび
・
武器
ぶき
を
携
たづさ
へて
此處
ここ
にきたる。
4
イエス
己
おのれ
に
臨
のぞ
まんとする
事
こと
をことごとく
知
し
り、
進󠄃
すゝ
みいでて
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『
誰
たれ
を
尋󠄃
たづ
ぬるか』
5
答
こた
ふ『ナザレのイエスを』イエス
言
い
ひたまふ『
我
われ
はそれなり』イエスを
賣
う
るユダも
彼
かれ
らと
共
とも
に
立
た
てり。
6
『
我
われ
はそれなり』と
言
い
ひ
給
たま
ひし
時
とき
、かれら
後退󠄃
あとしざり
して
地
ち
に
倒
たふ
れたり。
〘162㌻〙
7
爰
こゝ
に
再
ふたゝ
び『たれを
尋󠄃
たづ
ぬるか』と
問
と
ひ
給
たま
へば『ナザレのイエスを』と
言
い
ふ。
8
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われは
夫
それ
なりと
旣
すで
に
吿
つ
げたり、
我
われ
を
尋󠄃
たづ
ぬるならば
此
こ
の
人々
ひとびと
の
去
さ
るを
容
ゆる
せ』
9
これ
曩
さき
に『なんぢの
我
われ
に
賜
たま
ひし
者
もの
の
中
うち
よりわれ
一人
ひとり
をも
失
うしな
はず』と
言
い
ひ
給
たま
ひし
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
10
シモン・ペテロ
劍
つるぎ
をもちたるが、
之
これ
を
拔
ぬ
き
大
だい
祭司
さいし
の
僕
しもべ
を
擊
う
ちて、その
右
みぎ
の
耳
みみ
を
斬
き
り
落
おと
す、
僕
しもべ
の
名
な
はマルコスと
云
い
ふ。
11
イエス、ペテロに
言
い
ひたまふ『
劍
つるぎ
を
鞘
さや
に
收
をさ
めよ、
父󠄃
ちち
の
我
われ
に
賜
たま
ひたる
酒杯
さかづき
は、われ
飮
の
まざらんや』
12
爰
こゝ
にかの
兵隊
へいたい
・
千卒長
せんそつちゃう
・ユダヤ
人
びと
の
下役
したやく
ども、イエスを
捕
とら
へ、
縛
しば
りて
先
ま
づアンナスの
許
もと
に
曵
ひ
き
徃
ゆ
く、
13
アンナスはその
年
とし
の
大
だい
祭司
さいし
なるカヤパの
舅
しうと
なり。
223㌻
14
カヤパは
曩
さき
にユダヤ
人
びと
に、
一人
ひとり
、
民
たみ
のために
死
し
ぬるは
益
えき
なる
事
こと
を
勸
すゝ
めし
者
もの
なり。
15
シモン・ペテロ
及
およ
び
他
ほか
の
一人
ひとり
の
弟子
でし
、イエスに
從
したが
ふ。この
弟子
でし
は
大
だい
祭司
さいし
に
知
し
られたる
者
もの
なれば、イエスと
共
とも
に
大
だい
祭司
さいし
の
庭
には
に
入
い
りしが、
16
ペテロは
門
かど
の
外
そと
に
立
た
てり。ここに
大
だい
祭司
さいし
に
知
し
られたる
彼
か
の
弟子
でし
いでて、
門
かど
を
守
まも
る
女
をんな
に
物
もの
言
い
ひてペテロを
連
つ
れ
入
い
れしに、
17
門
かど
を
守
まも
る
婢女
はしため
、ペテロに
言
い
ふ『なんぢも
彼
か
の
人
ひと
の
弟子
でし
の
一人
ひとり
なるか』かれ
言
い
ふ『
然
しか
らず』
18
時
とき
寒
さむ
くして
僕
しもべ
・
下役
したやく
ども
炭火
すみび
を
熾
おこ
し、その
傍
かたは
らに
立
た
ちて
煖
あたゝ
まり
居
を
りしに、ペテロも
共
とも
に
立
た
ちて
煖
あたゝ
まりゐたり。
19
ここに
大
だい
祭司
さいし
、イエスにその
弟子
でし
とその
敎
をしへ
とにつきて
問
と
ひたれば、
20
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われ
公然
おほやけ
に
世
よ
に
語
かた
れり、
凡
すべ
てのユダヤ
人
びと
の
相
あひ
集
つど
ふ
會堂
くわいだう
と
宮
みや
とにて
常
つね
に
敎
をし
へ、
密
ひそか
には
何
なに
をも
語
かた
りし
事
こと
なし。
21
何
なに
ゆゑ
我
われ
に
問
と
ふか、
我
わ
が
語
かた
れることは
聽
き
きたる
人々
ひとびと
に
問
と
へ。
視
み
よ、
彼
かれ
らは
我
わ
が
言
い
ひしことを
知
し
るなり』
22
斯
か
く
言
い
ひ
給
たま
ふとき、
傍
かたは
らに
立
た
つ
下役
したやく
の
一人
ひとり
、
手掌
てのひら
にてイエスを
打
う
ちて
言
い
ふ『かくも
大
だい
祭司
さいし
に
答
こた
ふるか』
23
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『わが
語
かた
りし
言
こと
、もし
惡
あ
しくば、その
惡
あ
しき
故
ゆゑ
を
證
あかし
せよ。
善
よ
くば
何
なに
とて
打
う
つぞ』
24
爰
こゝ
にアンナス、イエスを
縛
しば
りたるままにて、
大
だい
祭司
さいし
カヤパの
許
もと
に
送󠄃
おく
れり。
25
シモン・ペテロ
立
た
ちて
煖
あたゝ
まり
居
ゐ
たるに、
人々
ひとびと
いふ『なんぢも
彼
かれ
が
弟子
でし
の
一人
ひとり
なるか』
否
いな
みて
言
い
ふ『
然
しか
らず』
26
大
だい
祭司
さいし
の
僕
しもべ
の
一人
ひとり
にて、ペテロに
耳
みみ
を
斬
き
り
落
おと
されし
者
もの
の
親族
しんぞく
なるが
言
い
ふ『われ
汝
なんぢ
が
園
その
にて
彼
かれ
と
偕
とも
なるを
見
み
しならずや』
224㌻
27
ペテロまた
否
いな
む
折
をり
しも
鷄
にはとり
鳴
な
きぬ。
28
斯
かく
て
人々
ひとびと
イエスをカヤパの
許
もと
より
官邸
くわんてい
にひきゆく、
時
とき
は
夜明
よあけ
なり。
彼
かれ
ら
過󠄃越
すぎこし
の
食󠄃
しょく
をなさんために、
汚穢
けがれ
を
受
う
けじとて
己
おのれ
らは
官邸
くわんてい
に
入
い
らず。
〘163㌻〙
29
爰
こゝ
にピラト
彼
かれ
らの
前󠄃
まへ
に
出
い
でゆきて
言
い
ふ『この
人
ひと
に
對
たい
して
如何
いか
なる
訴訟
うったへ
をなすか』
30
答
こた
へて
言
い
ふ『もし
惡
あく
をなしたる
者
もの
ならずば
汝
なんぢ
に
付
わた
さじ』
31
ピラト
言
い
ふ『なんぢら
彼
かれ
を
引取
ひきと
り、おのが
律法
おきて
に
循
したが
ひて
審
さば
け』ユダヤ
人
びと
いふ『
我
われ
らに
人
ひと
を
殺
ころ
す
權威
けんゐ
なし』
32
これイエス
己
おの
が
如何
いか
なる
死
し
にて
死
し
ぬるかを
示
しめ
して
言
い
ひ
給
たま
ひし
御言
みことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
33
爰
こゝ
にピラトまた
官邸
くわんてい
に
入
い
り、イエスを
呼
よ
び
出
いだ
して
言
い
ふ『なんぢはユダヤ
人
びと
の
王
わう
なるか』
34
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『これは
汝
なんぢ
おのれより
言
い
ふか、
將
はた
わが
事
こと
を
人
ひと
の
汝
なんぢ
に
吿
つ
げたるか』
35
ピラト
答
こた
ふ『
我
われ
はユダヤ
人
びと
ならんや、
汝
なんぢ
の
國人
くにびと
・
祭司長
さいしちゃう
ら
汝
なんぢ
を
我
われ
に
付
わた
したり、
汝
なんぢ
なにを
爲
な
ししぞ』
36
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『わが
國
くに
はこの
世
よ
のものならず、
若
も
し
我
わ
が
國
くに
この
世
よ
のものならば、
我
わ
が
僕
しもべ
ら
我
われ
をユダヤ
人
びと
に
付
わた
さじと
戰
たゝか
ひしならん。
然
さ
れど
我
わ
が
國
くに
は
此
こ
の
世
よ
よりのものならず』
37
爰
こゝ
にピラト
言
い
ふ『されば
汝
なんぢ
は
王
わう
なるか』イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『われの
王
わう
たることは
汝
なんぢ
の
言
い
へるごとし。
我
われ
は
之
これ
がために
生
うま
れ、
之
これ
がために
世
よ
に
來
きた
れり、
即
すなは
ち
眞理
しんり
につきて
證
あかし
せん
爲
ため
なり。
凡
すべ
て
眞理
しんり
に
屬
ぞく
する
者
もの
は
我
わ
が
聲
こゑ
をきく』
38
ピラト
言
い
ふ『
眞理
しんり
とは
何
なに
ぞ』
かく
言
い
ひて
再
ふたゝ
びユダヤ
人
びと
の
前󠄃
まへ
に
出
い
でて
言
い
ふ『
我
われ
この
人
ひと
に
何
なに
の
罪
つみ
あるをも
見
み
ず。
39
過󠄃越
すぎこし
のとき
我
われ
なんぢらに
一人
ひとり
の
囚人
めしうど
を
赦
ゆる
す
例
れい
あり、されば
汝
なんぢ
らユダヤ
人
びと
の
王
わう
をわが
赦
ゆる
さんことを
望󠄇
のぞ
むか』
40
彼
かれ
らまた
叫
さけ
びて『この
人
ひと
ならず、バラバを』と
言
い
ふ、バラバは
强盜
がうたう
なり。
225㌻
第19章
1
爰
こゝ
にピラト、イエスをとりて
鞭
むちう
つ。
2
兵卒
へいそつ
ども
茨
いばら
にて
冠冕
かんむり
をあみ、その
首
かうべ
にかむらせ、
紫色
むらさき
の
上衣
うはぎ
をきせ、
3
御許
みもと
に
進󠄃
すゝ
みて
言
い
ふ『ユダヤ
人
びと
の
王
わう
やすかれ』
而
しか
して
手掌
てのひら
にて
打
う
てり。
4
ピラト
再
ふたゝ
び
出
い
でて
人々
ひとびと
にいふ『
視
み
よ、この
人
ひと
を
汝
なんぢ
らに
引
ひき
出
いだ
す、これは
何
なに
の
罪
つみ
あるをも
我
わ
が
見
み
ぬことを
汝
なんぢ
らの
知
し
らん
爲
ため
なり』
5
爰
こゝ
にイエス
茨
いばら
の
冠冕
かんむり
をかむり、
紫色
むらさき
の
上衣
うはぎ
をきて
出
い
で
給
たま
へば、ピラト
言
い
ふ『
視
み
よ、この
人
ひと
なり』
6
祭司長
さいしちゃう
・
下役
したやく
どもイエスを
見
み
て
叫
さけ
びいふ『
十字架
じふじか
につけよ、
十字架
じふじか
につけよ』ピラト
言
い
ふ『なんぢら
自
みづか
らとりて
十字架
じふじか
につけよ、
我
われ
は
彼
かれ
に
罪
つみ
あるを
見
み
ず』
7
ユダヤ
人
びと
こたふ『
我
われ
らに
律法
おきて
あり、その
律法
おきて
によれば
死
し
に
當
あた
るべき
者
もの
なり、
彼
かれ
はおのれを
神
かみ
の
子
こ
となせり』
8
ピラトこの
言
ことば
をききて
增々
ますます
おそれ、
9
再
ふたゝ
び
官邸
くわんてい
に
入
い
りてイエスに
言
い
ふ『なんぢは
何處
いづこ
よりぞ』イエス
答
こたへ
をなし
給
たま
はず。
〘164㌻〙
10
ピラト
言
い
ふ『われに
語
かた
らぬか、
我
われ
になんぢを
赦
ゆる
す
權威
けんゐ
あり、また
十字架
じふじか
につくる
權威
けんゐ
あるを
知
し
らぬか』
11
イエス
答
こた
へ
給
たま
ふ『なんぢ
上
うへ
より
賜
たま
はらずば、
我
われ
に
對
たい
して
何
なに
の
權威
けんゐ
もなし。この
故
ゆゑ
に
我
われ
をなんぢに
付
わた
しし
者
もの
の
罪
つみ
は
更
さら
に
大
おほい
なり』
12
斯
こゝ
においてピラト、イエスを
赦
ゆる
さんことを
力
つと
む。
然
さ
れどユダヤ
人
びと
さけびて
言
い
ふ『なんぢ
若
も
しこの
人
ひと
を
赦
ゆる
さば、カイザルの
忠臣
ちゅうしん
にあらず、
凡
おほよ
そおのれを
王
わう
となす
者
もの
はカイザルに
叛
そむ
くなり』
13
ピラトこれらの
言
ことば
をききてイエスを
外
そと
にひきゆき、
敷石
しきいし
(ヘブル
語
ご
にてガバタ)といふ
處
ところ
にて
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
につく。
14
この
日
ひ
は
過󠄃越
すぎこし
の
準備
そなへ
日
び
にて、
時
とき
は《[*]》
第六時
だいろくじ
ごろなりき。ピラト、ユダヤ
人
びと
にいふ『
視
み
よ、なんぢらの
王
わう
なり』[*今の正午頃ならん。]
15
かれら
叫
さけ
びていふ『
除
のぞ
け、
除
のぞ
け、
十字架
じふじか
につけよ』ピラト
言
い
ふ『われ
汝
なんぢ
らの
王
わう
を
十字架
じふじか
につくべけんや』
祭司長
さいしちゃう
ら
答
こた
ふ『カイザルの
他
ほか
われらに
王
わう
なし』
226㌻
16
爰
こゝ
にピラト、イエスを
十字架
じふじか
に
釘
つ
くるために
彼
かれ
らに
付
わた
せり。
17
彼
かれ
らイエスを
受取
うけと
りたれば、イエス
己
おのれ
に
十字架
じふじか
を
負󠄅
お
ひて
髑髏
されかうべ
(ヘブル
語
ご
にてゴルゴダ)といふ
處
ところ
に
出
い
でゆき
給
たま
ふ。
18
其處
そこ
にて
彼
かれ
らイエスを
十字架
じふじか
につく。
又󠄂
また
ほかに
二人
ふたり
の
者
もの
をともに
十字架
じふじか
につけ、
一人
ひとり
を
右
みぎ
に、
一人
ひとり
を
左
ひだり
に、イエスを
眞中
まなか
に
置
お
けり。
19
ピラト
罪標
すてふだ
を
書
か
きて
十字架
じふじか
の
上
うへ
に
掲
かゝ
ぐ『ユダヤ
人
びと
の
王
わう
、ナザレのイエス』と
記
しる
したり。
20
イエスを
十字架
じふじか
につけし
處
ところ
は
都
みやこ
に
近󠄃
ちか
ければ、
多
おほ
くのユダヤ
人
びと
この
標
ふだ
を
讀
よ
む、
標
ふだ
はヘブル、ロマ、ギリシヤの
語
ことば
にて
記
しる
したり。
21
爰
こゝ
にユダヤ
人
びと
の
祭司長
さいしちゃう
らピラトに
言
い
ふ『ユダヤ
人
びと
の
王
わう
と
記
しる
さず、
我
われ
はユダヤ
人
びと
の
王
わう
なりと
自稱
じしょう
せりと
記
しる
せ』
22
ピラト
答
こた
ふ『わが
記
しる
したることは
記
しる
したるままに』
23
兵卒
へいそつ
どもイエスを
十字架
じふじか
につけし
後
のち
、その
衣
ころも
をとりて
四
よ
つに
分󠄃
わ
け、おのおの
其
そ
の
一
ひと
つを
得
え
たり。また
下衣
したぎ
を
取
と
りしが、
下衣
したぎ
は
縫󠄃目
ぬひめ
なく、
上
うへ
より
惣
すべ
て
織
お
りたる
物
もの
なれば、
24
兵卒
へいそつ
ども
互
たがひ
にいふ『これを
裂
さ
くな、
誰
たれ
がうるか
䰗
くじ
にすべし』これは
聖󠄄書
せいしょ
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
曰
いは
く『かれら
互
たがひ
にわが
衣
ころも
をわけ、わが
衣
きぬ
を
䰗
くじ
にせり』
兵卒
へいそつ
ども
斯
か
くなしたり。
25
さてイエスの
十字架
じふじか
の
傍
かたは
らには、その
母
はは
と
母
はは
の
姉妹
しまい
と、クロパの
妻
つま
マリヤとマグダラのマリヤと
立
た
てり。
26
イエスその
母
はは
とその
愛
あい
する
弟子
でし
との
近󠄃
ちか
く
立
た
てるを
見
み
て、
母
はは
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『をんなよ、
視
み
よ、なんぢの
子
こ
なり』
27
また
弟子
でし
に
言
い
ひたまふ『
視
み
よ、なんぢの
母
はは
なり』この
時
とき
より、その
弟子
でし
かれを
己
おの
が
家
いへ
に
接
う
けたり。
〘165㌻〙
28
この
後
のち
イエス
萬
よろづ
の
事
こと
の
終󠄃
をは
りたるを
知
し
りて、――
聖󠄄書
せいしょ
の
全󠄃
まった
うせられん
爲
ため
に――『われ
渇
かわ
く』と
言
い
ひ
給
たま
ふ。
29
ここに
酸
す
き
葡萄酒
ぶだうしゅ
の
滿
み
ちたる
器
うつは
あり、その
葡萄酒
ぶだうしゅ
のふくみたる
海綿
うみわた
をヒソプに
著
つ
けてイエスの
口
くち
に
差附
さしつ
く。
227㌻
30
イエスその
葡萄酒
ぶだうしゅ
をうけて
後
のち
いひ
給
たま
ふ『
事
こと
畢
をは
りぬ』
遂󠄅
つひ
に
首
かうべ
をたれて
靈
れい
をわたし
給
たま
ふ。
31
この
日
ひ
は
準備
そなへ
日
び
なれば、ユダヤ
人
びと
、
安息
あんそく
日
にち
に
屍體
しかばね
を
十字架
じふじか
のうへに
留
とど
めおかじとて(
殊
こと
にこの
度
たび
の
安息
あんそく
日
にち
は
大
おほい
なる
日
ひ
なるにより)ピラトに、
彼
かれ
らの
脛
はぎ
ををりて
屍體
しかばね
を
取除
とりのぞ
かんことを
請󠄃
こ
ふ。
32
ここに
兵卒
へいそつ
ども
來
きた
りて、イエスとともに
十字架
じふじか
に
釘
つ
けられたる
第一
だいいち
の
者
もの
と
他
ほか
のものとの
脛
はぎ
を
折
を
り、
33
而
しか
してイエスに
來
きた
りしに、はや
死
し
に
給
たま
ふを
見
み
て、その
脛
はぎ
を
折
を
らず。
34
然
しか
るに
一人
ひとり
の
兵卒
へいそつ
、
鎗
やり
にてその
脅
わき
をつきたれば、
直
たゞ
ちに
血
ち
と
水
みづ
と
流
なが
れいづ。
35
之
これ
を
見
み
しもの
證
あかし
をなす、
其
そ
の
證
あかし
は
眞
まこと
なり、
彼
かれ
はその
言
い
ふことの
眞
まこと
なるを
知
し
る、これ
汝
なんぢ
等
ら
にも
信
しん
ぜしめん
爲
ため
なり。
36
此
これ
等
ら
のことの
成
な
りたるは『その
骨
ほね
くだかれず』とある
聖󠄄
せい
句
く
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
37
また
他
ほか
に『かれら
己
おの
が
刺
さ
したる
者
もの
を
見
み
るべし』と
云
い
へる
聖󠄄
せい
句
く
あり。
38
この
後
のち
、アリマタヤのヨセフとてユダヤ
人
びと
を
懼
おそ
れ、
密
ひそか
にイエスの
弟子
でし
たりし
者
もの
、イエスの
屍體
しかばね
を
引
ひき
取
と
らんことをピラトに
請󠄃
こ
ひたれば、ピラト
許
ゆる
せり、
乃
すなは
ち
徃
ゆ
きてその
屍體
しかばね
を
引取
ひきと
る。
39
また
曾
かつ
て
夜
よる
、
御許
みもと
に
來
きた
りしニコデモも、
沒藥
もつやく
・
沈香
ちんかう
の
混和物
あはせもの
を
百
ひゃく
斤
きん
ばかり
携
たづさ
へて
來
きた
る。
40
ここに
彼
かれ
らイエスの
屍體
しかばね
をとり、ユダヤ
人
びと
の
葬
はうむ
りの
習慣
ならはし
にしたがひて、
香料
かうれう
とともに
布
ぬの
にて
卷
ま
けり。
41
イエスの
十字架
じふじか
につけられ
給
たま
ひし
處
ところ
に
園
その
あり、
園
その
の
中
うち
にいまだ
人
ひと
を
葬
はうむ
りしことなき
新
あたら
しき
墓
はか
あり。
42
ユダヤ
人
びと
の
準備
そなへ
日
び
なれば、この
墓
はか
の
近󠄃
ちか
きままに
其處
そこ
にイエスを
納󠄃
をさ
めたり。
228㌻
第20章
1
一週󠄃
ひとまはり
のはじめの
日
ひ
、
朝󠄃
あさ
まだき
暗󠄃
くら
きうちに、マグダラのマリヤ、
墓
はか
にきたりて
墓
はか
より
石
いし
の
取除
とりのぞ
けあるを
見
み
る。
2
乃
すなは
ち
走
はし
りゆき、シモン・ペテロとイエスの
愛
あい
し
給
たま
ひしかの
弟子
でし
との
許
もと
に
到
いた
りて
言
い
ふ『たれか
主
しゅ
を
墓
はか
より
取去
とりさ
れり、
何處
いづこ
に
置
お
きしか
我
われ
ら
知
し
らず』
3
ペテロと、かの
弟子
でし
といでて
墓
はか
にゆく。
4
二人
ふたり
ともに
走
はし
りたれど、かの
弟子
でし
ペテロより
疾
と
く
走
はし
りて
先
さき
に
墓
はか
にいたり、
5
屈
かゞ
みて
布
ぬの
の
置
お
きたるを
見
み
れど、
內
うち
には
入
い
らず。
6
シモン・ペテロ
後
おく
れ
來
きた
り、
墓
はか
に
入
い
りて
布
ぬの
の
置
お
きたるを
視
み
、
7
また
首
かうべ
を
包
つゝ
みし
手拭
てぬぐひ
は
布
ぬの
とともに
在
あ
らず、
他
ほか
のところに
卷
ま
きてあるを
見
み
る。
〘166㌻〙
8
先
さき
に
墓
はか
にきたれる
彼
か
の
弟子
でし
もまた
入
い
り、
之
これ
を
見
み
て
信
しん
ず。
9
彼
かれ
らは
聖󠄄書
せいしょ
に
錄
しる
したる、
死人
しにん
の
中
うち
よりその
甦
よみが
へり
給
たま
ふべきことを
未
いま
だ
悟
さと
らざりしなり。
10
遂󠄅
つひ
に
二人
ふたり
の
弟子
でし
おのが
家
いへ
にかへれり。
11
然
さ
れどマリヤは
墓
はか
の
外
そと
に
立
た
ちて
泣
な
き
居
を
りしが、
泣
な
きつつ
屈
かが
みて、
墓
はか
の
內
うち
を
見
み
るに、
12
イエスの
屍體
しかばね
の
置
お
かれし
處
ところ
に
白
しろ
き
衣
ころも
をきたる
二人
ふたり
の
御使
みつかひ
、
首
かうべ
の
方
かた
にひとり
足
あし
の
方
かた
にひとり
坐
ざ
しゐたり。
13
而
しか
してマリヤに
言
い
ふ『をんなよ、
何
なに
ぞ
泣
な
くか』マリヤ
言
い
ふ『
誰
たれ
か、わが
主
しゅ
を
取去
とりさ
れり、
何處
いづこ
に
置
お
きしか
我
われ
しらず』
14
かく
言
い
ひて
後
うしろ
に
振反
ふりかへ
れば、イエスの
立
た
ち
居給
ゐたま
ふを
見
み
る、
然
さ
れどイエスたるを
知
し
らず。
15
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『をんなよ、
何
なに
ぞ
泣
な
く、
誰
たれ
を
尋󠄃
たづ
ぬるか』マリヤは
園守
そのもり
ならんと
思
おも
ひて
言
い
ふ『
君
きみ
よ、
汝
なんぢ
もし
彼
かれ
を
取去
とりさ
りしならば、
何處
いづこ
に
置
お
きしかを
吿
つ
げよ、われ
引取
ひきと
るべし』
16
イエス『マリヤよ』と
言
い
ひ
給
たま
ふ。マリヤ
振反
ふりかへ
りて『ラボニ』(
釋
と
けば
師
し
よ)と
言
い
ふ。
17
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われに
觸
さは
るな、
我
われ
いまだ
父󠄃
ちち
の
許
もと
に
昇
のぼ
らぬ
故
ゆゑ
なり。
我
わ
が
兄弟
きゃうだい
たちに
徃
ゆ
きて「
我
われ
はわが
父󠄃
ちち
、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
、わが
神
かみ
、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
らの
神
かみ
に
昇
のぼ
る」といへ』
18
マグダラのマリヤ
徃
ゆ
きて
弟子
でし
たちに『われは
主
しゅ
を
見
み
たり』と
吿
つ
げ、また
云々
しかしか
の
事
こと
を
言
い
ひ
給
たま
ひしと
吿
つ
げたり。
19
この
日
ひ
、
即
すなは
ち
一週󠄃
ひとまはり
のはじめの
日
ひ
の
夕
ゆふべ
、
弟子
でし
たちユダヤ
人
びと
を
懼
おそ
るるに
因
よ
りて
居
を
るところの
戶
と
を
閉
と
ぢおきしに、イエスきたり
彼
かれ
らの
中
なか
に
立
た
ちて
言
い
ひたまふ『
平󠄃安
へいあん
なんぢらに
在
あ
れ』
229㌻
20
斯
か
く
言
い
ひてその
手
て
と
脅
わき
とを
見
み
せたまふ、
弟子
でし
たち
主
しゅ
を
見
み
て
喜
よろこ
べり。
21
イエスまた
言
い
ひたまふ『
平󠄃安
へいあん
なんぢらに
在
あ
れ、
父󠄃
ちち
の
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へるごとく、
我
われ
も
亦
また
なんぢらを
遣󠄃
つかは
す』
22
斯
か
く
言
い
ひて、
息
いき
を
吹
ふ
きかけ
言
い
ひたまふ『
聖󠄄
せい
靈
れい
をうけよ。
23
汝
なんぢ
ら
誰
たれ
の
罪
つみ
を
赦
ゆる
すとも
其
そ
の
罪
つみ
ゆるされ、
誰
たれ
の
罪
つみ
を
留
とゞ
むるとも
其
そ
の
罪
つみ
とどめらるべし』
24
イエス
來
きた
り
給
たま
ひしとき、
十二
じふに
弟子
でし
の
一人
ひとり
デドモと
稱
とな
ふるトマスともに
居
を
らざりしかば、
25
他
ほか
の
弟子
でし
これに
言
い
ふ『われら
主
しゅ
を
見
み
たり』トマスいふ『
我
われ
はその
手
て
に
釘
くぎ
の
痕
あと
を
見
み
、わが
指
ゆび
を
釘
くぎ
の
痕
あと
にさし
入
い
れ、わが
手
て
をその
脅
わき
に
差入
さしい
るるにあらずば
信
しん
ぜじ』
26
八日
やうか
ののち
弟子
でし
等
たち
また
家
いへ
にをり、トマスも
偕
とも
に
居
を
りて
戶
と
を
閉
と
ぢおきしに、イエス
來
きた
り、
彼
かれ
らの
中
なか
に
立
た
ちて
言
い
ひたまふ『
平󠄃安
へいあん
なんぢらに
在
あ
れ』
27
またトマスに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
指
ゆび
をここに
伸
の
べて、わが
手
て
を
見
み
よ、
汝
なんぢ
の
手
て
をのべて、
我
わ
が
脅
わき
にさしいれよ、
信
しん
ぜぬ
者
もの
とならで
信
しん
ずる
者
もの
となれ』
〘167㌻〙
28
トマス
答
こた
へて
言
い
ふ『わが
主
しゅ
よ、わが
神
かみ
よ』
29
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢ
我
われ
を
見
み
しによりて《[*]》
信
しん
じたり、
見
み
ずして
信
しん
ずる
者
もの
は
幸福
さいはひ
なり』[*或は「信ずるか」と譯す。]
30
この
書
ふみ
に
錄
しる
さざる
外
ほか
の
多
おほ
くの
徴
しるし
を、イエス
弟子
でし
たちの
前󠄃
まへ
にて
行
おこな
ひ
給
たま
へり。
31
されど
此
これ
等
ら
の
事
こと
を
錄
しる
ししは、
汝
なんぢ
等
ら
をしてイエスの
神
かみ
の
子
こ
キリストたることを
信
しん
ぜしめ、
信
しん
じて
御名
みな
により
生命
いのち
を
得
え
しめんが
爲
ため
なり。
230㌻
第21章
1
この
後
のち
、イエス
復
また
テベリヤの
海邊
うみべ
にて
己
おのれ
を
弟子
でし
たちに
現
あらは
し
給
たま
ふ、その
現
あらは
れ
給
たま
ひしこと
左
さ
のごとし。
2
シモン・ペテロ、デドモと
稱
とな
ふるトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの
子
こ
ら
及
およ
びほかの
弟子
でし
二人
ふたり
もともに
居
を
りしに、
3
シモン・ペテロ『われ
漁獵
すなどり
にゆく』と
言
い
へば、
彼
かれ
ら『われらも
共
とも
に
徃
ゆ
かん』と
言
い
ひ、
皆
みな
いでて
舟
ふね
に
乘
の
りしが、その
夜
よ
は
何
なに
をも
得
え
ざりき。
4
夜明
よあけ
の
頃
ころ
イエス
岸
きし
に
立
た
ち
給
たま
ふに、
弟子
でし
たち
其
そ
のイエスなるを
知
し
らず。
5
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
子
こ
どもよ、
獲
え
物
もの
ありしか』
彼
かれ
ら『なし』と
答
こた
ふ。
6
イエス
言
い
ひたまふ『
舟
ふね
の
右
みぎ
のかたに
網
あみ
をおろせ、
然
さ
らば
獲
え
物
もの
あらん』
乃
すなは
ち
網
あみ
を
下
おろ
したるに、
魚
うを
夥多
おびたゞ
しくして、
網
あみ
を
曵
ひ
き
上
あ
ぐること
能
あた
はざりしかば、
7
イエスの
愛
あい
し
給
たま
ひし
弟子
でし
、ペテロに
言
い
ふ『
主
しゅ
なり』シモン・ペテロ『
主
しゅ
なり』と
聞
き
きて、
裸
はだか
なりしを
上衣
うはぎ
をまとひて
海
うみ
に
飛
と
びいれり。
8
他
ほか
の
弟子
でし
たちは
陸
をか
を
離
はな
るること
遠󠄄
とほ
からず、
僅
わづか
に
五十間
ごじっけん
ばかりなりしかば、
魚
うを
の
入
い
りたる
網
あみ
を
小舟
こぶね
にて
曵
ひ
き
來
きた
り、
9
陸
をか
に
上
のぼ
りて
見
み
れば、
炭火
すみび
ありてその
上
うへ
に
肴
さかな
あり、
又󠄂
また
パンあり。
10
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらの
今
いま
とりたる
肴
さかな
を
少
すこ
し
持
も
ちきたれ』
11
シモン・ペテロ
舟
ふね
に
徃
ゆ
きて
網
あみ
を
陸
をか
に
曵
ひ
き
上
あ
げしに、
百
ひゃく
五
ご
十
じふ
三
さん
尾
び
の
大
おほい
なる
魚
うを
滿
み
ちたり、
斯
か
く
多
おほ
かりしが
網
あみ
は
裂
さ
けざりき。
12
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『きたりて《[*]》
食󠄃
しょく
せよ』
弟子
でし
たちその
主
しゅ
なるを
知
し
れば『なんぢは
誰
たれ
ぞ』と
敢
あ
へて
問
と
ふ
者
もの
もなし。[*或は「朝󠄃餐󠄃せよ」と譯す。]
13
イエス
進󠄃
すゝ
みてパンをとり
彼
かれ
らに
與
あた
へ、
肴
さかな
をも
然
しか
なし
給
たま
ふ。
14
イエス
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へりてのち、
弟子
でし
たちに
現
あらは
れ
給
たま
ひし
事
こと
、これにて
三度
みたび
なり。
15
斯
かく
て
食󠄃
しょく
したる
後
のち
、イエス、シモン・ペテロに
言
い
ひ
給
たま
ふ『ヨハネの
子
こ
シモンよ、
汝
なんぢ
この
者
もの
どもに
勝󠄃
まさ
りて
我
われ
を《[*]》
愛
あい
するか』ペテロいふ『
主
しゅ
よ、
然
しか
り、わが
汝
なんぢ
を《[△]》
愛
あい
する
事
こと
は、なんぢ
知
し
り
給
たま
ふ』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
羔羊
こひつじ
を
養󠄄
やしな
へ』[*と△と原語を異にす。]
231㌻
16
また
二度
ふたゝび
いひ
給
たま
ふ『ヨハネの
子
こ
シモンよ、
我
われ
を《[*]》
愛
あい
するか』ペテロ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
然
しか
り、わが
汝
なんぢ
を《[△]》
愛
あい
する
事
こと
は、なんぢ
知
し
り
給
たま
ふ』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
羊
ひつじ
を
牧
か
へ』[*と△と原語を異にす。]
〘168㌻〙
17
三度
みたび
いひ
給
たま
ふ『ヨハネの
子
こ
シモンよ、
我
われ
を《[△]》
愛
あい
するか』ペテロ
三度
みたび
『われを《[△]》
愛
あい
するか』と
言
い
ひ
給
たま
ふを
憂
うれ
ひて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
知
し
りたまはぬ
處
ところ
なし、わが
汝
なんぢ
を《[△]》
愛
あい
する
事
こと
は、なんぢ
識
し
りたまふ』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
羊
ひつじ
をやしなへ。[*と△と原語を異にす。]
18
誠
まこと
に
誠
まこと
に、なんぢに
吿
つ
ぐ、なんぢ
若
わか
かりし
時
とき
は
自
みづか
ら
帶
おび
して
欲
ほっ
する
處
ところ
を
步
あゆ
めり、されど
老
お
いては
手
て
を
伸
の
べて
他
ほか
の
人
ひと
に
帶
おび
せられ、
汝
なんぢ
の
欲
ほっ
せぬ
處
ところ
に
連
つ
れゆかれん』
19
是
これ
ペテロが
如何
いか
なる
死
し
にて
神
かみ
の
榮光
えいくわう
を
顯
あらは
すかを
示
しめ
して
言
い
ひ
給
たま
ひしなり。
斯
か
く
言
い
ひて
後
のち
かれに
言
い
ひ
給
たま
ふ『われに
從
したが
へ』
20
ペテロ
振反
ふりかへ
りてイエスの
愛
あい
したまひし
弟子
でし
の
從
したが
ふを
見
み
る。これは
曩
さき
に
夕餐󠄃
ゆふげ
のとき
御胸
みむね
に
倚
よ
りかかりて『
主
しゅ
よ、
汝
なんぢ
をうる
者
もの
は
誰
たれ
か』と
問
と
ひし
弟子
でし
なり。
21
ペテロこの
人
ひと
を
見
み
てイエスに
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、この
人
ひと
は
如何
いか
に』
22
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『よしや
我
われ
、かれが
我
われ
の
來
きた
るまで
留
とゞま
るを
欲
ほっ
すとも、
汝
なんぢ
になにの
關係
かゝはり
あらんや、
汝
なんぢ
は
我
われ
に
從
したが
へ』
23
爰
こゝ
に
兄弟
きゃうだい
たちの
中
うち
に、この
弟子
でし
死
し
なずと
云
い
ふ
話
はなし
つたはりたり。されどイエスは
死
し
なずと
言
い
ひ
給
たま
ひしにあらず『よしや
我
われ
かれが
我
われ
の
來
きた
るまで
留
とゞま
るを
欲
ほっ
すとも、
汝
なんぢ
になにの
關係
かゝはり
あらんや』と
言
い
ひ
給
たま
ひしなり。
24
これらの
事
こと
につきて
證
あかし
をなし、
又󠄂
また
これを
錄
しる
しし
者
もの
は、この
弟子
でし
なり、
我等
われら
はその
證
あかし
の
眞
まこと
なるを
知
し
る。
25
イエスの
行
おこな
ひ
給
たま
ひし
事
こと
は、この
外
ほか
なほ
多
おほ
し、もし
一
ひと
つ
一
ひと
つ
錄
しる
さば、
我
われ
おもふに
世界
せかい
もその
錄
しる
すところの
書
ふみ
を
載
の
するに
耐
た
へざらん。
〘169㌻〙
232㌻